マスクが当たり前になった今。マスクを外すことで感じる“子どもの不安”とは

家族・人間関係

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 マスクが当たり前になった今。マスクを外すことで感じる“子どもの不安”とは

2022.05.31

臨床心理士・公認心理師のyukoです。厚生労働省は現在、「距離が2m以上取れる、かつ会話をしない場合は脱マスク」を推奨しています。(2022年5月末時点)コロナとの付き合い方が見直される時期に入っているのではないでしょうか。ただ、脱マスクに抵抗がある方も多いようです。今、マスクはどのような役割となっているのでしょうか。変化する環境や対応における不安について考えていきます。

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もくじ

マスクによってカバーされているものとは
脱マスクによって生じる不安とは
見通しが確定しない感染状況への不安
環境の変化に対する不安
コンプレックスを見せる不安
表情を読み取られる不安
マスクを外したがらなかったら、どうすればいい?
子どもの「不安の種」を理解する
無理に合わせなくてもよい
「押し付けられている」感覚から「受け入れられる」経験へ

マスクによってカバーされているものとは

コロナ禍においてマスク着用が義務付けられる機会は多く、外出時に必須のアイテムとなっているのではないでしょうか。
実は、2000年代後半から体調の善し悪しに関わらず着用する「だてマスク」は流行傾向にあったのです。
特に10代から30代女性は、”顔を隠すメリット”を感じてマスクを使用することも。

マスクをつける女性出典:www.photo-ac.com

2年前はあんなに息苦しく感じていたマスク。
今となっては”マスクは顔のパンツ”とまで表現する方もいるようです。
マスクを脱がされる、剝がされる。そう感じる背景にはどんな不安があるのでしょうか?

脱マスクによって生じる不安とは

見通しが確定しない感染状況への不安

感染者数が0人になったわけでもなければ、ワクチン接種により発症を100%防げると明らかになったわけでもない。
今はまだ実証実験の段階であり、見通しに不安を感じるのも当然です。
「わからない状況」への不安が、脱マスクへの不安に繋がっているかもしれません。

環境の変化に対する不安

この2年、感染状況に左右され、しばしば変化を強いられてきました。
負担なく受け止めているように見えても、心には負荷がかかっている子も多いようです。
今までの環境が変わるとき、先がわからないとき、人は不安を感じやすいもの。

子ども 不安出典:www.photo-ac.com

周囲が当たり前のように変化を受け入れ、取り残されているような感覚を抱く子も。

コンプレックスを見せる不安

マスクは口元のみでなく、鼻筋や顎の骨格など、顔の大半を隠します。
隠す日常に慣れると、明かす行為への恥ずかしさや抵抗が生まれるようです。

表情を読み取られる不安

自分の表情を隠せるのは、ときにメリットになりませんか?
不機嫌なとき、何と言ってよいかわからないとき、本音を心に留めておきたいとき。
小学校高学年あたりから、「他者の目」がすごく気になるようになります。
特に思春期は、「他者からの評価」にとても敏感な時期。

マスクをする女の子出典:stock.adobe.com

マスクを外すことで「自分の反応は場に合ってる?」「表情は自然に作れている?」など、不安が生じることも。
多感な時期をマスクでカバーしてきた子にとって、脱マスクは容易ではありません。

マスクを外したがらなかったら、どうすればいい?

子どもの「不安の種」を理解する

親から「なんでみんなに合わせないの?」と聞かれると、”同じでない自分”を責められていると感じる子もいます。
周囲の変化を受け入れるまでに時間が必要な子、新しい状況に対する抵抗が強い子、”みんなと一緒”を息苦しく感じる子。
不安や不満には、その子なりの理由が隠れています。

悲しむ女の子出典:stock.adobe.com

まずは口に出せる環境を作り、周囲が「なるほど」と理解してあげると、気持ちが和らぎます。

無理に合わせなくてもよい

”普通じゃない”、”人と違う”ことに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、周囲と足並みをそろえる以上に大切なものもあります。

マスクを付けられる女の子出典:stock.adobe.com

”周囲と一緒じゃない”のは、おかしくないですし、わがままなわけでもありません。
「嫌だ!」は、「(今は)嫌だ!」かもしれません。
熱中症の危険性がある場合は別ですが、どもの主張を見守る期間を設けるのもひとつだと思います。

「押し付けられている」感覚から「受け入れられる」経験へ

「今、~すべき理由」は、大人にとっては納得いくものでも、子どもにとっては押し付けられている感覚になるときもあります。
校則や家庭のルールに対する反抗心も、押し付けられている感覚から生じるケースは多いです。
社会からの要請に対する「承諾」も「抵抗」も、子どもが抱く大切な気持ちに変わりはありません。

家族出典:stock.adobe.com

一呼吸おいて見守る、そして成長を見届ける関わりも支えになると思います。

参考文献
「新型コロナの科学-パンデミック、そして共生の未来へ」黒木登志夫 中央公論新 2020
「だてマスク依存症~無縁社会の入口に立つ人々」菊本祐三 扶桑社 2011

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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