教えてくれたのは……マインドトレーナー 田中よしこさん
株式会社コレット代表取締役。心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。著書に『自分の気持ちがわからない沼から抜け出したい』(KADOKAWA)がある。
「他責の人」と「自責の人」の言動の違い
失敗やトラブルに直面したときに、どのように対処していますか?
「私が悪いのかな」(自責)と思うこともあれば、「誰かのせいだ」(他責)と感じることもありますよね。自分に余裕がないときや自信がないときは、つい誰かのせいにしたくなるものです。
しかし、こうした思考パターンは人生の幸福度にも大きく影響を与えています。今回は「自責の人」と「他責の人」の言動の違いをお届けします。
1.問題意識が違う
他責の人は、問題の原因を“自分以外”に求めがちです。
例えば仕事でミスをした場合、「ちゃんと教えてくれなかった」「〇〇がなかった」と他人や環境のせいにします。「自分は悪くない」という思考なので、改善策を見つけられないまま同じミスをくり返し、問題の原因を常に外に求めます。
一方で自責の人は「自分が確認不足だった」「〇〇の準備をすればよかった」と自分のできることを振り返ります。
心理学の研究では、自責の姿勢は自己改善や未来に向けての改善シミュレーションにもつながるため、長期的な成功をもたらすことが示されています。自責思考は、自己成長にも役立つのです。
自分に非があると思うのは、つらいことのように感じるかもしれませんが、どちらが信用や未来への良い影響があるのかは一目瞭然。
自分の行動に問題があると認めることで自己効力感が高まり、ポジティブな行動変化が促されます。自分はどちらの未来が望みなのかを確認してみましょう。
2.ストレスの感じ方が違う
他責の人は、外部の状況に依存しているため、ストレスを感じやすくなります。周囲の人や環境が変わらなければ、自分の状況が改善しないと思っているからです。
これに対して、自責の人は、自分の行動によって状況を変えることができると信じています。改善策を見つけられるため、ストレスを感じにくくなります。
スタンフォード大学の研究では、内的コントロール感が高い人ほど、ストレスに強いことが確認されています。
日々の生活や未来の幸せは“自分の行動次第”だと思えている人は、安心感と充実感を持ちながら過ごせるので、メンタルも安定する毎日を手にできるのです。
3.人間関係の質が違う
他責の人は、他人を責める傾向が強いため、必然的に周囲との関係が悪化しがちです。
例えば家庭内で問題が起こったとき、「あなたが悪い」とパートナーや子どもを責めると、良好な関係や信頼が失われてしまいます。
自責の人は、相手の悪いところだけでなく「自分もどうすればよかったのか」と考えるため、穏やかで建設的な話し合いができ、良質な関係や信頼を築いていくことができます。自己反省(自分を責めるのではなく、何ができたのかという視点)が深い人は共感力が高く、人間関係の質が向上することが明らかになっています。
良質な人間関係は、幸福感にダイレクトに影響を与えるものです。「自分に何ができるのか」を考えるクセを練習していきましょう。
自責の考え方を身につけて、よりよい方向へ
このように、「他責の人」と「自責の人」の言動の違いは、日常生活や人間関係、自己成長に大きな影響を及ぼします。自責の思考を身につけることで、ストレスに強く、未来の成長に大きく貢献してくれるのです。
偉大な哲学者ソクラテスも「自分を知ることが、すべての知恵の始まりである」と述べています。自分の言動を見つめ直し、最適なものを選択していきましょう。