発達障害の「グレーゾーン」とは?
ここ数年で発達障害に関する情報が広がり、「もしかしたらうちの子も?」と考えて受診する方が増え、診断を受ける子は年々増えています。
中には「一部の診断項目には当てはまるが、診断基準を満たしきらない」グレーゾーンの子も多いんです。
身体の病気であれば、「腫瘍があるから」「この細胞数が基準値を下回っているから」など明確な病理の存在が確認され、断定的な診断がなされるものも多いです。
一方、精神や心、発達に関する診断には「現段階では~と思われるが、今後~の診断も視野にいれて考えていく必要もある」「~障害の傾向が一部認められるが、断定はしきれない」など、言い切れないケースがとても多いんです。
どうして、白黒はっきりつけてくれないの?
発達障害の診断基準には、一定数以上の症状が「幼少期から継続している」かつ「日常生活に著しい不適応がある」ことが含まれます。
保護者に子どもが小さい頃の記憶を思い出してもらい、聞き取るのですが、記憶が正確でなく曖昧な方も多いです。
また、「著しい不適応」かどうかは、個人の判断によって異なる場合があります。
例えば、
週に2~3回は忘れものをするA君。保護者向けのプリントを親に渡し忘れることはしょっちゅう。家ではゲームの時間を決めているものの、なかなか時間通りに終われない。弟との喧嘩では口で説明するよりも先に手をだしてしまうときもある。
何度注意しても変わらない様子を心配した母親は発達障害の傾向を疑う。一方、楽観的な父親は「男の子はこういうもの」と言う。担任の先生は「たしかに忘れっぽいところはあるけど、学校生活では概ね問題ない」と話す。
このように、「発達障害のように見えるか、個性の範疇と捉えるか」は個人の感じ方にもよるのです。
そして最終的には、「医師が総合的に診た結果」に委ねられます。
複数の検査をし、何度か聞き取りを行った上で診断を下す医師もいれば、数十分間の診察で診断する医師もいるのが現状。
目では確認できない「幼少期からの様子」や「困り具合」を扱う点も、白黒つけるのが難しい理由の一つなんですね。
”今の状態”を理解するのが大切
診断名がついたら、どこか安心したり、ショックだけど何とか受け入れようと努力したりしますよね。
ですが「グレーゾーン」と言われたら、「え、結局どっち?何をすればいいの?」と戸惑いますよね。
医療者に対して、「先延ばしにされた感じ」「曖昧に言われて結局どうすればいいかわからずじまい」と不満をもつ方もいます。
疑問が残るときは、遠慮せずに直接聞いてみるのがおすすめです。
- 「どんなところから、グレーゾーンという結果になったのでしょうか。」
- 「今できることとしては、どんな対応がありますか?」
- 「まだ心配が残るので詳しく話を聞いてほしいのですが、どこに行けば相談できますか?」
など、率直に質問してみるのがおすすめです。
医師に対して、権力をもっていそうで、目上のイメージをもつ方も多く、気を遣って質問しにくい方も多い気がします。
ですが最近は、患者との信頼関係を作り、情報を共有しながら治療に繋げていく風潮が浸透してきています。
診断に対するクレームや不満ではなく、「詳しく教えてもらう姿勢」で尋ねるのがよいかと思います。
長い目で成長を追っていく
子どもの近くで過ごしていると、毎日同じ内容で喧嘩していたり怒ったりしてる気がして、なかなか変化に気づけないかもしれません。
ですが、どんな子であっても1年間全く変化がない子はいません。
去年の悩みは思い出せなかったり、悩みの質がガラッと変化しているなんて方も多いのではないでしょうか。
今できる範囲の対処をしてみて、それでも気にかかっていたら、1年後に再度検査を受けてみるのもひとつです。
医療機関との相性がいまいちと感じた場合は、相談先を変えてみるのもありかもしれません。
今すぐどうにかしようとするよりも、「1年後に考えよう」と、保留にしておく術も身に着けておけると少し気持ちが楽になります。
「子どもの成長」と「親の心配や愛情」、歩幅を合わせていけるといいですよね。