私にとって、パレドオールと言えば…
こちらのチョコレートは今年のホワイトデーの限定品。その名も「コフレ トワ エ モア」フランス語ではあなたと私。ハートやホワイトチョコレート、そしてパレドオールの名の由来にもなった丸い円盤型のボンボンショコラにブルガリアローズやピスタチオのフレーバーがラインナップ。特に印象的なハート型のチョコレートはいちごとシャンパンの味わいです。
私にとって、一番最初に出会った「チョコレートの店」がパレドオール。その頃は、まだ大阪吹田の比較的ローカルな地で「飛び切りおいしい町のケーキ屋さん」として有名でした。私の自宅の近くにもカフェを併設したお店があり、お世話になった方へのお礼や子どもがいたずらをしたお詫びに……などなどさまざまなシチュエーションでいつも使わせていただいていたのです。どんな状況でもどんな場面でも(汗)このお店のケーキやお菓子をお持ちすると、その場が和み、喜んでいただける……というマジックにどれほど助けられたことか!
それだけではありません。ママ友とキッシュが自慢のランチをいただいたり、仕事の打ち合わせで使わせていただいたり、時にはひとりで自家製グラノーラやチョコレートクリーム上質なアイスクリームで有名なこちらのパフェを楽しむことも多かったのです。
そんな、「町のケーキ屋さん」「おしゃれなカフェ」の1ファンだった私が、パレドオールを「チョコレートの店」として最初に意識したのが、チョコレートくんのインタビュー記事を書くことになったときです。当初は、チョコレートの専門家の対談記事になる予定でしたが、急遽、スタッフやライターの私も含めての座談会スタイルへ変更になったのです。当時は今ほどあちらこちらのチョコレートを食べ歩いていなかった私は、近所にありながらも、まだ一度も口にしたことがなかったパレドオールのチョコレートを、その現場に持参し、専門家のレクチャーを聞きながら、最初のひと粒を味わいました。その時の自分に起こったことを、実は今でも言葉ではうまく言い表せないのですが、ひとつだけ書くとたら「!」です。簡単に「おいしい」と言ってしまっては申し訳ないくらいに高貴なものをいただいた実感がありました。カカオの味と香りの深さに強く「異国」を感じ、滑らかな口当たりに技術の確かさを知り、「!」が胸に刻まれました。
三枝俊介氏 パティシエからショコラティエへの転身
30年近くのパティシエとしてのキャリアから「Bean to Bar」にこだわるショコラティエへと、パレドオールのシェフ三枝俊介さんが新たなスタートを切られたのは2014年のこと。私がよく通っていた、ケーキのお店など長年人気を誇ったいくつかのブランドを閉鎖して、チョコレートを作るための時間とエネルギーを確保することを決められたのです。そして、新しくカカオ豆の加工からチョコレートを作ることまでを手掛ける「Bean to Bar」に乗り出し、アルチザン パレドオールをスタートさせました。ここには遠い南の国から長い旅をして運ばれたカカオ豆が美しい自然の中で丁寧に迎え入れられ、斬新なアイデアでいつも日本のチョコレート界をリードするパレドオールの作品となって生まれ変わるのを待っています。
年間10トン以上のチョコレートを扱うシェフとして
最近では「Bean to Bar」というと、本格チョコレートの代名詞、またはチョコレートマニアに人気の逸品というイメージが強いのですが、三枝シェフによると「実は、世界的にも自らカカオ豆からチョコレートに仕上げるまでを手がけるシェフは、数える程しかいません。」とのこと。パティシエの時代からずっと、チョコレートと向き合って数々の作品を生み出してきたことから「チョコレートのプロとして」多くの使命を感じ、後進にチョコレートの文化を伝えることにも思いを巡らせているそうです。
ショコラティエとしての活躍は、昔から地元で応援してきたファンとしてはとても誇りに思えて嬉しいことなのですが、三枝シェフの作る「おいしいケーキ」や「カフェ」を愛していた私にとっては少しさみしくて「カフェやケーキ屋さんを再開する予定はないのですか?」とお聞きしました。すると、潔く「予定はありません。チョコレートの世界は、まだまだわかっていないことが多いと感じています。日常のお菓子やカフェをやりたい人はたくさんいるので、その人たちに任せたいと思っています。」と、ご回答をいただきました。
キャリアを重ねても「まだまだ」と意欲的にチョコレートに、カカオ豆に取り組まれている思いの深さを目の当たりにすると、不思議なほど「残念」とか「さみしい」気持ちは無くなり、ますますパレドオールのチョコレートへの期待が高まりました。
斬新コラボ成功の秘訣は、カカオへの信頼感とキャリアが築いた自信
こちらが世間を「あっ」と言わせた噂の「獺祭ショコラ」。あの人気の日本酒「獺祭」がチョコレートに? と驚かれたり疑問に思う人もいるかもしれませんが、その味わいは「日本酒とチョコレート」がぴたりと、そしてまろやかに合わさって、全く境目を感じない仕上がりです。いわゆるウイスキーボンボンのように、実際にお酒がドッと口に広がる、というタイプではなく、チョコレートの内側にあるガナッシュそのものに、獺祭が潜んでいます。ひと粒口に入れるとほんのりお酒の吟醸香と麹の風味を感じることができ、それらが違和感なく、チョコレートと完璧に融合しています。獺祭ショコラが素晴らしいのは「チョコレートの中に獺祭が入っています。」というアイデアだけでなく、それぞれのおいしさをより引き立てる計算と仕組みを感じるところです。これは、三枝シェフの獺祭というお酒に対する「敬意」なのだと気づかされました。
パレドオールのチョコレートは、カカオの産地、お酒、ウィスキー、シャンパン、そしてはちみつ……と、食べ比べが嬉しい「深追い」チョコレートがいつも楽しみなのですが、今シーズンもバレンタイン限定として、さまざまなバリエーションがラインナップしています。
さまざまな素材と合わさっても、チョコレートは「パートナー」を引き立てながら、チョコレート自体の味わいも深く表現できる……そんなカカオに対する絶大なる信頼が、多くのコラボレーションを成功させているようです。
こちらは、コフレシャンパーニュ。日本酒だけではなく、ウィスキー、シャンパンとのマリアージュもアイデアが光る組み合わせです。こちらでは4種類のロゼとチョコレートを合わせて奥行きのある味わいを生んでいます。バリエーション豊富な「パートナー」と、うまく息の合ったチョコレートを作るのは相当な種類のクーベルチュールで試作を繰り返されているのでは? と思い、そのコツをお聞きすると
「お酒の強さや個性に合わせてカカオ分の強弱を調整し、ビターのみでなくミルクやホワイトなども多彩に混ぜて使っています。あるいは、チョコレートの配合を固定してお酒を変えるテイスティングを繰り返して、お酒に合わせて産地の違うカカオを使うこともあります。」とのこと。
やはりこの緻密な味わいは、高い技術とカカオの知識、そして膨大な時間を費やしてのテイスティングの末に生み出されるようです。
加えて、気になっていたことをもう1つお聞きしました。それは最初に挙げた「獺祭ショコラ」や以前私が座談会に持参した、カカオの産地別に作られた「からだにおいしすぎるショコラ」、そして今回のバレンタイン限定ラインナップにもある「ジャパニーズウィスキーコレクション」など、パレドオールのチョコレートのターゲットが、少し男性の好みに向いているのでは? と思っていたからです。
ところが、三枝シェフの答えはこうでした
「チョコレートは国境もなく、人種の違いもなく、年齢にも関係なく子供から老人まで、また宗教の制約もなく、アレルギーもほぼないパーフェクトフードです。ターゲットはなくすべてのチョコレート好きとカカオ愛する人の為に。」
パーフェクトなのは、三枝シェフ、あなたです。私はこの言葉に潜むチョコレートへの愛の深さに感動するとともに「〇〇向き」などと、マーケットを測ったような質問をしてしまった自分をとても恥じました。「売る」ためのものではなく、「多くの人に愛されるように」と、心を砕き、そして人生をチョコレートに賭けている方に、とても失礼なことを聞いてしまったのだと気づいたのです。こんなにもチョコレートへの愛が深いシェフが作る作品だからこそ、パレドオールのチョコレートは、心に響く味わいで人を優しく癒すのです。
失礼ながら、このようなやりとりをさせていただいたおかげで、今後の作品がより一層楽しみになりました。
全ての人々に、おいしいチョコレートを
「パーフェクトフード」と三枝シェフが仰ったチョコレートの象徴のような、その名も「からだにおいしすぎるショコラ2021」は、ひと粒に乳酸菌が1000億個配合されているとのこと。しかも、ガナッシュには砂糖を使わずに、メープルシロップとはちみつで甘みをつけて、生クリームは豆乳に、バターは良質のごま油に……という風に、その名もズバリ「からだにおいしすぎる」食材だけが使われています。はちみつや豆乳など、ナチュラルな素材の味わいにも興味津々。糖分、油分の摂取に特別な制限がなくても、ぜひ味わってみたいと思える、好奇心をくすぐるチョコレートです。写真のAは期間限定のエクアドル産カカオとブルーベリー、Bのペルー産カカオは優しい味わい、Cのマダガスカルカカオはシャープな酸味、Dのベネズエラ産カカオは苦みほんのり…とのこと。「365日、毎日、ひと粒、おいしい習慣がキレイをサポートします。」……と、オンラインショップで添えられたコピーにも、期待感が高まります。
チョコチョコ行ってます!
私がカフェとしてのパレドオールのファンであったことは、最初にもお話しましたが、実は現在も写真のようなパフェやケーキ、チョコレートを楽しめるサロン併設の店舗が東京は新丸の内ビルディング、大阪は梅田ハービスエントにあります。私は大阪のお店に、日ごろからお友だちや家族、仕事の合間にひとりでもよく伺いますが、大きなガラスから入る日の光によく映えるインテリアが心地よく、リフレッシュするにはぴったり。上品で味わい深いケーキやチョコレートもひと粒から味わうことができるので、バレンタインやホワイトデーのスタイリッシュな過ごし方の1つとして、覚えていてもらえると嬉しいです。
恒例!断面披露!
2021年バレンタインの限定品「恋人たちの小箱」ことコフレレザムール。(現在は販売終了)さてこの中で「断面」が気になるチョコレートはどれですか? ハートも気になりますが、ここは他のショコラティエでもあまり見かけない「レター」ではないでしょうか? さて、こちらの中身は……?
きちんと酸っぱいベリーが印象的なホワイトチョコレートでコーティングされた手紙の形のチョコレート。ベリーの酸味を追いかけるようにホワイトチョコレートの甘さが広がり、そして両方が同時にとろけていきました。「もう1つ食べたい!」ときっと誰もが思うインパクト充分の恋文。ひと粒食べると、甘酸っぱいあのころを思い出すかも…しれません。
オンラインショップでもここで取り上げたチョコレートのうち「コフレレザムール」以外は、全て購入OKです。(売り切れていたらごめんなさい!)
次回は、ハートがいっぱい超ラブリー!愛されショコラティエ―ル(女性ショコラティエ)に出逢います。
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