学歴やIQが生き延びていくのに必要かどうかは、誰にもわからない
他人の「ものさし」という意味では、学歴やIQは、一般的にとても大切だと考えられているもののひとつですよね。たしかに、IQが高ければ成績が良くなる傾向にあり、学歴が高ければ、将来的に高い報酬の仕事に就ける可能性は高まるでしょう。
ただ、学歴やIQが、生き延びていくために本当に必要なものかどうかは、じつは誰にもわかりません。なぜなら、「その人がどんな人生を選ぶのか」によって、必要な条件なんていくらでも変わるからです。
ひとつはっきりいえることは、生物の目的はもっとシンプルだということ。
あなたがいま存在するのは、前の世代の「生き延びる力」が高かったためで、その遺伝子を持つあなたという子孫を残すことができたからです。生物学的な観点では、個体としてというよりは、集団として生き延びることが重要であり、一個人が「優秀であること」にはそもそも重きを置いていないのです。
でも、わたしたちは社会的な存在でもあるので、つい特定の社会や条件下のみでうまく生きていくための、狭い範囲での勝負に拘泥(こうでい)してしまいます。ただ、そこでの勝負と、「生き延びていけるかどうか」は直結していません。たとえ学歴やIQが低くても、それらが高い人より圧倒的に成功している人はたくさんいます。
そこで大切になるのは、学歴やIQを高めることにこだわるのではなく、まず自分が「どんな人生を送るべきか」を決めること。そして、それを達成するための力をつけることのほうが、生き延びていくにはよほど大切なことなのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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