【対談:小幡和輝×葉一】学びの場は学校だけではない!未来を生き抜くためのキーワードは「本気」と「選ぶ力」

家族・人間関係

 【小幡和輝×葉一】学びの場は学校だけではない。未来を生き抜くためのキーワードは「本気」と「選ぶ力」

2021.04.11

YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を運営する教育系YouTuberの葉一さん。小学3年生から高校生に向けた授業動画や、学生の悩み相談にこたえる動画は、新型コロナによる休校などで、世代を超えて話題となりました。今回は、元不登校の起業家 小幡和輝さんが開催されたオンライントークイベントで、教育系YouTuberの葉一さんと対談されましたので、その様子をレポートいたしました。人とは少し違う生き方を選んだ2人が、これからの時代を生きる子どもたちに必要なことは一体何かを語ります。

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学校もYouTubeも学びの場の選択肢のひとつ

パソコン出典:stock.adobe.com

小幡和輝さん(以下小幡):葉一さんはYouTubeのイメージをポジティブに変えた方だと思いますが、なぜYouTubeで教育をやろうと考えたんですか?

葉一さん(以下葉一):前職で個別指導塾の塾講師だった時に、月謝の関係で塾に通えない子が想像以上に多いと知りました。それを「しかたない」ことと済ませてはいけない気がしたんです。そこで、子どもたちからお金をもらわずに教育を届け、かつ自分も収入を得る方法はないかな、と考え始め、塾講師をやめました。2012年のある日にYouTubeを見ていたら、YouTubeはアカウントを作らなくても視聴できるし、見るのにお金も発生しないと気づいたんです。あ、ここに授業動画を投稿したら子どもたちが見られるじゃん、と思った翌日から動画投稿を始めました。気づいたら今、9年目になっています。

小幡:YouTubeがトレンドになったのはここ数年ですから、9年前から始めていたのがすごいですよね。
学校は学びの土台だけれども、それ以上の学びの場を求める場合、民間教育では経済格差が教育格差につながる面がありますよね。葉一さんの動画はまさに、経済状況に関係なく学びの環境を届けられる上に、葉一さん自身も収入を得られるいい仕組みだと思います。
塾や他の学びの選択肢と比べて、ご自分のコンテンツについてどのくらい自信を持っていますか?また、9年続けてきて、開始当初のユーザーはもう大きくなっていると思いますが、元ユーザーから感想をもらうことはありますか?

葉一:コンテンツの内容に関しては、自分の授業動画を見ていれば絶対に成績が上がるという自信はあります。それは、3年間の塾講師時代、ずっとトップ3の評価をもらっていた自信もあります。
また、私のチャンネルは、学校に行かれないけど勉強をしたいという不登校ユーザーが多いんです。数年前はまだ認知度も低くて、私のチャンネルで勉強していることはマイナーだったので、子どもたち自身もこれでいいのかな、って迷っていたと思います。
でもその子たちが大きくなって、「あの授業を聞いて間違っていなかった」と手紙をもらったりすると、やってきてよかったなとすごく思いますし、自信になっています。

小幡:では、逆に、葉一さんの授業を受けてれば学校は必要ないじゃん、という意見についてはどう考えますか?

葉一:私は塾や学校が必要ないとはみじんも思っていません。学校で学べることは、授業だけじゃないですよね。集団活動で学べることは、絶対自分のチャンネルでは学べないので。
だけど、学校に行かなきゃいけないとも思っていない。学校はただの選択肢の1つという発想です。
学校に行きたくない子たちには「学校に行かなくてもいいけれど、勉強はこのチャンネルに任せてくれ」という気持ちでいます。

小幡:とても共感します。学校は、1つの学びの手段で、さらにコミュニティとしてもとても価値がある。
だから、行っておけば安心という人が多すぎるのかなとは思います。学校が全部をやってくれると期待しすぎだし、だからこそ不登校になった時に、本人の劣等感や周囲からの偏見につながってしまうんですよね。僕は、もう少し学校の価値や役割をいい意味で下げたいと思っています。 
学校が好きで、友達に会いたいならもちろん行ったらいい。でも学校が合わなければ、勉強に関しては、葉一さんのYouTubeや、他にも選択肢がいろいろありますよね。

葉一:「学校の価値をいい意味で下げる」っていい言葉ですね。期待値が上がりすぎていて、先生に全て任せるという価値観でいると、それが学校の先生に負荷をかけすぎて、先生が生き生き仕事ができないとか、業務的にできることが減ってしまうという問題はありますよね。
私は、学校に行かなきゃダメ、というのは違うと思うんです。たとえばクラスでいじめを受けている場合、死にたい気持ちや苦しみがあるのに、そこに行かなきゃいけないわけがない。だったら、違う手段を選んだらいいと思います。

子どもたちから、学校に行かない選択肢を選ぼうかと思っているけどどう思いますか? と相談を受けることがあります。
それに対しては「いいんじゃない?でも、学校に行くことに使っていたエネルギーを、他にどこに使うか探してごらん」と声をかけるようにしています。他に楽しみや居場所を見つけることが、自己肯定感につながると思うんですよね。

生き生きしている子は、何かしら自分の居場所を見つけて、エネルギーを注いでいる。でも、学校に行かない子の中には、みんなができていることができないと思って塞ぎ込んでしまう子もいます。

だから「足を止めずに調べるところから始めて、いろんなことにチャレンジしていこうね、合わなかったら捨てて構わないから、いつかこれかな、と思うものが見つかるはずだから」と話しています。

子どもとYouTubeとの付き合い方って?

葉一さん

小幡:本当にそうですよね。では、子どもとYouTubeとの付き合い方についてはどう思いますか?

葉一:自分も2人子どもがいますけど、目的意識なくダラダラ見るのは生産性がないので……結局ゲームも同じような悩みが出てきますが、時間を決めるのか、やることをやってからなのかというのは家庭のルールでいいと思います。

わが家の場合は、たとえば1日漢字を3個覚えるとか、やることをやったなら見てもいいんじゃない、という考えです。子どもがYouTubeを見ることがリフレッシュになっているなら、それは本人にとっては有益かもしれないと思っています。

小幡:なるほど。僕は、本気で見るならいいのかなと思います。たとえば、ヒカキンさんの動画を完コピするという目的で、自分でYouTubeを撮ってみるための研究としてたくさん見るのはいいと思うけど……ダラダラ見続けるのはあんまりポジティブには思っていないですね。

葉一:目的があるならいいですよね。ヒカキンさんの動画完コピは子どもにやってほしいですね(笑)。あれ、すごく簡単にできそうなんですけど、やってみたらめちゃくちゃ難しいですからね。

小幡:動画を見るときに、1年間見続けて傾向を分析するのもいいですよね。マイクラの動画は何本だったとか、分数は10分のものが一番多かったとか。

葉一:そこまでできたらいいですね。きっと本気でやろうと思ったら、分析から始めると思うんですよね。なんでヒカキンさんの動画は人気なんだろう、と。効果音の付け方や角度の見せ方や、テクニックなどを研究していくと、多面的に見る力が確実に伸びるし学びになると思います。

本気でやって合わなければやめていい

小幡和輝さん

葉一:逆に小幡さんに聞きたいのが、本気で取り組むことを大事にする人の中で「始めたら最後までやれよ」という人もいますよね。でも自分は、本気で始めても合わなければどんどんやめちゃっていいよと思うんですが、どう思いますか?

小幡:僕もやってみてやめることは多いです。途中でやめるのはいいと思うけど、ある程度本気でやらないと、自分にあってるかどうかもわからないし、学びにならないとは思います。

葉一:うんうん。親御さんから、習い事を始めても子どもがやめたがったらやめさせていいのか、やめグセがつくんじゃないか、とよく相談されるんです。私は、短期間でも子どもが本気でやっていたならやめてもいい、やめグセは気にしなくていいと思ってるんですが。

小幡:バランスは難しいけれど、イヤなことを頑張り続ける時間ももったいないし、タイミングもありますよね。その時はできなくても1年後なら意外とできちゃったりすることもあります。

僕もある時、チャンネル登録者数が1000人を超えるまで毎日YouTubeの配信をしようと決めたんですよね。それで4カ月毎日更新して、1000人超えたら疲れちゃって(笑)。それでわかったのは、僕はたぶん対談の方が好きで、1人でしゃべるのは向いてないということ。あの時失敗をしたから、今度は思考を変えてコンテンツを作ろうと思って、再挑戦しています。

葉一:本気でやってみたから、自分のスタイルがわかることは大人でもありますよね。

これからの時代を生きるために身につけたい「選ぶ力」と「捨てる力」

小幡:そうですね。では、最後に、葉一さんがこれからの子どもたちに学んで欲しいこと、親が子どもできることについてどう考えますか?

葉一:選ぶ力ですね。情報がこれだけあふれている時代、欲しい情報じゃなくても入ってきます。その中からどれが正しいか判断する力が大事なのはみんなわかっているんですけど、でも、○×(マルバツ)だけじゃなくて△(サンカク)の情報もありますよね。

その中から自分にとっての○を選択しなきゃいけない。でも子どもたちにそれは難しいから、人生の経験値がある大人のサポートが必要です。

間違えちゃいけないのは、×を選ばせたくないから○を選びなさい、と教えてしまうこと。それでは子どもは育ちません。「私はこの選択は○だと思う、あなたはどう思う?」と一緒に考えながら、子どもたちの選ぶ力を養っていってほしいと思います。

さらに、選ぶ力は捨てる力だと思います。捨てるからこそ身軽になって、次のフットワークの軽さにつながっていくので、自分らしく生きていくためには、それも必要な力だと思います。

葉一さん、小幡和輝さん プロフィール

葉一(はいち)さん

葉一さん

東京学芸大学を卒業後、営業職、塾講師を経て独立。2012年にYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。小学校3年生から高校3年生対象の授業動画や、学生の悩み相談にこたえる動画を投稿している。チャンネル登録者127万人、再生回数は3億回を超える。著書に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)などがある。

小幡和輝(おばたかずき)さん

小幡和輝さん

1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームに費やし、トータルのプレイ時間は30000時間を超える。その後、高校3年で起業。SNSのプロモーション企画やイベント事業などを行う。ダボス会議を運営する世界経済フォーラムより、世界の若手リーダー『GlobalShapers』に選出。2019年10月より、日本初、ゲームのオンライン家庭教師『ゲムトレ』を立ち上げる。

取材協力・キャプチャー写真/オンライントークイベント「これからの時代を生きる子どもたちに学んでほしいこと」より
小幡和輝オフィシャルYouTubeサイトにてアーカイブが公開されておりますので、ぜひご覧ください。

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著者

はやなお

はやなお

中1、小6、小3の子を持つ母。 漢字検定2級、整理収納アドバイザー2級、中国語コミュニケーション能力検定(TECC)578点と、取得した資格はどれもあと一歩。育児についても「頑張りすぎない、極めない、ほどほどに」とゆるく進めるのがモットー。得意料理は鶏唐揚げとポトフ。

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