そもそも「誤嚥性肺炎」とは?
厚生労働省人口動態統計のデータによると、「肺炎」「誤嚥性肺炎」で亡くなる人の数を合計すると、「がん」「心疾患」などの死亡原因に次いで3番目に多いことが分かります。
「誤嚥性肺炎ってお年寄りがなるものでしょ?」と思う人も多いかもしれません。
しかしどんなに健康体であっても、40歳を超えると喉の筋力の衰えが顕著になってきます。年齢を重ねるごとに噛む力が弱まり、舌の周りの筋肉は衰えはじめます。さらに、気管から異物を吐き出す力も弱くなり、ちょっとしたことでむせやすくなってくるのです。
そもそも誤嚥性肺炎とは、ものを飲み込む「嚥下機能」が低下することで、本来口から食道に運ばれるべき食べ物が気管に入り込んでしまい、食べ物や唾液と一緒に入り込んだ細菌が気道内で繁殖し、引き起こされる肺炎です。
発症すると、発熱・痰が絡みやすくなる・激しい咳が出る……などの症状が見られるようになり、回復力や体力のない高齢者は、それが原因となり最悪の場合亡くなってしまうこともあります。
「誤嚥性肺炎」を防ぐためにできること
防止策といわれても、すぐ方法が思い浮かばない人も多いでしょう。
ここで紹介する3つのポイントは、今日からすぐに実践できる予防方法です。ぜひ、日常生活に取り入れてみてください!
1)喉・口周りの筋力アップ
喉が本来持っているパフォーマンス以上に筋力を強化することは、トレーニングをしても難しいと言われています。
これはあくまで「ベストな状態よりさらに強化する」ことが難しいだけであって、今の状態から衰えていくのを防止することは十分可能です。
さらに嬉しいことに、喉・口周りを鍛えることで小顔効果も期待できます。
2)口腔ケアをしっかりおこなう
もう一つできることは、万が一誤嚥してしまった場合にも細菌を気管に入れないよう、口の中を常に清潔にしておくこと。といっても難しいことはなく、毎日の「歯磨き」や「舌ケア」をしておくことで予防になります。
気をつけたいのは、入れ歯や差し歯を使っている人。とくに義歯のお手入れは、日頃からしっかり行っておくことをオススメします。
3)食べ物はゆっくり噛むことを心がける
意識して食べ物を噛むようにするだけでも、喉のエクササイズになります。理想は、一口で30回を目安に噛むように心がけること。口に入れる量も、意識して少しづつにしてみましょう。
また、猫背や逆に胸をはりすぎている姿勢で食事をするのも誤嚥を起こしやすくなるため、年齢を増すごとに姿勢も気をつける必要があります。
嚥下機能を鍛える喉エクササイズ
一日たったの30秒×2種類からでOK!
忙しい人も、朝のお手入れや夜寝る前、トイレの中でもできちゃいます!!
- 「う・い」体操
- 舌出しトレーニング
動きの詳細
1:「う」「い」を交互に繰り返すだけ。時間は約30秒を目安におこなう。
唇だけでなく、頬(表情筋)や喉の筋肉も動いていることを意識しながらやると◎
2:手をクロスして鎖骨を軽く押さえる。
顎を天井に突き出し、喉にストレッチを感じる。さらに、舌を天井方向に突き出して、頬や喉の筋肉が刺激されていることを感じる。
こちらも30秒を目安におこなう。
ポイント
顎関節症など、顎に痛みがある方は無理に行わないようにしましょう。
舌出しトレーニングも、首や頚椎に異常がある場合は、無理に上を向かなくてOK。顔は正面を向いたまま、舌出しトレーニングを行ってみて下さい。
まとめ
喉の衰えは誰にでも起こること。足や腕と違って、喉は意識して鍛えないとトレーニングすることが難しい部位でもあります。
今回ご紹介した予防方法や簡単エクササイズは誰でもできるものばかり。ぜひ今日から誤嚥性肺炎予防を初めてみてください!
参考:https://doctorsfile.jp/medication/114/
医師監修/大和彩乃 先生
日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本内科学会認定内科医。医療法人社団清栄会石井クリニックにて消化器内科医として勤務。