「ストレスに弱い人」が知っておきたい“ストレス対処力の高め方”

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 「ストレスに弱い人」が知っておきたい“ストレス対処力の高め方”

2023.12.22

日常の中でストレスを感じたときに、「自分はストレスに弱い」と感じたことはないでしょうか。それはきっと変えられないと思っている方も多いかもしれませんが、カウンセラーで心理師の舟木彩乃さんは「ストレスにうまく対処して心を健やかに保つ力は、後天的に養える」とおっしゃいます。ストレスに対処する力は、どのようにして高められるのでしょうか?

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教えてくれたのは 舟木彩乃さん

舟木さん

ストレスマネジメント専門家。公認心理師。株式会社メンタルシンクタンク副社長。
一般企業の人事部で働きながらカウンセラーに転身、その後、病院(精神科・心療内科)などの勤務と並行して筑波大学大学院に入学し、2020年に博士課程を修了。「首尾一貫感覚(別名:ストレス対処力)」に有用性を感じ、カウンセリングにとり入れている。

書影
『「なんとかなる」と思えるレッスン』
著者:舟木彩乃
価格:1,650円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン

ストレス対処力は、後天的に高められる

かつて国会議員秘書として働いた経験もあるカウンセラーの舟木彩乃さんは、同じストレスフルな環境でも、生き生きと働いている人と、メンタルが不安定になりやすい人がいることを不思議に感じていたそうです。なぜその違いが生まれるのかに着目し、大学院などで研究を進めてきました。

舟木さん 「私自身の経験や、カウンセリング、研究などを通じて、その違いは“首尾一貫感覚”が大きく影響していると確信しています」

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舟木さん 「首尾一貫感覚とは、別名『ストレス対処力』とも呼ばれています。ストレスが高い状況にあっても、それにうまく対処して、心の健やかさを保てる力です。専門書では、『健康に生きる力』と表現されることもあります。

首尾一貫感覚は、後天的に高めることができます。首尾一貫感覚を養うことで、ストレスが高い状況でもしなやかに強く過ごせるようになり、ストレスを成功の糧に変換できるようにもなります。
首尾一貫感覚は、研究者には良く知られている概念ですが、一般には広く浸透していません。知らないまま過ごすのはもったいないので、ぜひ多くの人に知っていただき、強くしなやかに過ごしてほしいと思います」

「だいたいわかった」「なんとかなる」「どんなことにも意味がある」

舟木さんによると、首尾一貫感覚とは、次の3つの感覚からなっているのだそうです。

(1)「だいたいわかった」と思える感覚=《把握可能感》

自分の置かれている状況や今後の展開を把握できている、またはある程度予測できて、「だいたいわかった」と思える感覚。

(2)「なんとかなる」と思える感覚=《処理可能感》

自分の持つ資源(人・お金・知力・権力など)を使って、ストレスや障害に対処して「なんとかなる」と見通しを持てる感覚。

(3)「どんなことにも意味がある」と思える感覚=《有意味感》

困難な状況でも、ものごとにはすべて意味があると思える感覚。

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舟木さん 「たとえば、仕事でミスをしたとしましょう。
どの程度の失敗かを客観的に判断でき、どんなリカバリーをしたらいいのかがわかっているのが『だいたいわかったと思える感覚=処理可能感』です。
そして、解決するためにはどうしたらいいのか、リカバリーのために誰に助けを求めたらいいかを考え、具体的な解決につなげていく力が『なんとかなると思える感覚=処理可能感』です。

カウンセリングにくる方は、『だいたいわかった』という把握可能感や、『なんとかなる』という処理可能感が低い状態であることがほとんどです。そうした場合、誰かの力を借りてもいいので、ものごとを解決したという『成功体験』へつなげることが大切になってきます」

人の力を借りてうまくいったことも「成功体験」

成功体験というと、一人でがんばる、やり遂げる姿を思い浮かべがちですよね。しかし舟木さんは、「人の力を借りてものごとがうまくいったとしても、それも立派な成功体験」とおっしゃいます。

舟木さん 「真面目な方ほど、自分だけでなんとかしなければと感じてしまうんですよね。でも、1人でできることって、じつはそれほどないと私は考えています。だから、どんどんまわりを頼って、助けてもらいましょう」

まわりを頼る、助けを求めることが苦手な場合は、どうしたらいいのでしょうか?

舟木さん 「こんな話があります。アメリカのある心理学者は、自分が非常にシャイで人見知りであることを克服したいと思い、100人の女性をナンパしたそうです。初めはとても緊張したけれど、何度も繰り返すうちに、断られてもなんとも思わなくなったというエピソードがあります」

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舟木さん 「ものごとを頼んだり、人に頼ったりする経験が少ないと、断られたときに『私の頼み方が悪かったんだ』『頼みごとをしても、いつも断られる』と思い込んでしまう。こうして一部の出来事からものごと全般に思考を広げることを、『過度な一般化』といいます。

一方で、アメリカの心理学者のように、繰り返し経験していると、たとえ断られたとしても、『忙しかったのかな』『きっと都合が悪かったんだ』と思えるようになる。経験を積み重ねることで、『だいたいわかった』『なんとかなる』という感覚が養われてくるのです」

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舟木さん 「だから、断られたらどうしよう、傷つくのが怖いという方こそ、チャレンジしてほしいと思います。大きなことを頼むのは気がすすまないようなら、小さなリクエストから始めてみるのも有効ですね。『明日の天気、知ってる?』など、気軽な質問から試してみましょう」

「人の力を借りてうまくいった」経験を重ねることで、「なんとかなる」と思えるようになる。舟木さんのアドバイスを、ぜひ試してみてください!

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