「俺のほうが稼いでいるから、家事分担は少なくてもいい」は正論なのか?
現在の50代半ば以上の方々は、「専業主婦」と「働く夫」という組み合わせが普通で当たり前だった世代。
それが1992年ついに共働き家庭が専業家庭を越えました。いまからなんと28年も前のことです。
以来ずーっと日本では共働き世帯の方が多くなり続けて、2018年にはついに共働き家庭が専業家庭の倍以上になりました。
それでもなお、「俺のほうが金を稼いでいるんだから、家事育児の分担は少なくてもいい」と主張する男性もいます。
その理由はこうです。
・稼ぐことで、家庭への貢献は十分果たしている
・「たくさん稼ぐ=忙しい」ために時間がない
・自分と同じだけ稼いでいるなら、同じだけ家事をしてもよい
「稼いでいるほうが、家事育児の割合が少なくていい」という話が当然としてまかり通ってしまうと、ほとんどの女性は家事育児にずっと追われることになります。
なぜなら、それは個人のスキルの問題ではなくて社会的な背景の問題だからです。
一番の理解者であってほしいパートナーが足を引っ張る!?
日本の男女間賃金格差は、主要先進国でも最下位という状況。※
女性の給与は正社員であっても男性の75%ほどというのが実情です。
くわえて、男性の育休取得率7.48%。女性は83%。育児とともにキャリアを変化させていく女性に対して、一直線に進む男性のキャリアでは、収入の差がうまれることは自然です。
この社会的な背景が改善されていかないと、男女の賃金格差は埋まらず、稼ぎの少ない女性はずっと家事育児負担が高いままで、家事育児負担を担い続ける以上、ずっと賃金格差は埋まらないというスパイラルです。
つまり、「俺の方が稼いでいるんだから、家事育児は俺よりも君がするべきだよ」というのは、穴の下にいる人に向かって「俺より高く飛べたら認めてやるよ」とドヤ顔しているようなものです。
ここまでは、社会的な背景から見た話をしてきましたが、個々の家庭の事情や価値観はそれとはまた別の話です。
なので後半は、個々の家庭における話をしたいと思います。
※大和総研 「産業別に見た男女間賃金格差はこの10年でどう変化したのか」(2018) より
結論は「正しさ」よりも「納得感」があるかどうか
それぞれの家庭における理想は、とてもシンプルです。
あらゆる夫婦のコミュニケーションがそうであるように、大切なのは分担の割合でも、結論でもありません。
大切にすべきはただひとつ。
「その家事育児のシェアについてお互いに納得感はあるか?」
ということです。
べつに「俺のほうが稼いでるから、家事育児はほとんどしません」でお互いが納得しているのならそれに否を唱える理由はないのです。
なかには「家事育児はわたし(妻)がたくさんやるから、あなた(夫)にはしっかり稼いでもらいたい」という家庭もあるでしょう。
問題なのは、お互いの「納得感」が得られなかったときです。
「正しさ」をお互いに押し付けても、誰も幸せにはなりません。
これまでの連載でも書いてきたように、相手を論破しようとせずにお互いに相手の言い分を理解し合うようにしてみましょう。
そもそも、稼いでる金額と家事育児の比率を同じ指標で考えていること自体が不自然だとぼくは思うのです。
仕事面にしても、家庭面にしてもお互いが助け合えることが一番で、どちらかをマウントするような正義を振りかざす必要なんてないはずです。
お互いが納得感のある関係を育んでけるように、話し合いをしてみましょう。
三木 智有
NPO法人tadaima!代表 日本唯一の家事シェア研究家 子育て家庭のためのモヨウ替えコンサルタント。初の著書『家事でモメない部屋づくり(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)』は好評発売中!
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