親が知らない「宿題をやらない子」の本音

家族・人間関係

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 親が知らない「宿題をやらない子」の本音

2023.11.27

臨床心理士・公認心理師のyukoです。生活上の問題はないのに、宿題はどうしても取り組めない、勉強に対して全くやる気が出ない子がいます。怠けているのか、苦手から逃げているのか。毎日宿題をやる・やらないの押し問答が続くと怒る側もイライラしてきますよね。宿題をしない背景にある気持ちと対処について、考えてみます。

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宿題に取り組めないのは特性のせい?

発達障がいの外来にはしばしば「宿題を後回しにする。ADHDによるものでは?」「勉強ができない。学習障がいかもしれない。」など、勉強に関する相談がきます。

そして実際、読字や書字・算数など特定の学習が積みあがりにくい学習障がいと診断される子や、注意が散漫しやすく集中力の維持が難しいADHDと診断される子も。

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しかし発達検査や面接をしても発達障がいとは言い切れず、診断のつかない子も多いんです。なぜ、特別な特性があるわけではないのに、宿題に取り組まないのか。

背景にはどんな理由が隠れているのかを考えてみます。

なぜ宿題をやらないのか

宿題をする意味を見いだせない

周りの大人から、「将来困るよ」と言われても将来の見通しについてピンとこず、「他の子はやっているよ」と怒られてもやる気がおきない。
子どもにとって宿題をやらないもっともな理由になりますが、親が「宿題するのは当たり前」と考えていたら、理解しがたいものかもしれません。

小さいころから勉強に対して「やらされている感覚」があり、宿題がただ面倒なものになっていると意味を見出せなくなります。

まずは楽しみにしているゲームや気になる事柄から広げてみてもよいかもしれません。
「このゲームどうやって作られてるんだろうね」「いつも食べてるお菓子も色んな計算と工夫がされているんだよ」など、身近にある好きなものと学習が繋がっている実感を持たせるのが大切です。

できないなら、やらない方がまし

「やってもどうせわからないから」と考え、宿題をやりたがらない子もいます。
親からすると、「誰に似てこんなにプライドが高くなったんだろう」なんて思ったりするかもしれませんね。

ですが、わからない問題を前にして「早く終わらせなさい」と言われ、適当に書いたら真っ赤に直されたプリントが返ってくることの繰り返しばかりだと、「やらない方がまし」と思ってきます。

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  • どうしても難しい問題は飛ばして、途中まででもわかる範囲で書く
  • 飛ばした問題には印をつけておき、あとから親がヒントを出す
  • 宿題は「わからない」を知るために行うもの

などの対処法や考え方を伝えると、負担が軽くなることがあります。

「叱られたらやるもの」と認識している

「宿題をやらない→親が叱る→しぶしぶやるorそれでもやらない」のルーティンが毎日繰り返されていく日々。
親子のやり取りが当たり前になっていくと、「宿題は叱られたら始める」癖がついていきます。
子ども本人は叱られるのに慣れていても、叱る方はうんざりしてきますよね。

そんな負のルーティンができているときは、悪循環を親の方から断ち切る必要があるんです。
「宿題をやらなくても困るのは本人」と考え、数日間怒るのをやめてみるのもひとつ。
「言われるからやりたくないタイプ」の子は意外と多いもので、怒るのをやめたら、急に自ら宿題をやりだす子もいるからです。

もちろん、親が何も言わなくなったとしても宿題に手をつけない子もいます。
「言っても言われなくてもやりたくないタイプ」も、もちろんいます。
そんなときは、背景にどんな理由があるのかを知り、話し合っていく、第三者に介入してもらう必要があります。

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子どもをどうにか変えてもらおうとし、学習塾に入れたり、スクールカウンセラーに行くように言う方も多いのですが、思うようにはいかないもの。
親子の話し合いで解決するのが難しいときは、まず親がどのように対応すればよいのかをスクールカウンセラーや地域の相談センターに相談してみるのがおすすめです。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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