“わが子を他の子と比較すること自体は問題ではない”子どもの自己肯定感を下げないための「親のマインド」

家族・人間関係

 “わが子を他の子と比較すること自体は問題ではない”子どもの自己肯定感を下げないための「親のマインド」

2022.07.20

育児をしていると、わが子を他の子どもと比べてしまうのはよくあることではないでしょうか。いけないとはわかっていても、どうしても比較してしまうことも多いと思いますが、「大事なのは比較をやめることではなくて、比較の犠牲にならないこと」というのは、非認知能力育児のパイオニアとして知られるボーク重子さんです。詳しく教えていただきました。

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お話を伺ったのは……ボーク重子さん

ボーク重子さん

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC 代表、ICF会員ライフコーチ。『非認知能力の育て方(小学館)』『子育て後に何もない私にならない30のルール(文藝春秋)』など多数。新著『しなさいと言わない子育て(サンマーク出版)』も話題。

他の子と比べるのは仕方ない。大事なのは目の前のわが子を認めること

ボーク重子さん

――子育てをしていると、どうしても他人と自分の子どもを比べてしまうことがあると思います。比べないようにするにはどうしたら良いですか?

比較をするというのは人間の本能のようなものだから、比較すること自体をやめるのは難しいと思うんです。私だって比較することがあります。大事なのは、比較をやめることではなくて、比較の犠牲にならないこと。比較によって、自分の感情を左右されないことです。

――重子さんでも、他人と比較することがあるんですね。比較の犠牲にならないというのは具体的にはどういうことですか?

誰かと比較して落ち込んで終わるのではなく、自分はやれることを120%の力でやった! と思えることが大切です。プロセスにフォーカスする。結果は自分でコントロールできないことも多いからこそ、目に見える結果の部分に心を左右されないことです。人は結果だけを見て評価してきますが、そんなことにも心を惑わされないことが大事。子育てにおいて比較してしまうときも同様のことが言えるかと思います。

子育てにおいて大事なことは、目の前にいるわが子を認めて、その子の価値を最大限にエンジョイすること。わが子の存在って最高でしょ? 存在しているだけで素晴らしいじゃない。例え、他の子がどんなにできたとしてもそんなの関係ない。わが子を見つめて、その子らしく育てる。その子としての能力を最大限に発揮して、幸せに生きられるように子育てをすることが大事なんです。

――親が比較をしなくても、世の中は競争社会であったりもします。その中で、どのように子育てに向き合ったらいいですか?

比べないとは言っても、受験のように結果が公になるものはどうしても比べてしまいますよね。でも、その子をありのまま認めてあげられるようになると、自然と子どもの良いところが見えてくるようになるので大丈夫。比較することによって気持ちを左右されなくなるし、例え左右されたとしても、長く引きずらなければ良いんです。比較をすること自体は仕方のないことだから。

――親が、その子をありのまま認めていることは、子どももわかるのでしょうか?

子どもってものすごく敏感です。親に愛されないと生きていけないから、親を必死で観察しているんです。だから、親が感じていることを子どもは絶対に感じとっています。親が他の子をすごいと思っているのを感じたら、自分は親に認めてもらえてないと感じる。これは、子どもの自己肯定感を下げることにつながりますよね。ついやってしまいがちなことですが、わが子と他の子を比べて自己肯定感を下げるようなことをしないためにまず大事なのは、親自身の自己肯定感なんです。

親が自分を肯定してこそ、子どもを肯定できる

ボーク重子さん

――親の自己肯定感が低い場合、子育てにどのような影響がありますか?

子育てって、咄嗟の連続ですよね。常にポジティブな声がけをしようと、ポジティブな言葉をどんなにたくさん暗記していても、いざというとき咄嗟に出てこないという経験をしたことはないですか? 

これね、普段自分に対してやっていることが出るんです。「私は、どうせダメだ」とか「あの人に比べて私なんて……」と、自己肯定が低いマインドがクセになっている人は、子どもに対して咄嗟に出る言葉がネガティブなものになってしまう。だからこそ、自分に対しての見方を変えていくことが大事です。自分のダメなところばかりを見ている人は、子どもに対してもダメなところばかり見るようになります。

――親が自分を肯定してこそ、子どもを肯定できるということですね。

幸せを感じられていない人が、子どもに幸せを教えてあげられると思いますか? 自分を犠牲にするような生き方をするために生まれてきた人なんていません。私たちは、誰かを幸せにするためではなくて、幸せな人生を送るために生まれてきたの。

自分らしい幸せな人生を生きるために最も大切なのは「自分の存在を肯定する」ことです。今日も元気に目を覚ます自分がいる。そんな自分を大切にすることが、自分らしい幸せを生きる第一歩。それができたら自然と自分への声かけはポジティブになります。そうすると他者に対する声かけも同様にポジティブになっていきます。

――重子さんのように幸せに生きたい、前向きに子育てをしたいと思う人たちがどんどん増えている気がします。

幸せって伝染するんです。特に近い範囲でどんどん伝染するの。親子関係は特にそうですよね。私は、誰かを幸せにできるんじゃなくて、自分を幸せにすることしかできないと思っています。まずは自分が幸せになって、それがどんどん伝染していくことが素晴らしいことだと思っているんです。

親が知らない子どもの本音

子ども出典:stock.adobe.com

――重子さんは、親からだけではなく子どもたちの意見を聞く機会もあるのですか?

私のところには、高校生、大学生、社会人になった子どもたちからもメールが届きます。そのメールには共通点があるんです。「本当は、この大学には行きたくないんだけど、親(特に母親)が、このレベルの大学に行ってもらいたいと言うので行きます」とか、「親を悲しませたくないから従いますが、そんな自分がイヤです」とか、「あなたのためを思ってと言われると、自分にとっては幸せな選択ではないけど、育ててもらったから言うことをきくしかない」というもの。

こういった子どもたちの声を聞いたら、ハッとするでしょ? 子どもたちは、自分を犠牲にしてでも親が思うような人生を生きるのが自分の役目だと思っているんですね。

――もし、自分の子どもがそういう思いを抱いていたらと思うと辛いですね。

親にとっての良い子、育てやすい子ってなんだろうなって思います。親はよく「子どもが言うことを聞かない」って言うけど、言うことを聞く子っていうのは、親にインプットされたことをそのままアウトプットする子ということになるから、その子が本当に考えていることってなんだろうなと心配になってしまいます。

――お子さんのスカイさんを育てている中で、「言うことをきかない」と感じたことはないんですか?

スカイは、私が思った通りになんて動かなかった(笑)。一度、夫に「スカイが全然言うことを聞かないの!」と言ったことがあったんだけど、「だって、そんな風に育ててないじゃないか」と言われて、あっ! そうだったわってなったの(笑)。親の思い通りではなく、その子の意見が言える環境で育ててあげるというのはすごく大事なことです。

ボーク重子さん

親には言えない本音を抱えている子どものお話は、ハッとしたどころか、ぎょっとした方も多いのではないでしょうか。そして、自分自身の自己肯定感が、子どもに影響するということも、いま一度じっくり向き合うべき課題のように感じました。次回もお楽しみに。
 

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