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私たちの青春がつまった懐かしのスクラッチカード…!【ミスタードーナツのキャンペーンを振り返る】

カルチャー

image.saita-puls.com

2025.09.11

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。” こんなキャッチコピーを掲げて、「ドーナツ探求家」として活動している溝呂木一美です。 年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査・研究しています。 そんな私が、ドーナツの雑学や知られざる魅力などを少しずつご紹介していきますよ。

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たくさん食べると“いいこと”があった時代

ミスタードーナツの定番ドーナツお目当てのグッズがほしくて、たくさん食べた方もいたでしょう

みなさま、ミスタードーナツのスクラッチカードを覚えていますか。
40代以上の方でしたら、「懐かしい!」と思う方も多いでしょう。

スクラッチカードは、1985年に「ラッキーカードキャンペーン」として導入されたものです。
キャンペーン中にドーナツを買うとスクラッチカードがもらえました。スクラッチ部分をコインで削ると点数が印字されており、その点数を集めると、キャンペーングッズと交換することができたのです。

スクラッチカードは2003年に廃止され、「ミスドカード」という点数カードの配布に変更されました。
2006年には「ミスドクラブ」というポイントカードを導入。カードの表面のポイント数を追加印字していくサーマルカードというものです。これも2013年に終了しています。

つまり、2013年まではドーナツを買って点数を貯めると、グッズと交換できるキャンペーンが続いていたのです。

「ありがとう」の気持ちからスタート

ミスタードーナツでグッズがもらえるキャンペーンは「プレミアム」という名前がつけられ、お客さんに感謝の気持ちを伝えるためのキャンペーンとして、1973年からはじまりました。
くじ引きでないのは、お店に通う誰にでも公平にチャンスがあるようにという創業者の思いからです。
はじめの頃は、アメリカのミスタードーナツで使用されていたハロウィンのキャラクター「ゴブリン」のグッズがありました。

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作家性が高いグッズから人気キャラとのコラボグッズ

ミスタードーナツのグッス大阪にあるミスドミュージアムにて飾られている原田治デザインのグッズ

1985年からのスクラッチカード時代のグッズは実にポップでオリジナリティがありました。この頃のミスタードーナツが醸す雰囲気は、時代の様々なカルチャーとリンクし、現在では再現不可能なものです。
原田治をはじめ、伊藤正道、江口寿史、玖保キリコ、ペーター佐藤などなど、個性豊かなイラストレーターによるグッズは、「プレミアム」史上の傑作といえるでしょう。

前述の「ゴブリン」は、ハロウィンが日本にまだ定着していない時期に発売されたため、その魅力が十分に伝わらなかったといいます。そこで、日本で親しまれるキャラクターを求めて原田治が起用されました。結果は、「オサムグッズ=ミスタードーナツ」のイメージが定着するほどの高い人気を獲得。オサム人気を受けて、他のイラストレーターも次々と起用されるようになりました。

1999年には、スイスのクレイアニメ「ピングー」とのコラボグッズが登場。ピングーグッズはそれからしばらくポツポツと登場し続けます。

スクラッチカードが廃止された2003年には、「セサミストリート」や「トゥイーティー」などアメリカの有名キャラクターとのコラボグッズも登場しました。

ミスタードーナツの顔となる、オリジナルキャラクター誕生

ミスドミュージアムにあるポン・デ・リングの置物ポン・デ・ライオンは生まれてからポン・デ・リングしか食べたことがない

2003年発売のポン・デ・リングが空前の大ヒット。
2004年にはポン・デ・リングをモチーフとしたポン・デ・ライオンなどのオリジナルキャラクターが誕生します。
ミスドカード時代には、それらのグッズがたくさん展開されていきました。

誰でも知っている超人気キャラグッズ目白押し

2006年からのミスドクラブ時代には、引き続きポン・デ・ライオンたちが大活躍。
1000ポイント集める必要があった特大サイズのポン・デ・ライオンのぬいぐるみはインパクトがありました。

2010年あたりから「スヌーピー」や「リラックマ」など、既存の人気キャラクターとのコラボグッズが登場します。

2013年以降は、「ハローキティ」「ミッフィー」「ウルトラマン」などなど、誰もが知るキャラクターとのコラボグッズが展開され、2018年からは「ポケモン」のキャンペーンが人気を集めているようです。

スクラッチカードを削っていた1985年から、実に40年が経ちました。
まるで、好きなバンドが超メジャー級バンドになっていく、その過程を見守り続ける古参オタクと同じような感慨を覚えます。

スクラッチカードのお姉さん

古参のミスタードーナツファンが大好きだったスクラッチカードは、素晴らしいデザインのグッズだけでなく、様々な思い出を残しました。
スクラッチカードを一生懸命集めている人もいれば、そうでもない人も当然いました。あるいは、余分に持っている人もいたのです。

おそらく1995年あたり、高校生だった私の思い出話をひとつ。
当時通っていた高校の友人とミスタードーナツで他愛もない話をして、ドーナツを食べていました。
しばらくすると、私達のテーブルの横に、20代半ばくらいのお姉さんがやって来ました。

ミスタードーナツでスクラッチカードをもらうあのとき、ちゃんとお礼が言えたのかしら。お姉さん、ありがとう。

なんだろう?と思ったら、
「これ、あげるね。」
とだけ言って、テーブルにスクラッチカードを置き、スーッと去っていきました。

お姉さんの一連の仕草が妙に格好良く、印象に残っています。
当時の私は、人に話しかけることすらままならない、引っ込み思案な若者だったので、店内の知らない人に話しかける行為も含めて、「すごい!大人!」と、なんだか憧れてしまった。

私もいつか、そんなことを……なんて思っているうちに、スクラッチカードはなくなってしまいました。

みんなが嬉しかったプレミアム

スクラッチカードをお客さん同士で譲り合う光景は、珍しいことではなかったようです。
もらった、あげた、どちらも経験している方もいるでしょう。
不要なスクラッチカードを、誰かに譲るべく、テーブルの上に置いて帰る人もいたとか。
家族が一丸となって集めたり、学校や職場の人に手伝ってもらって集めたりというエピソードも聞いたことがあります。

「お店に通う誰にでも公平にチャンスがあるように」というミスタードーナツの真心からはじまったプレゼントキャンペーンは、多くのお客さんにとって、おいしいドーナツをたくさん食べる機会となり、食べた分だけ嬉しいプレゼントがある、日常のちょっとした楽しみを作ってくれるものでした。

今よりずっとアナログで、フリマアプリがない時代だからこそ、いい思い出として心に残るようなキャンペーンができたのかもしれません。

参考資料:「ミスタードーナツのプレミアム」(1995年)扶桑社
記事監修:株式会社ダスキン ※ミスタードーナツ

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著者

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。“というキャッチコピーを掲げ、国内外で年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査、研究している。自身のブログや各種SNS、テレビやラジオ、雑誌、Webメディア等でも情報を発信。コンビニ、カフェなどの店舗で販売するドーナツの監修も行う。イラストレーターとしては「かわいい・おいしい・楽しい」をテーマに描いている。主なテレビ番組出演歴は『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(TBS系)、『バゲット』(日本テレビ系)など。著書に『私のてきとうなお菓子作り』(ワニブックス)、『ドーナツのしあわせ 年間500種類食べる“ドーナツ探求家“の偏愛ノート』(イースト・プレス)、『ドーナツの旅』(グラフィック社)あり。

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