【犬山紙子×川村真木子】コロナ渦で「良いパートナーシップ」を結べる夫婦とは

カルチャー

2021.03.06

長引くコロナ禍、家族間、特に夫婦関係に変化が生じたというご家庭も多いよう。経済面、生活面でさまざまな影響が出ている中、「コロナ離婚」という言葉まで飛び出すこのご時世ですが、逆に「仲良くなった」「絆が深まった」という声も。それぞれの家庭にはどんな違いがあるのか、コラムニストの犬山紙子さんと社会派コラムに定評のある川村真木子さんが語り合います。

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コロナ禍でおうち時間が増えた今、日本人の夫婦はどうなった?

川村真木子さん(以下川村):コロナ禍でテレワークが進んだ中で、先日新丸ビルで公衆電話みたいなボックスが並んでいたのを見かけたんです。それがテレワーク用の個室のワークスペースというからびっくりしちゃって。こんな幅1mくらいのカプセルに入って仕事するおじさんたちがいっぱいいるんだと思って。会社からは出社するなって言われていて、でも家では奥さんから追い出されて、行く場所がない人もいると聞いて驚きました。

犬山紙子さん(以下犬山):旦那さんが在宅するようになってうざいっていう奥さん側の意見、よく聞きますよね。旦那さんがいると困るっていう。

川村:私は外資系に勤めているのでまわりに外国人が多いんですけど、ほぼ100%コロナ渦で家にいるようになってハッピーなのは外国人ですね。奥さん側も「旦那さんが家にいるようになってよかった」って言っているのは外国人で、日本人は夫婦喧嘩の話をしていますね。同僚の日本人のメンズは本当に「家に居場所がない」って言って、出社したがっています(笑)。今、オフィスは20%しか使っちゃいけない決まりがあって、じゃあ誰が出社できるんだって、その20%の中を取り合っているんですけど、奪い合っているのは日本人。外国人の社員は家にいてもハッピーだし、出社しないでいいならしないというスタンス。じゃあなぜその差が出るのかと考えたら、やはり家のことをやっているからなのでは、と思います。

犬山:そうですね、家事を自然に分担してくれるようなパートナーかどうかって大きな分岐点ですよね。

川村:パートナーが家にいてくれたら子どもの面倒も半分ずつ、家事も半分ずつ……とシェアできるとパートナーがいるほうがラクだし楽しいし、いいなっていう風になるのが自然ですよね。

犬山:そうでしょうね。一緒にいるのに、分かり合えない、支えあえないなら、いない方がマシですからね……。

川村:やろうと思っても、ずっとやってこなかったから、何をすればいいかわからないんじゃないかな。その場合は「これからテレワークだから、仕事の合間に一緒に家事をやりたい」って伝えられるかどうかがキモですね。女性側も仕事していたら、なおさらです。

日本人女性の家事の負担の偏りすぎは、世界的に見ても異常!?

犬山:わたしが取材した中では夫まわりの家事だけは絶対やらないって決めた方がいますよ。

川村:あははは(笑)いいかも。決めないと、うっかり「ついでだし」ってやってあげてしまう人が多いから。

犬山:洗濯物とか、ゴミだしとか、食事とかすべて「夫周りのことはしない」と決めるんです。そして本当にまったくやらなければ、自分でやるようになるんですよ。その人の夫側にも話を聞いたんですけど、「家事ってやってみたら案外できる、あれ?やってみたら気持ちいいじゃん」って感じたそうですよ。

「自分は何もやっていないという罪悪感があって、それを抱え続けるよりもやったほうが全然ラクだって気づいた」っておっしゃっていて、罪悪感があったんだ、と驚きました。きっかけがあれば、変わる男性も多いはず。だから、女性側は強硬手段に出ていいと思いますけどね。

コロナ禍 でハッピーな家族とそうでない家族の分岐点は

川村:えー、すごい面白い! 私ちょうど昨日、同僚と話していて、その同僚がまだ結婚して2年くらいしかたっていないのに、奥さんが自分の家事を一切やってくれなくなったと。朝自分が置いていった目玉焼きのお皿が、仕事して帰宅したらそのまま置いてあって、それですごい悲しくなったと言うんです。「奥さんは自分のお皿も子どものお皿も洗っているのに、僕のだけ置いてある。奥さんのこと大好きで結婚したのに、こんな屈辱を受けるために結婚したんじゃない」ってすごい傷ついたって話していました。

犬山:逆にその状況で、まだ自分が今まで何もしてこなかった反省をするんじゃなくて、他者を攻撃するほうに動いているのがすごい。気づけよって思いますけどね。

川村:そうですね、たしかに(笑)。

犬山:でもそこでやっぱり気づかないっていうのが、あるあるなんだろうなと今、話を聞いて思いました。

川村:「俺はもう家にいらない人間なんだ」みたいな意識でしたね。私も思わずかわいそうだと思ってしまった(笑)

犬山:いきなり何も言わずに夫の世話をやめるんじゃなくて、意図を伝えてからやらないとだめってことですね。お互いの仕事量がフェアじゃないって。

川村:そうですよね、ちゃんと話せばすれ違いはなくなりますね。態度で示しても、全然伝わってないもん、その彼には。ただいじわるされたとしか思っていないから(笑)。でもやっぱり日本は女性の方に家事育児全般をまかせすぎなんですよね。諸外国とくらべても、日本はひどい! 去年の世界経済フォーラムが発表した男女格差をはかるジェンダー・ギャップ指数でも153カ国中121位でしたからね。

犬山:そうですよね、日本は女性側に家事の負担がかたよりすぎで、政治でも経済でも女性のリーダーが少ないし、賃金の格差も大きい。

川村:経済大国第3位にも関わらず、女性の地位が低い。家事育児が大変すぎて、それプラスお金を稼ごうとすると、神業になっていくから。明らかにアメリカ人の旦那さんは当たり前のように家事も育児もやっていますからね。日本人のメンズは逃げまくる感じ。そもそも自分の父親が家事をやっていなかったから、ロールモデルがいないんですよ。だから自分もそれをリピートしちゃうんですよね。

それと、女性の方でも「キッチンは私のお城だから、男性は入らないで」っていう人もいる。寝室も、子どもと一緒に部屋にひきこもっちゃって、旦那を完全に締め出しちゃう。フランス人男性から聞いたんですけど、子どもが生まれたら僕を締め出すから、もう日本人の女性とは結婚したくないって言うくらいだそうで。

犬山:フランスでは夫婦と子どもで寝室を分けるっていいますよね。夫婦だけの空間や時間を大事にする。

川村:日本は男性も女性も協力しない。分断しようとするんですよね、家庭の中でも社会でも。それは何故かっていうと男らしさ女らしさっていうのを求められすぎているせいもあるのかなって。もうちょっと男女が歩みよって、お互いにここは助け合うとか、得意なことはやるっていう風になっていかないといけないですよね。とはいえ最近は少しは改善されてきていて、上場企業でも女性の取締役の人数を増やそうととしたり、SDGsの活動をしたり。逆にそういうことをやっていない会社は評価されなかったりするので、そういう方向に向かってはいるし、コロナでそれが加速するのかなと思っていますけどね。夫婦間でも「家事シェア」が以前よりも進んでいる印象はあります。

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