同じものを食べるのは悪いこと?「ごはんは何にしよう」をいちど捨ててみることについて

カルチャー

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なんとホームステイの一ヶ月間、晩ごはんは毎日、トマトチーズサンドイッチだけだったのだ! イタリアンと日本食屋さんに連れて行ってくれた2回をのぞき、とにかく毎日、トマトチーズサンドイッチ。それまで、晩ごはんには毎日違うものを食べるのが当たり前だと思っていたわたしには、まさにカルチャーショック。衝撃的な食生活だった。

「アメリカ、びっくりでしょ!」とずっとネタにしてきたけれど、今ならばわかる。それだって別におかしなことではなかったんだと。当時のわたしには毎晩同じサンドイッチなのは、ただただ物足りず悲しかったし、わたしはここから先の人生、絶対にもっといろいろ美味しいものを食べてやる、と誓った。でも決して意地悪で毎日同じサンドイッチだったわけではない。ホストファミリーもまったく同じ食事だったのだから。彼らは共働きで忙しく、ごはんや調理に時間を使いたくなかっただけなのだ。

栄養的には同じものばかりでなく別の食材も食べた方がいいよ、とは思うけれど、彼らの合理的な判断を「楽しみがない」とけなすつもりは今のわたしにはない。それどころか、いまや食べ物のことを考えるのが辛くなってしまったわたしを慰めてくれる貴重な実例だ。同じものばかり食べてたって、立派に仕事をして元気に生きているじゃない。毎日『何を作ろう?』と悩みながら、いろんなおかずを作る必要が本当にあるの?

彼らは「立派に仕事をしている」どころか、ヴェローチェとCoCo壱番屋に毎日通っていた先輩は編集者として多くのヒット作を出し、トマトチーズサンドイッチを毎日食べていたホストファミリーは夫婦揃ってアメリカのメガバンクでマネージャーを務め、みな超のつく働きものだった。自分の人生に必要なものを取捨選択したうえで、食に割く時間と思考を大幅に減らしただけだったのだ。アップルの創業者、スティーブ・ジョブスの有名なエピソード「毎日同じコーディネートの服を着る」と同じことなのだろう。

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著者

田内しょうこ

田内しょうこ

「働くママの時短おさんどん料理」「育休復帰のためのキッチンづくり」「忙しいワーキングマザーのための料理」「子育て料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。出張教室やセミナーのほか、食と子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『「今日も、ごはん作らなきゃ」のため息がふっとぶ本』(主婦の友)などがある。

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