一歩踏み込んだ想像力を。不妊治療中の人に寄り添うためのヒント『48歳、初産のリアル』

家族・人間関係

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2026.05.06

晩婚化が進む近年、不妊治療は特別なことではなく、私たちのすぐ隣にある身近なものになってきました。とはいえ、当事者の気持ちや痛みまで深く知る機会は、それほどないのが現状ではないでしょうか。もし身近な人がいま不妊治療に取り組んでいるとしたら? 5年間の不妊治療を経て48歳で母になった『48歳、初産のリアル』の著者、読売新聞記者・遠藤富美子さんに、当事者のリアルについてお話を伺いました。知ることで変わる、やさしい距離感について考えます。

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教えてくれたのは……遠藤富美子さん

遠藤富美子さん

読売新聞記者。1995年、読売新聞社に入社し、北海道支社、国際部、マニラ支局、金沢支局、生活部などを経て英字新聞部長兼THE JAPAN NEWS編集長。不妊体験者を支援するNPO法人「Fine」認定の不妊ピア・カウンセラーの資格を持つ。

書影

『48歳、初産のリアル:仕事そして妊活・子育て・介護』
著者:遠藤富美子
価格:2,200円(税込)
発行所:現代書館

「人生の決定権が自分にない」という閉塞感

2022年4月に不妊治療の公的保険の適用範囲が大幅に広がったこともあり、不妊治療を受けるカップルは増加傾向にあります。厚生労働省の資料によると、約4.4組に1組の夫婦が、不妊の検査や治療を受けたことがあるとされています*。

治療中の夫婦出典:stock.adobe.com

読売新聞記者の遠藤富美子さんは、不妊治療を経て子どもを授かった一人です。流産を経て10回目の移植で、48歳のときに妊娠・出産しました。当時の体験を、新聞連載を経て1冊の本にまとめたのが著書『48歳、初産のリアル:仕事そして妊活・子育て・介護』です。

遠藤さん 「私が不妊治療に取り組んだのは5年間でした。20代から仕事中心の生活を続け、43歳で結婚し、不妊治療を経て48歳で出産しました。不妊治療の最中は、自分の今後のキャリアがどうなるのかわからず、先が見えない大きな不安感がありました。ライフプランを考えようと思っても、自分の人生の決定権が自分にない感覚が、とてもつらかったです」

※参考:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001663161.pdf

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腫れもの扱いではなく、「選択肢」がほしい

遠藤さんは、著書のなかで、不妊治療と仕事との両立の難しさ、治療における精神的な不安、46歳での流産経験、パートナーとの関わりについて当時の状況をリアルに書き綴っています。実体験のひとつとして描かれているのが、不妊治療中に知人の出産前祝いに出席したときのこと。周囲に治療していることをほとんど打ち明けていなかった遠藤さんは、当時の複雑な胸のうちを次のように記しています。

これから親となる人は祝福されて当然だ。だが、周囲の「おめでた」の朗報を聞くと、治療がうまくいかない自分との落差をまざまざと見せつけられる気がして、内心つらくて仕方なかった。(中略)不妊患者はおなかが大きくなるわけでもなく、治療中と明かす人も少ないため、存在が「見える化」されない。つらい思いも自分の内に秘めて、抱え込むことになる。

支える夫出典:stock.adobe.com

周囲にどのように接してもらうのが理想的だったのでしょうか。そんな問いに、遠藤さんは次のように答えました。

遠藤さん 「大前提として、妊娠出産は幸せで、おめでたいこと。不妊治療をしている人がいるかもしれないと主催者が神経質になる必要はありませんし、私も腫れもの扱いされていたらかえって困っただろうと思います。ただ、子どもがほしいけれども授かれない人が身近にいるかもしれないとより多くの人が頭の片隅に置いてもらえたら、違う選択肢が生まれるのかもしれません。たとえば、妊娠出産のお祝いを開くとき、対面での参加だけでなく、プレゼントだけ、メッセージだけの参加方法があったとしたら。そんなプラスアルファの声かけが、妊活・不妊治療中の当事者への気遣いになるのではないかと思います」

一歩踏み込んだ「想像力」が救いになる

友人出典:stock.adobe.com

厚労省の発表によると、不妊治療を受けている人のうち、「職場に一切伝えていない(伝えない予定)」人は約半数にのぼります*。私たちの身近にも、気づいていないけれども不妊治療に取り組んでいる人がいるかもしれません。悪気のない言葉や、配慮のない行動で、誰かを傷つけないためにはどうしたらいいのでしょうか。

遠藤さん 「どんな人付き合いもそうですが、何より大切なのは、想像力を働かせること。相手の背景を思い描くその姿勢が、本当に大切なんです。ほんの少しの配慮が、お互いの関係を温かく保ってくれるのだと思います」

相手がどんな状況にいても、心地よい「居場所」をそっと残しておく。それこそが、正解のない悩みに寄り添うための大人の「心の作法」なのかもしれません。

※参考:厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る調査(令和5年度)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000930556.pdf

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