教えてくれたのは……山岸昌一(やまぎししょういち)先生
金沢大学医学部卒業。医学博士。金沢大学医学部講師、ニューヨーク留学、久留米大学教授などを経て、現在、昭和大学医学部教授。AGEの研究で米国心臓協会最優秀賞、日本糖尿病学会賞、日本抗加齢医学会賞を受賞。『老けない人は何が違うのか』など著書多数。
食べ過ぎや食べ方が老化を進める!?
おいしい食べ物やハロウィンにちなんだかわいいスイーツなどがお店に並ぶ秋は、食欲が刺激されますね。でも山岸先生によると、食べ過ぎが老化を進める原因となるようです。
「“食欲の秋”と言われるように、夏にくらべて濃い味付けのものやお肉、揚げ物などが、よりおいしく感じる季節になります。ただ、このような食べ物の食べ方や食べ過ぎが老化を進めてしまう可能性があるのです」
体の糖化が老化を進める原因に
糖化とは体を構成するタンパク質と糖が結びつく現象です。この糖化が進み、たんぱく質の機能が落ちた最終産物のことをAGE(エージーイー)と呼びます。
山岸先生によると、AGEが体内にたまる仕組みは2通りあるとのこと。
ひとつは体内でつくられるもの。主食や甘いものなどを摂ったときに血糖値が上昇し、糖化を促進させます。この状態が長く続くことでAGEはどんどん作られ、たまっていきます。
もうひとつは食べ物から体内に入るもの。食事に含まれているAGEを過剰に摂ることで体内にたまっていきます。
「例えば、スタミナ食として知られているうなぎ。食材を焼いたり、揚げたり、高温で調理する過程でAGEが多く発生します。せっかくスタミナをと摂った食事が、逆に、老化物質(AGE)をカラダのなかに摂りこむことになり、老化をすすめてしまいます」
良かれと思って食べている食事が、実は老化を進めているのですね……!
調理法によってAGEは異なる
AGEが多く発生する食事が食べる前にわかるなら、ぜひ知っておきたいですよね。山岸先生によると、食事に含まれるAGE値はわかるとのこと。
「食品中に含まれているAGE値を数値化しexAGE(イーエックスエージーイー)と名付けています。『日本食品標準成分表2010』を参考に食材の成分と加工、調理方法を考慮して算出したものです。それによると普段皆さんが食べている食事に含まれているAGEの量が一目瞭然です」
出典:山岸昌一(2021)『老けない人は何が違うのか』合同フォレスト、山岸昌一(2019)『AGEデータブック』万来舎
「高温で長時間調理をするほどAGEが増加するため、なるべく低温で、かつ短い調理時間で仕上げた料理を選んでください。
調理する場合は、蒸したり煮たりする調理法がおすすめです。しかし、唐揚げや焼き肉は私も美味しく食べていますし、食べてはいけないということではありません。
AGEの1日の摂取値の目安は10,000〜15,000exAGEとされています。1〜2週間くらいの期間でとらえ、AGEを摂りすぎないように調整して好きな食事を楽しんでください。
例えば、唐揚げや焼き肉を食べた次の日はAGEの低い料理を選べば、平均してAGEの蓄積を抑えることができ、老化のスピードを抑える可能性があります」
肉料理のAGEを減らすには「レモン汁」
AGEが高いお肉料理は、ちょっとした工夫でおいしくAGEの少ない食事に変えることができるそうです。
「最近になり、体内におけるAGEの生成を抑えるものや、腸からの吸収を抑える作用をもつ成分が あることもわかってきました。その中でも活用しやすくおすすめなのが『レモン汁』です。
お肉の重量の1/4のレモン汁にお肉を1時間ほど浸して下処理をしておくことで、ステーキにした時のAGE量を約40〜60%減らすことができます。
それは、レモンに含まれるクエン酸がたんぱく質と糖が結びつくのを抑え、AGEの生成を抑えてくれる働きがあるからです。
レモンを買ってきて絞ってももちろんいいですし、市販のレモン汁を活用してもよいでしょう。漬け込んだからといって酸っぱくなることはありません。脂っぽいのお肉料理が、さっぱりとよりおいしくいただけると思いますよ」
老化のスピードを抑える効果があるというレモン。お肉を”レモンに浸しておくだけ”など、手軽に取り入れられる方法なら今日からでも実践できそうです。
老化は今日、明日に目に見えるものではないため、数年後の自分を見てがっかりしないように、今から対策をしておきたいものですね。
ぜひ毎日の料理に取り入れてみてはいかがでしょうか。