たぐいまれな美しさと演技がリンクする
以前、取材で北川さんとご一緒させてもらったことがある。噂には聞いていたけれど、なんとドラマティックなまでに可愛い人なのだろうとときめいた。ハキハキとインタビューに答える人なんだなというのがドラマ『太陽と海の教室』(フジテレビ系・2008年)の頃の印象だ。
事務所に入所した当初から立て続けに様々な作品に出演を重ねていく北川さん。『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』(フジテレビ系・2009年)でヒロインを演じた頃は、もう月9の常連というイメージも定着。なんだかな、でも当時を思い返しても(あくまで主観として)印象に残っている演技がない。造形美に女優業が追いついていなかったのか。
その後、私が図らずも北川さんに再びときめいてしまったのは、故・森田芳光監督の葬儀に出席した際の泣き顔。どうやらスッピンで参列したらしいのだけど、人目もはばからずに顔を真っ赤にさせて泣く北川さんの姿に世の中はざわめいた。「スッピンがひどい」と酷評を受けることになったのだ。
でも私は不謹慎ながらその泣き顔が本当に美しいと思った。誰かのことを思って泣く、という感情の揺れの表れも相まって「ああ、可愛い子はぐちゃぐちゃに泣いても可愛いんだな」と納得。
その後、その美しさに女優業が徐々に追いつき出していく。『HERO』(フジテレビ系・2014年)の麻木千佳役で見せたコミカルな演技はドン、と印象に残った。目を見開く、驚いた顔のがいまだに脳裏に浮かんでくる。
愛される女の幸福度を美しさでこの世に教えてくれた
そして『家売るオンナ』(2016年・日本テレビ系)では、営業成績はトップクラス。でも鉄の女と呼ばれるほど一切、表情を変えない不動産の営業マン・三軒家万智役に。棒読み演技と思わせない、一定の声色で吐き出すセリフにインパクトがあった。そう、『HERO』出演あたりから北川さんは変わりだしている。
この頃に何があったのかといえば、現在のパートナーとなるDAIGOさんとの出会いと結婚。愛の力は偉大であることを北川さんが自らの美しさを持って世間に伝えてくれているではないか。
加えるなら印象が柔和になった。先述の取材時は若いのに真っ直ぐ前を向いている強さを感じたけれど、最近テレビで見かける姿は気取らず、(必要以上に)騒がず、ニコニコと笑っている様子が残る。元来の造形美に加えて、内面から出る美しさが滲み出てきたとでも言おうか。愛のなせる技とは本当に偉大であり、北川景子さんは今、間違いなく日本で一番美しい女優だ。
と、つらつらと愛がどうだ、美しさがこうだと書いてきたけれど私は現在独身である。結婚しないつもりがない! というわけではないけれど「まあいつか……」と考えている一番あかんやつ。先日、既婚の先輩とそんな独身よもや話をしている時に
「仕事を本気でやろうとするときは家族が邪魔になるものだから」
そう言われてドキッとした。いや、そうなんだろうか? どうなんだ?と1カ月くらい考えていたのだけれど、このコラムを書いて回答は出た気がする。愛し愛される安堵感は仕事に好影響を及ぼす、これで決まり。
プロフィール
スナイパー小林/小林久乃
ライター兼編集者。ドラマヲタが高じてウエブ『マイナビニュース』『テレビドガッチ』でエンタメコラムを連載中。男性ファッション雑誌『2nd』にて「ちょっとどーなの?お洒落メンズ』にて辛口連載も。ついでに書籍や写真集もバンバン、ガンガンとディレクションする働き者。静岡県浜松市出身の独身。近況はツイッター@hisano_k
イラスト/小関恵子
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