「宿題をやりなさい」ではいつまでもやるようにならない。子どもが自ら動く“コーチング的子育て”のコツ

家族・人間関係

2022.07.15

非認知能力育児のパイオニアとして知られるボーク重子さんの新刊『しなさいと言わない子育て』の発売を記念して、saitaではボーク重子さんに直接お話を聞きました。これまでも子育てで悩む多くの親を救ってきたボーク重子さんに、今回は“自分で考えて動ける子ども”になるための具体的な方法を伺いました。

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お話を伺ったのは……ボーク重子さん

ボーク重子さん

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC 代表、ICF会員ライフコーチ。『非認知能力の育て方(小学館)』『子育て後に何もない私にならない30のルール(文藝春秋)』など多数。新著『しなさいと言わない子育て(サンマーク出版)』も話題。

子育てとは、その子らしく育てること

ボーク重子さん

――前回のお話で、子どもに「しなさい」と言うのは、子どもの主体性を奪うことだと伺いました。ただ、「しなさい」と言わずに子育てをするって難しいなと感じてしまいます。

これまでの子育ては、“やらせる子育て、教える子育て”でした。それは、「子どもはできない」、「言わないとやらない」が前提になっているから。コミュニケーションラインも親から子へのトップダウン。親が決めたことをやらせて、子どもを良い子に育てるというものでした。でも、ここで言う「良い子」って、親の言うことを聞く子なんです。よく「うちの子、言うこと聞かないんです」って相談を受けるんだけど、私からすると「なんで子どもは親の言うことを聞かなきゃいけないのかな」と思うんです。

――親は、正しいと思って伝えていることという意識があるからでしょうか。

親には親の正解があるけど、それは絶対ではなく数ある選択肢のひとつ。私は「親の言った通りにやることが良い子? それって、その子らしさはあるのかな?」と疑問を感じます。子育てというのは親のコピーを育てるのではなく、その子をその子らしく育てること。「子どもが言うことを聞かない? いいんじゃない?」と思います。

“自分でできる子”を作る環境作り

“自分でできる子”を作る環境作り出典:stock.adobe.com

――これまでずっと「しなさい」と言う子育てをしてきて、突然それを言わなくなったとき、子どもは果たして自ら動いてくれるものなのでしょうか。

子どもが“できない”理由のひとつに、やり方を知らないというのがあります。知識がないというのは致命的ですが、逆を言えば、やり方を知って知識が身につけば大抵のことはできるということです。

――やり方と知識はどのように教えたらいいのでしょうか。

やり方さえ見せてあげてさえいれば、子どもは十分必要なことをやるだけの力を身につけていきます。例えば、4歳の子どもに「朝の仕度を一人でやってね!」なんて突然言ってもできるわけがないですよね。

まずは、一緒に朝の仕度をして、そのプロセスを見せてあげるんです。次に、やらせてみる。もちろん1回ではできなくて当たり前。大人はできるから、子どもに対して「何回言ってもできない」なんて言ってしまいがちですが、子どもは、何回も言ってあげなきゃダメなんです。

一緒にやってやり方を見せて、自分でできるようにしてあげることが大事。私たちだって、いきなりフランス料理のフルコースを作れと言われてもハードルが高いでしょ? でもやり方を知って、何度も挑戦したらできるようになるんです。

――すごくわかりやすい例えです。子どもにやり方を見せてできるようにしてあげることで、「しなさい」は必要なくなるのでしょうか。

「しなさい」と言われて育った子どもは、「しなさい」と言われないとできない子になってしまいます。つまり「しなさい」と言えば言うほど、指示がないとできない子を育てていることになります。まずは“自分でできる子”を作る環境作りを大切にしてください。ゴールを決めて、そこに行くまでに何をしなくてはいけないのかを自分で決められるように、実行機能を育てなくてはいけません。

子どもに決定権を与えることがカギ

ボーク重子さん

――子育てにおいて、“実行機能を育てる”ということを考えている人は少ないかもしれませんね。

これまでは、“ティーチング”の子育てが主流でしたが、これからの子育てで大事なのは“コーチング”の部分。「こうやって」とやらせるのでは、それしか正解がないので、子どもが自分で考える力を養えません。「一緒にやろうか!」、「こういうやり方があるよね」と見せると、子どもは「もっと良いやり方があるんじゃないかな?」と考えるようになるんです。

大事なのは、決定権をその子に与えるということ。人は自分で選んだからこそ、進んでやろうと思えるんです。

――自分で選んだ、自分で考えたということが大事なんですね。

宿題を「やりなさい」と言った瞬間に、その決定権は親にあります。でも「何時くらいになったらやるの?」と聞いて、「テレビを見終わったらやる」と子どもが言えば、決定権は子どもになります。

親に決定権がある中で育った子は、「自分がやらないのは、親がもっとやれと言わなかったから」というマインドになります。だからこそ、自分で決めるということを大切にしてほしいんです。

これからの子育ては、コーチング的子育て。コーチングというのは、決定権がその人にあるんですよね。

もし子どもがいつまでも宿題をやらないときは

宿題出典:stock.adobe.com

――コーチング的子育てを、もう少し具体的に教えてください。

「何時になったら宿題をやるの?」と聞いて、「このテレビが終わったらやるよ」と子どもが言ったら、「そうなんだ! 終わったらやるんだね。じゃあ、任せたよ」と言うんです。任せたのにやらなかった場合、困るのは自分ですよね。でもそんな経験も「やらないとどうなるか」を知るためには大切なのです。

もし子どもが宿題をやらなかったら、おそらく多くのママたちが手伝うと思います。そうすると、子どもたちはいつまでも、宿題をやらなかったらどうなるかという論理的思考が身につかないんです。

――「任せたよ!」と言ったら、あとは見守ればいいのでしょうか。

何も言わないのは、放任、放置になってしまいます。見守るというのは、最低限の声がけはするということ。「任せたよ!」とか、「何時になったらやろうか?」とか。でも、それでもやらないのなら、やらなかったらどうなるのかを経験することも大事だと思います。子どもはまだ経験が少ないので、宿題をしなかったらどうなるかを知る経験も必要です。

子育てって本当に難しいなと思います。子どものためにと思っていることでも、つい力が入りすぎてしまうことで、親も子も追い込まれてしまうことがたくさんありますよね。重子さんのお話は、その入りすぎてしまった力をふっと抜いてくれる魔法のような効果があるように感じます。次回は親の関心も高い、子どもの習い事についてのお話を伺っていきます。
 

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