日常に浸透するPDCAサイクル。子どもにも有効?
業務効率を改善するためのPDCAサイクル。
計画(P:Plan)を立てて、実行(D:Do)に移す。うまくいっているかを評価(C:Check)して、改善(A:Action)する。
多くの企業で取り入れられており、ここ数年耳にする機会も増えました。
子育てや家事においても、意識的・無意識的に利用している人は多いよう。
買い物からお弁当作りまでをこなす中で、忙しいあまり子どもを強く叱ってしまい反省する中で、日々頭の中でPDCAサイクルを回している方も。
一見便利なPDCAサイクル。
しかし子どもにPDCAの活用を求めるのは慎重になる必要があります。どんなところに落とし穴があるのでしょうか?
「PDCAサイクル」を使った子育ての“意外な落とし穴”
要注意1.親が勝手に決めるPDCA
例えば、子どもに新しいゲームを購入したとき。
子どもが夢中になるのは目に見えているから、夜10時までと約束する(P:Plan)
すると子どもはご飯を適当に済ませたり、宿題を後回しにして10時ぎりぎりまでゲームをするように(D:Do)
ルールの設け方が間違っていたと評価。見直さなければと思い、1日2時間の制限を設ける(C:Check)
子どもは親の目を盗んで深夜にこっそりゲームをやるように(A:Action)
親が制限を強めていくと子どもはその目をかいくぐって突破する、いたちごっこが始まります。すると喧嘩が重なって、親子の関係性も悪い方向に。
親が考えたPDCAに子どもを乗せようとしても無理が生じてきます。子ども自身が能動的に計画し、行動に移す準備ができていないと、どんなに効率的なやり方であっても意味をなしません。
親が論理的に立てた道筋よりも、多少詰めの甘さがある子ども自身で考えた約束や目標の方が実りがあるもの。
子どもの視点に合わせて、話し合っていくのが大切です。
要注意2.親の理想を反映させたPDCA
例えば、中学受験に向けて勉強を頑張ろうとするとき。親が子どもにPDCAの重要性を説き、一緒に作成するとします。
模試の結果を分析。苦手な分野を洗い出してリスト化。克服に向けて勉強時間の調整、これまでの方法で良くない点を改善する。(P:Plan)
計画をどの程度実行できているかを記録。(D:Do)
計画をどの程度達成できたか、できなかったのはなぜか、評価する。(C:Check)
計画を達成できていれば目標に対して足りないものを再度考え、新たな計画を立てる。達成できていなければその要因を考える。(A:Action)
進学塾に通っていると、上記の方法がごく一般的と思われる方もいるでしょう。たしかに、限られた時間の中で目標を達成する合理的な方法です。
しかしここで注意したいのは、親の理想に沿って子どもが動かされていないか。子どもがもつ自由な発想やのびのびとした行動が制限されすぎていないか。
PDCAは元々、品質を管理することを目的に考案されたサイクル。そこから、市場や顧客への柔軟な対応、プロジェクトの円滑な実施など、広く利用されてきました。
仕事においては便利な考えでも、子どもが行っているのは、賃金に見合うパフォーマンス維持ではありません。
また、成績があがらなければ子どもの立てた計画が誤っていた、努力が不足していたと判断されるのは酷ともいえます。
子どもが自発的に取り組む場合に利用する、サイクルに囚われすぎないなどの心得も大切なのではないでしょうか。
子どもに必要なのはどんなサイクル?
仕事における成功とは、どのようなものがあるでしょうか。
製品を滞りなく顧客に届ける、営業利益〇%UP、顧客満足度向上などが挙げられそうですよね。
では、子育てにおける成功とは?
親の顔色を窺ってゲームをやめられる子、成績トップを維持して〇〇中学に合格する子を育てることなのでしょうか。
子どもとの関わりにおいては、子どもの気持ちや意欲を切り離すことができません。また、サイクルにのっとって進めるのは難しく、サイクル通りになるのが良しとも限りません。
子育てにおいては、PDPD(Plan、Do、Plan、DO)やPDF(Plan、Do、Failure※失敗)くらいがよいのかもしれません。
子どもが毎日楽しく過ごせるような考え方を見つけてみてくださいね。