教えてくれたのは
サーモス株式会社 社長室ブランド戦略課 プロモーショングループ 小長井早紀さん
ステンレス製魔法びんのパイオニア。水筒、スープジャー、真空保温調理器『シャトルシェフ』などの幅広い製品は、世界120ヵ国以上で愛されている。人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案して、「なるほど!」と実感できるオンリーワン商品づくりをめざす。
一般の水筒は炭酸ドリンクNG。その理由とは?
――炭酸飲料やビールが入れられる『保冷炭酸飲料ボトル』が新発売されました。開発にあたり、こだわったポイントはどこですか?
当社のケータイマグは、お手入れのしやすさを非常に評価いただいています。とくにフタを回して開ける「スクリュータイプ」は、パーツは3つだけとシンプル。「すみずみまで洗いたい」「清潔に使いたい」というお客様の声に応えた、扱いやすい構造になっています。今回新発売の『保冷炭酸飲料ボトル』も、こうしたすみずみまで洗えるシンプルな構造をめざしました。
――ふつうの水筒に炭酸飲料を入れると、どうなるのでしょうか?
ステンレス製魔法びんは密閉性が高いので、炭酸飲料を入れるとガスを溜め込んでしまい、ボトルの内圧が上がってしまいます。ワンタッチタイプのボトルだとフタが勢いよく開いてしまう、スクリュータイプのボトルではフタが回らずに開かない、などの現象が起こります。
――『保冷炭酸飲料ボトル』では、そういった現象が起こらないんですね。
はい。ガスによって上昇した圧を抜く構造を加えたところが、一般的な水筒とのいちばん大きな違いです。ボトルとしての密閉性を保ちつつ、炭酸飲料を入れても安全に取り扱える仕様になっています。
じつは過去にも炭酸対応ボトルを発売した実績が!
――2000年にも炭酸飲料ボトルを発売していたそうですね。
そうなんです。当社では1998年に初めて、水筒に口をつけて飲む「直飲みタイプ」のスポーツボトルを発売しました。現在は部活などでお子様が使用する水筒としても普及しているスポーツボトルですが、当時はコップに入れて飲むタイプが主流で、直接ボトルに口をつけて飲むタイプのものはありませんでした。そこでサーモスでは、「保冷専用のスポーツボトル」という新ジャンルを製品を生み出しました。もっとたくさんの方にスポーツボトルを使っていただきたい、新しい使用用途はないかと模索するなかで、ラインナップの1つとして開発されました。
それまで炭酸飲料に対応した水筒を開発した前例が当社にはなく、当時もガスによって高まった圧力をどのように逃すのか、良いアイデアが見つかるまで非常に苦労したと聞いています。このときの開発ポイントは2つあります。1つ目は、中栓のネジを他のものより長くして、本体との一体感を強め、飛びにくいようにしたこと。2つ目は、開けたときに溜まった圧力が抜けるように、溝を作ったことです。ここから圧が抜けることで、安全に開栓できるようにしたのです。
――こちらの製品は、その後どうなったのですか?
4年ほどで販売終了になりました。当時はまだ炭酸飲料へのニーズが今ほど高まっておらず、「マイボトル」という考え方も浸透していませんでした。タイミングとして、少し早かったのかもしれません。
スープジャーで培ったノウハウを応用して新商品が誕生!
――今回発売された『保冷炭酸飲料ボトル』は、そのとき以来約20年ぶり、満を持しての登場となったのですね。
家庭用の炭酸水メーカーが販売されるなど、無糖炭酸飲料の市場は年々拡大しています。ペットボトルを利用する方も多いですが、暑い時期だとぬるくなりやすく、「炭酸は冷たいまま飲みたい」「炭酸飲料が入れられる水筒がほしい」という声が寄せられていました。炭酸飲料を長時間持ち運んでも冷たいまま楽しめる、そんなニーズに応えて開発が始まりました。
――今回の開発には、約3年間の年月をかけたそうですね。
はい。今回発売した保冷炭酸飲料ボトルでは、「スープジャー」のフタの構造を応用しています。
スープジャーの開発時も、フタが開きにくくなることが課題でした。これを解消するために、「クリックオープン構造」を開発。フタを少しまわして圧を逃し、さらに回すことで、安全にスムーズに開栓できます。保冷炭酸飲料ボトルを開発するにあたり、このノウハウが活かせるのではないかというアイデアが浮かび、サイズや素材の選定が始まりました。とはいえ、すぐに完成とはいかず、作った試作品のなかにはフタがきつくなり開きにくくなってしまったものもありました。「圧力を逃すこと」と「中身を漏らさない密閉性を保つこと」のバランスには苦労しました。
――『保冷炭酸飲料ボトル』のフタは、どう開けるのですか?
フタを少し回していただき、まずシュッと圧力を逃がします。そのあと、さらにフタを回して開けていただきます。2段階構造ではありますが、同じ方向に回すだけで圧力を逃すことができ、安全に、簡単に、フタが開けやすい設計です。好みの炭酸飲料を入れていただき、6時間ほど10℃以下(※)のひんやりした状態をお楽しみいただけます。
※製品テストの結果による数値。使用条件によって変化します
――シュワシュワした炭酸ドリンクを冷たいまま手軽に持ち運べる! 魅力的ですね。
炭酸飲料はペットボトルごと凍らせられないので、ぜひこちらのボトルを活用いただいて、長時間ひんやり楽しんでいただけたらと思います。ソフトドリンクだけでなく、ビールやレモンサワーなども入れられます。お気に入りの飲み物を入れて、キャンプやスポーツ観戦などに携帯していただけたらうれしいです。ピラティスやヨガ、スポーツジムでのトレーニング後、ひんやりした炭酸水でリフレッシュするのもおすすめです。
――お手入れするときの注意点はありますか?
そのほかのボトルと同じですが、使い終わったらしっかり洗って、しっかり乾燥させると、長くお使いいただけます。また、ステンレス製魔法びんの本体は、多くのものがじつは食洗機の使用は基本的にNG。高温による変形、保温不良につながる可能性があるためです。パッキンは食洗機対応ですが、それ以外のパーツは手洗いしていただけたらと思います。
パッキンは消耗品ですので、1年を目安に交換してください。サーモスでは、パッキン1つからでも部品販売を行っておりますので、ぜひご利用ください。
保冷剤などの準備をしなくても、炭酸ドリンクやビールがシュワシュワひんやり長時間楽しめるのはうれしいですね! マイボトルを上手に活用して、日々のお出かけやレジャーを楽しみましょう。