マスクによってカバーされているものとは
コロナ禍においてマスク着用が義務付けられる機会は多く、外出時に必須のアイテムとなっているのではないでしょうか。
実は、2000年代後半から体調の善し悪しに関わらず着用する「だてマスク」は流行傾向にあったのです。
特に10代から30代女性は、”顔を隠すメリット”を感じてマスクを使用することも。
2年前はあんなに息苦しく感じていたマスク。
今となっては”マスクは顔のパンツ”とまで表現する方もいるようです。
マスクを脱がされる、剝がされる。そう感じる背景にはどんな不安があるのでしょうか?
脱マスクによって生じる不安とは
見通しが確定しない感染状況への不安
感染者数が0人になったわけでもなければ、ワクチン接種により発症を100%防げると明らかになったわけでもない。
今はまだ実証実験の段階であり、見通しに不安を感じるのも当然です。
「わからない状況」への不安が、脱マスクへの不安に繋がっているかもしれません。
環境の変化に対する不安
この2年、感染状況に左右され、しばしば変化を強いられてきました。
負担なく受け止めているように見えても、心には負荷がかかっている子も多いようです。
今までの環境が変わるとき、先がわからないとき、人は不安を感じやすいもの。
周囲が当たり前のように変化を受け入れ、取り残されているような感覚を抱く子も。
コンプレックスを見せる不安
マスクは口元のみでなく、鼻筋や顎の骨格など、顔の大半を隠します。
隠す日常に慣れると、明かす行為への恥ずかしさや抵抗が生まれるようです。
表情を読み取られる不安
自分の表情を隠せるのは、ときにメリットになりませんか?
不機嫌なとき、何と言ってよいかわからないとき、本音を心に留めておきたいとき。
小学校高学年あたりから、「他者の目」がすごく気になるようになります。
特に思春期は、「他者からの評価」にとても敏感な時期。
マスクを外すことで「自分の反応は場に合ってる?」「表情は自然に作れている?」など、不安が生じることも。
多感な時期をマスクでカバーしてきた子にとって、脱マスクは容易ではありません。
マスクを外したがらなかったら、どうすればいい?
子どもの「不安の種」を理解する
親から「なんでみんなに合わせないの?」と聞かれると、”同じでない自分”を責められていると感じる子もいます。
周囲の変化を受け入れるまでに時間が必要な子、新しい状況に対する抵抗が強い子、”みんなと一緒”を息苦しく感じる子。
不安や不満には、その子なりの理由が隠れています。
まずは口に出せる環境を作り、周囲が「なるほど」と理解してあげると、気持ちが和らぎます。
無理に合わせなくてもよい
”普通じゃない”、”人と違う”ことに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、周囲と足並みをそろえる以上に大切なものもあります。
”周囲と一緒じゃない”のは、おかしくないですし、わがままなわけでもありません。
「嫌だ!」は、「(今は)嫌だ!」かもしれません。
熱中症の危険性がある場合は別ですが、子どもの主張を見守る期間を設けるのもひとつだと思います。
「押し付けられている」感覚から「受け入れられる」経験へ
「今、~すべき理由」は、大人にとっては納得いくものでも、子どもにとっては押し付けられている感覚になるときもあります。
校則や家庭のルールに対する反抗心も、押し付けられている感覚から生じるケースは多いです。
社会からの要請に対する「承諾」も「抵抗」も、子どもが抱く大切な気持ちに変わりはありません。
一呼吸おいて見守る、そして成長を見届ける関わりも支えになると思います。
参考文献
「新型コロナの科学-パンデミック、そして共生の未来へ」黒木登志夫 中央公論新 2020
「だてマスク依存症~無縁社会の入口に立つ人々」菊本祐三 扶桑社 2011