「これじゃない」ドーナツにひそむ小さなズレ
「ドーナツが食べたい」と思ったとき、あなたの心に浮かぶのはどんなドーナツでしょうか。
ふんわりしたイーストドーナツ、サクサクのオールドファッション、エアリーなフレンチクルーラー、どんなドーナツが食べたい気分ですか?
そして、誰かに「ドーナツ買ってきて」とだけ伝えて、おつかいを頼んだとして、その人はあなたが思い浮かべたドーナツを正しく買ってくることができるでしょうか。
「食べたい」という気持ち、生地から見直してみる
まずは、昔から存在している“定番のおやつ”を思い出してみましょう。ホットケーキ、シュークリーム、クレープ、たい焼き、どら焼き、どれも心ときめく素敵なおやつです。
小麦粉が主原料となったこれらの食べ物には、「1種類の生地からできている」という共通点があります。
表面にかけるもの、中に詰めるものなどを工夫し、バリエーションを増やせます。
では、ドーナツの生地はいくつあるでしょう。
現在に至るまで、様々な新しい生地が開発されていますが、基本的には大きく分けて3種類。イースト生地、ケーキ生地、シュー生地があります。
生地が違えば、見た目や食感も違います。
ですから、「ドーナツが食べたい」と思ったときのそれが、どの生地のドーナツなのか? という冒頭の問題が生じるのです。
揚げればみんな仲間だけど、実は全然違う3つの生地
イースト生地、ケーキ生地、シュー生地、それぞれの生地で作られたドーナツはどういうものなのか、詳しく見ていきましょう。
【イーストドーナツ】
パンと同じ工程で作られ、酵母の力で発酵し、膨らんだ生地を揚げたもの。
ふわふわしたパンのような食感を持つ。
この生地を焼くと、パンになる。
【ケーキドーナツ】
生地にベーキングパウダーなどの膨張剤を加え、油で揚げたとき、膨張剤の化学変化によって膨らんだもの。
スポンジケーキのようにやわらかいものから、クッキーのようにかたいものまで、食感の幅が広い。
この生地を焼くと、ケーキ(パウンドケーキがイメージとして近い)になる。
【シュードーナツ】
フレンチクルーラーでおなじみの、シュー生地のドーナツは、油で揚げたときに生地の中の水分が蒸発することで膨らんだもの。
シュークリームの皮のような、軽い食感が特徴。
この生地を焼くと、シュー皮になる。
上記の生地は、油で揚げればドーナツに分類されますが、焼くと他の食べ物になってしまうという共通点を持っています。
このように、「ドーナツ」という名前の中には、まるで食感の違う3種のドーナツが存在します。
さらに、それぞれ様々なカタチに成形することも可能で、表面に砂糖やチョコレートをかけたり、中にクリームや餡などを詰めたりとアレンジもされます。
ドーナツとは、生地の種類が多いうえに無数のアレンジ方法があるため、実に多種多様な食べ物といえるでしょう。
だからこそ、ドーナツとしてイメージするものが人それぞれ違っている、という現象が起こるのです。
私の好みがわかる?言わずに伝わるか選手権
生地の種類と特徴がわかり、ご自身の好みのドーナツ生地が明確になったかと思います。
小腹が空いたときはイーストドーナツ、どっしりとお腹にたまるものが欲しいときはケーキドーナツ、軽く甘いものが口にしたいときはシュードーナツというように、心地よくドーナツを食べるための、ベストな選択も可能になるでしょう。
さて、「ドーナツにひそむ小さなズレ」について、検証してみたくなりますね。もしも「ドーナツ買ってきて」と頼める人が周囲にいたら、ちょっとおつかいに行ってきてもらいましょう。
3種の生地のドーナツをすべて取り揃えるミスタードーナツがおすすめです。
ドーナツ生地の話は、その時点ではナイショで。
あなたは「今食べたいドーナツ生地」を思い浮かべて、コーヒーでも用意して待ちましょう。
その人はドーナツの箱を持って帰ってきます。
箱を開けたら、まるで心の中が見えていたのかと思うほど的確に、あなた好みのドーナツが入っていた!
……その人は、あなたにとってのソウルメイトかもしれませんよ。
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