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ひとくちに“ドーナツ”と言うけれど、ドーナツ生地が何種類あるか知っていますか?多種多様なドーナツの世界。

カルチャー

2025.07.25

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。” こんなキャッチコピーを掲げて、「ドーナツ探求家」として活動している溝呂木一美です。 年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査・研究しています。 そんな私が、ドーナツの雑学や知られざる魅力などを少しずつご紹介していきますよ。

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「これじゃない」ドーナツにひそむ小さなズレ

「ドーナツが食べたい」と思ったとき、あなたの心に浮かぶのはどんなドーナツでしょうか。
ふんわりしたイーストドーナツ、サクサクのオールドファッション、エアリーなフレンチクルーラー、どんなドーナツが食べたい気分ですか?
そして、誰かに「ドーナツ買ってきて」とだけ伝えて、おつかいを頼んだとして、その人はあなたが思い浮かべたドーナツを正しく買ってくることができるでしょうか。

「食べたい」という気持ち、生地から見直してみる

生地出典:stock.adobe.com

まずは、昔から存在している“定番のおやつ”を思い出してみましょう。ホットケーキ、シュークリーム、クレープ、たい焼き、どら焼き、どれも心ときめく素敵なおやつです。

小麦粉が主原料となったこれらの食べ物には、「1種類の生地からできている」という共通点があります。
表面にかけるもの、中に詰めるものなどを工夫し、バリエーションを増やせます。

では、ドーナツの生地はいくつあるでしょう。
現在に至るまで、様々な新しい生地が開発されていますが、基本的には大きく分けて3種類。イースト生地、ケーキ生地、シュー生地があります。

生地が違えば、見た目や食感も違います。
ですから、「ドーナツが食べたい」と思ったときのそれが、どの生地のドーナツなのか? という冒頭の問題が生じるのです。

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揚げればみんな仲間だけど、実は全然違う3つの生地

イースト生地、ケーキ生地、シュー生地、それぞれの生地で作られたドーナツはどういうものなのか、詳しく見ていきましょう。

【イーストドーナツ】
パンと同じ工程で作られ、酵母の力で発酵し、膨らんだ生地を揚げたもの。
ふわふわしたパンのような食感を持つ。
この生地を焼くと、パンになる。

【ケーキドーナツ】
生地にベーキングパウダーなどの膨張剤を加え、油で揚げたとき、膨張剤の化学変化によって膨らんだもの。
スポンジケーキのようにやわらかいものから、クッキーのようにかたいものまで、食感の幅が広い。
この生地を焼くと、ケーキ(パウンドケーキがイメージとして近い)になる。

【シュードーナツ】
フレンチクルーラーでおなじみの、シュー生地のドーナツは、油で揚げたときに生地の中の水分が蒸発することで膨らんだもの。
シュークリームの皮のような、軽い食感が特徴。
この生地を焼くと、シュー皮になる。

上記の生地は、油で揚げればドーナツに分類されますが、焼くと他の食べ物になってしまうという共通点を持っています。

ドーナツの生地の種類

このように、「ドーナツ」という名前の中には、まるで食感の違う3種のドーナツが存在します。
さらに、それぞれ様々なカタチに成形することも可能で、表面に砂糖やチョコレートをかけたり、中にクリームや餡などを詰めたりとアレンジもされます。

ドーナツとは、生地の種類が多いうえに無数のアレンジ方法があるため、実に多種多様な食べ物といえるでしょう。
だからこそ、ドーナツとしてイメージするものが人それぞれ違っている、という現象が起こるのです。

私の好みがわかる?言わずに伝わるか選手権

ドーナツ出典:stock.adobe.com

生地の種類と特徴がわかり、ご自身の好みのドーナツ生地が明確になったかと思います。
小腹が空いたときはイーストドーナツ、どっしりとお腹にたまるものが欲しいときはケーキドーナツ、軽く甘いものが口にしたいときはシュードーナツというように、心地よくドーナツを食べるための、ベストな選択も可能になるでしょう。

さて、「ドーナツにひそむ小さなズレ」について、検証してみたくなりますね。もしも「ドーナツ買ってきて」と頼める人が周囲にいたら、ちょっとおつかいに行ってきてもらいましょう。
3種の生地のドーナツをすべて取り揃えるミスタードーナツがおすすめです。
ドーナツ生地の話は、その時点ではナイショで。

あなたは「今食べたいドーナツ生地」を思い浮かべて、コーヒーでも用意して待ちましょう。
その人はドーナツの箱を持って帰ってきます。
箱を開けたら、まるで心の中が見えていたのかと思うほど的確に、あなた好みのドーナツが入っていた!
……その人は、あなたにとってのソウルメイトかもしれませんよ。

* * * * *

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著者

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。“というキャッチコピーを掲げ、国内外で年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査、研究している。自身のブログや各種SNS、テレビやラジオ、雑誌、Webメディア等でも情報を発信。コンビニ、カフェなどの店舗で販売するドーナツの監修も行う。イラストレーターとしては「かわいい・おいしい・楽しい」をテーマに描いている。主なテレビ番組出演歴は『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(TBS系)、『バゲット』(日本テレビ系)など。著書に『私のてきとうなお菓子作り』(ワニブックス)、『ドーナツのしあわせ 年間500種類食べる“ドーナツ探求家“の偏愛ノート』(イースト・プレス)、『ドーナツの旅』(グラフィック社)あり。

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