日本人にはもともと、自己肯定感が低いタイプが多い
もともと自己肯定感が低いタイプでも、脳を上手に使って人生を良い方向へ導いていくことができます。
ただ、そうはいっても、個人の意志で戦略を立て、人生の決断を下していくことを、さほど良いことに感じないタイプの人もいます。理由のひとつには、子どものころからの刷り込みもありますが、ほかには、もともとドーパミンの動態(どうたい)が人によって異なるということがあります。
じつは、個人というより「集団」の戦略に合わせたいタイプは、東アジアでは7割以上を占めるマジョリティです。つまり日本人は、自己肯定感や自己効力感がもともと低いタイプだということですね。
これにはさまざまな説があり、たとえば、耕作作物の種類によってちがうとする説もあります。東アジアではおもに、多数の労働力を使って水田で稲作をしてきたわけですが、そのことが、食料が安定供給され、社会の構造や権力機構が長く続く要因になったと考えられます。一方、ヨーロッパで個人主義や、個人の戦略を優先する人が増えたのは、「みんなで一緒になにかをすることが不利だったから」と考えることができます。それはいったいどんな環境でしょうか?
仮説としては、「伝染病」の存在が考えられます。ヨーロッパではきれいな水が手に入りづらく、たくさんの人が集まるところにいると、すぐに感染してしまうわけです。すると、集団でなにかをする人たちの遺伝子は淘汰(とうた)されていきます。つまり、ひとりで勝手に生き方を決める人のほうが生き残るという仮説が成り立つわけです。
いずれにせよ、自己肯定感の多寡(たか)については、どちらが良いというものではありません。環境要因によって、適応戦略が変わるというだけなのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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