食を守る添加物
加工食品を製造し消費者に届ける過程において品質を維持するためになくてはならないのが「食品添加物」です。
肉や魚などの生鮮食品は、なにもしなければ日持ちせず、腐っていきます。加工食品では、保存料や殺菌剤などの食品添加物を使うことによって食品を長持ちさせ、おいしく無駄なく食べられるようになるのです。
【例・練りもの製品】
①魚が水揚げされる
→そのままでは菌が繁殖して腐るので、日持ちするように菌を減らすよう加工
②すり身にする
→すり身は冷凍保存し遠方の工場まで運ばれる
③工場でかまぼこやちくわなど、さらに加工する
【肉の場合】
ハムやソーセージに加工されるとき、おいしそうな色を保ち、腐らないようにするために食品添加物を加えています。
食品と添加物の違い
これまで調理法のひとつとして、食品に食品を混ぜたり、加え(添加)、例えば塩を加えたり、酢で〆たり、砂糖で甘くしたりすることで食品が長持ちする方法を人類は編み出してきました。これらは味わいにも影響し、調味料であるのでいずれも「食品」という扱いになります。
一方「食品添加物」は製造過程や加工や保存の目的で使用するものを指し、味や香りに必要な甘味料や香料、栄養成分を補うビタミンやミネラル、品質を維持する保存料、酸化防止剤などがこれにあたります。
中華麺の「かんすい」や豆腐の「にがり」、こんにゃくに使われる「消石灰」も昔から使われてきた食品添加物ということになります。
日本の添加物は世界的に見てもトップクラスの安全性
食品であっても食品添加物であっても、摂りすぎは健康を害す恐れがあります。塩も摂取しすぎれば、脳卒中や心臓病のリスクが高まります。どんなものでも適切な量であれば、通常健康への影響は見られません。
食品添加物の安全性評価では、試験で有害な影響が見られなかった量を「無毒性量」としています。この無毒性量の1%の量を「人間が1日に摂取する許容量」と定めています。これは一生、毎日食べ続けても健康に影響のない量と言われています。
日本は世界的に見てもかなり厳しい安全基準を設け、大幅な安全域をみているため、たとえ基準を10倍、20倍超えてしまったとしても、すぐに健康被害が出てしまうといった危険はないとのこと。
私たちが消費する食品は、厳しい基準をクリアしている食品なので、安全性は世界でもトップクラスということになります。
食品添加物は欠かせない暮らしのパートナー
食品添加物は長い年月をかけて培われてきた、我々の食文化の一端を担っているといっても過言ではありません。昔から着色のために使われてきたシソの葉やクチナシなどは、現在はエキスにして食品添加物の着色料として使用されています。このほかにも天然由来のものが数多くあり、今後も文化的な側面としても未来に繋がっていく技術ばかりです。
食中毒の予防や安全な食を守るためには、加熱や殺菌などと並行して添加物をうまく組み合わせて保存する必要があります。
食品添加物を過度に怖がる必要はありません。適度な量を守り、上手に使いこなすことで、私たちの食を支えてくれるのです。食品添加物は暮らしの良きパートナーと言えるでしょう。
お話を伺ったのはこの方
一色 賢司 先生
北海道大学名誉教授、放送大学客員教授
(一財)日本食品分析センター学術顧問
(一社)栄養改善普及会会長
「加工食品は身体に悪い」と言われてきましたが、加工食品そのものが健康に悪いのではなく、同じようなものばかりを偏って食べたケースを指すのではないでしょうか。全体的な栄養バランス考えながら、時々食事に取り入れたり、忙しい時に加工食品に頼ることは悪いことではありません。厳しい基準をクリアした日本の加工食品を活用して、食生活を豊かに、便利にしていきましょう。
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