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中学受験は本当に子どものため?“教育虐待”にならないために知っておくべき3つの線引き

家族・人間関係

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 その中学受験は誰のため?

2022.07.18

臨床心理士・公認心理師のyukoです。受験戦争は年々熱を増していき、特に都心部での高い競争率には目を見張るものがあります。お子さんの偏差値に一喜一憂したり、手を抜いているように見えると厳しく叱ってしまったり。迫りくる受験日を前にして感情が揺さぶられやすい親御さんも多いのでは。しかし、行き過ぎた指導や方針の押しつけは「教育虐待」にもなりえます。過剰な関わりを避け、子どもの学習を見守るために必要な3本の線について考えていきます。

目次

周りが見えなくなる前に気づいておきたい「線引き」について
祖父母との「境界線」
所属するコミュニティとの「境界線」
子どもとの「境界線」
当事者になるとわからなくなる「線引き」

周りが見えなくなる前に気づいておきたい「線引き」について

多くの親御さんはお子さんの受験合格を願い、様々な努力をされていると思います。

お子さんの後ろから温かく見守っている方もいれば、親子二人三脚で進む方。
気づけば親だけ先に進んでしまっているような方もいらっしゃるかもしれません。

中には成績が伸びず、勉強に意欲のないお子さんを見ると、つい声を荒げてしまったり厳しい規制を課す方も。

子どもを叱る親出典:stock.adobe.com

子どもの進路や合否で頭がいっぱいになってしまうのは、「境界線の曖昧さ」に理由が潜んでいるかもしれません。
「一線を引いて見守る」ための関わり方を考えていきます。

祖父母との「境界線」

親自身の親(以下、祖父母と表記)との葛藤は、子どもへの関わりに大きく影響します。

  • 祖父母に学歴を比較されてきた経験がある
  • 祖父母を見返したい気持ちがある
  • 自身の子育ては成功していると証明したい
  • 従兄弟・従姉妹たちより優秀であってほしい

親自身が思うような学業を修められず後悔が残っていると、わが子につい口調が厳しくなってしまいます。
“自分のような経験をしてほしくない”気持ちが上乗せされるからです。

また、きょうだいと比較され、嫌な思いをしてきた経験が呪いになっている場合もあります。
親自身の劣等感がぬぐいきれないと、子どもを引き合いに出し、「二世代目の比較」が始まってしまうんですね。

夫婦喧嘩出典:stock.adobe.com

子どもに人生を託して第二の人生を生きなおそうとするのではなく、親自身の過去を捉えなおす機会も必要かもしれません。
自身の親から受けた負の影響は、気づいたときに止める必要があります。
祖父母からの評価が気になるのであれば、距離を置く方法を検討してみるのもひとつです。

所属するコミュニティとの「境界線」

文部科学省が実施した学校基本調査を参考にすると、全国的に見ると私立中学に進学する子どもの割合は7%に留まっています。
一方、東京都に絞ると約25%もの子どもたちがが私立中学に進学しているようです。
都内においても地域で差はあり、文京区や港区は約40%に上ります。

中学受験が「当たり前」であり、名だたる私立中学に進学するのが「当然」であり「勝ち組」。
そんな考えが根付いているコミュニティも見受けられます。

「受験を制する者は人生を制する」などの価値観が強いコミュニティに属していると、「いい学校に行くこと=子どもの幸せ」脳になっていきます。

そうなっていくと、「学歴だけじゃない」「本人の思いを尊重して」などの言葉は耳に入ってこなくなります。
異なる意見に対して「古い」「浅い」と評価し、自分たちが「正しい」と判断している方は要注意ではないでしょうか。

親が子どもにレールを敷くばかりでなく、親自身が地域コミュニティのレールに乗せられているのかもしれません。

ママ友出典:stock.adobe.com

ママ友コミュニティやSNSから一歩離れ、親自身にどのような「物差し」が身についているのかに気づいておく必要があります。

子どもとの「境界線」

子どもの成績UPが親の安心材料。成績が伸びない、ましてや下がっていくのは見ていられない。そう感じる方は、親が感じている様々な不安を子どもに託しているのかもしれません。

物価の高騰や終わらない感染症ニュース。平和すら脅かされていると感じる不穏な訃報。
よい学校に進学させなければ子どもは幸せになれない、親自身も安心して生活できない。
一方で家庭に余裕があるわけではない。切り詰めて通わせている塾の成績は一向に伸びず、息を抜いている子どもを見ているとイライラする。

親自身が感じる不安と子どもへの不安がごちゃ混ぜになり、苛立ちの理由を「子どもの成績不良」に押しつけているのかもしれません。

「親は子のために、子は親のために不断の努力をする。」
この構図が続くと、子供が成長していく中で親は子どもが自立を妨げる存在に陥りやすくなります。
そして子どもは親の顔色が行動の判断基準となり、”自分はどうしたいのか”、”自分に何の価値があるのか”わからなくなってしまいます。

塾通いの子出典:www.photo-ac.com

親自身の人生を子どもに捧げ、家族の希望を託すのではなく、親子であっても一線を引く関係性は大切だと思います。
「あなたのために」の背景にある自身の不安に気づいておくのが重要です。

当事者になるとわからなくなる「線引き」

隣国の厳しい教育スタイルを見ていると、「あれはやりすぎだよね」と冷静に見れますよね。
しかし我が子となるとどうでしょう。
子どもの願いなのか、親の気持ちを押し付けているのか。熱心な教育なのか、行き過ぎた教育なのか。

親子出典:stock.adobe.com

当事者になると、境界を見失ってしまいます。
迷ったときは、自分とは異なる意見に耳を傾け、視野を広げる必要もあるのではないでしょうか。
お子さんの望む進路を見つけられるよう願っています。

参考資料
幻冬舎GOLDONLINE「東京23区私立中学進学率ランキング」 https://gentosha-go.com/articles/-/25781
生命保険文化センター「私立中学に通う割合はどのくらい?」https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/789.html

 


著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。