働く女性が増える日本。「専業主婦」の息苦しさの背景にある"風潮”や”世間”との付き合い方を考えてみた

カルチャー

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2022.04.07

臨床心理士・公認心理師のyukoです。年々「働く女性」が応援される世の中となり、女性が働き続けるための社会制度も増えてきていますよね。一方、企業で働いていない方、収入を得ていない方に対する風当たりが強くなってきているとも感じます。なぜ、「専業主婦」という立場が息苦しいものになっているのでしょうか。ヒントは、「風潮」や「世間」にあると考えます。自身の選択にどう折り合いをつけていくか、考えていきます。

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現代社会での息苦しさ

多数派と少数派という構図

総務省の調査によると、1990年代半ば、共働き世帯(兼業主婦世帯)の割合は専業主婦世帯を追い抜きました。そして、2020年に入ると共働き世帯の数は専業主婦世帯の2倍以上に。
いまや働く女性は過半数を超え、「多数派」になったのです。

また、働く女性がかっこいい存在として、メディアに取り上げられる機会も増えましたよね。ドラマでは仕事と恋愛の両立に悩む女性が、結婚を選ばず、自分の仕事を優先する結末も増えたように思います。

働く女性出典:stock.adobe.com

社会制度は多数派の意見をもとに整えられ、メディアは多数派の共感を得られる情報を発信します。
男性の育児休業制度が浸透してきたのも、働く女性にクローズした番組ができたのも、多数派に寄り添った社会の在り方です。

そのようにして、自立した女性・頼らない女性・家計を支える女性が、称えられる「風潮」になってきました。
会社で働きたい方がいれば、家で過ごす時間を大切に思う方、家族の近くで支えていきたい方がいるのは今も30年前も変わりません。
ただ、「兼業主婦」が多数派、「専業主婦」が少数派という構図に変化したことにより、「専業主婦」の肩身が狭くなったのではないでしょうか。

「普通」という言葉のしがらみ

多数派に属すると、人はそれが「普通」だと思い「普通」であることに安心します。
そして、自分の考えは「みんなと一緒」であると思うと、少数派に強く出れるようになります。

多数決 丸に集まる出典:www.photo-ac.com

「普通」という主語を武器にすると、あたかも自分が正しいかのように振舞えてしまうんですね。
「少数派の人を認められない」考えがある人は、「専業主婦」という道を選んだ人に、否定的な言葉を投げかけるのかもしれません。

専業主婦を「選べなかった」息苦しさ

たしかに兼業主婦の割合は増えていますが、どのような思いで兼業しているのかは、人それぞれだと思います。
自分が専業主婦を"選べなかった"と感じると、隣の芝生が青く見えてくるのかもしれません。

「働かなければ家計を支えられない」
「子どもと十分な時間を取れてないのはわかってる」
「仕事と家事の両立は毎日骨が折れる」

そのように感じていると、「働かなくても大丈夫」「子どもと十分な時間が取れる」「仕事のストレスがない」と感じる相手に対して、羨ましくなります。
なぜ自分と似た水準で生活ができているのか、なぜ自分は仕事と育児の両立で苦しんでいるのに楽しそうにしているのか、なぜ子どもはうちの子より成績がよいのか。

不満 女性出典:stock.adobe.com

現状に不満があったり、選択を後悔していると、自分が「選べなかった」道を歩く人に負の感情を向けやすくなります。

専業主婦を「選んだ」息苦しさ

社会がどう見えるか、言われた言葉をどのように受け取るか、やはりそれも人それぞれです。
なんでもない情報も、受け止め方によっては、自分を息苦しくするものとなります。

「仕事をしたかった」という自分の気持ちに対する悔み
残業して疲れている夫への申し訳なさ
「楽でいいよね」と言ったママ友に対する怒り
思うように成長しない子どもへの不安

頭を抱える女性出典:www.photo-ac.com

背景にある感情によって、受信するメッセージの解釈は異なってきます。

コミュニティを変えるのもひとつのスキル

"負い目"や"責められている感覚"があると、人に言い出しにくくなりませんか?
似た境遇の人が周囲にいないと、「話してもわかってもらえない」と感じやすくなりますよね。

今いる環境を見直し、自分にとって心地よい場所を見つけていくのもひとつだと思います。
「働いていることが普通」とされるコミュニティから抜け出し、しんどく感じる意見から距離を置くのも大切な対人スキルです

苦手なママ友と距離を置く、遊びに行く公園を変える、地域の相談センターへ足を運ぶ。
共感を得られる場所を見つけていくのもいいですよね。

親子 笑う出典:www.photo-ac.com

選ばなかったこと、選んできたこと

「選択したのは自分なんだから」と、自身の人生に責任を持つことは大切です。
一方、「そのときにできる最善の選択をしてきた」と自分を労う考え方も大切だと思います。

仕事であれば、業績や給与明細で頑張りを数値化できます。
一方、家事も子育ても介護も、正当はなく、明確なフィードバックもありません。
「ありがとう」がなければ、自信もなくなってきますよね。
肯定的なフィードバックがないと、不安や不満が募るのも当然です。

私個人の考えでは、「家計」を支える役割・「家庭」を支える役割、という分業もひとつの選択だと思います。

笑顔の親子出典:www.photo-ac.com

兼業か、専業か、どちらが子どもにとってよいのかは、やはりケースによるとしかいえません。
多数派を正義と思うのか、個を尊重するのも優しさだと思うのか、それも各々の価値観だと思います。

どんな価値観を、子どもに伝えていきたいですか?

自分の気持ちを大切にし、最善と思う道を選んでいけば、振り返る過去は、温かいものになるはずです。
支えになる考えを味方につけていけるといいですよね。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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