教えてくれたのは……筒井淳也教授
立命館大学産業社会学部教授。社会学者で、家族社会学、計量社会学が専門。「時産」というポジティブな価値観を提唱し、暮らしにゆとりをうむことを目的に活動している「ゆとりうむプロジェクト」理事長。
共働き世帯は増えている一方、日本の女性は以前と変わらず家事・育児に長い時間を費やしているというデータがあります。こうした時代背景から、家事を効率化する“時短テクニック”のニーズは高まっているものの、今でも“時短=手抜き”というネガティブな印象が根深く残っていることが、活動の背景となっています。
パパ・ママは、体調不良でも家事は休めない?!
「風邪かも」と体調不良を感じても、自分のことだけではなく、普段通り家族のことをやらなくてはいけない。そんなパパ、ママの現状明らかになりました。
全薬工業が昨年7月に全国のパパ、ママ向けに取った「風邪など体調不良時の困りごと」に関する調査結果は、「ご自身が風邪かもと感じる体調不良の際に、自分の身体のケア以外で行うことはなんですか?」という質問に対して、パートナーや勤務先等への連絡、食材の買い出しを押さえ1位になったのは、「風邪であっても普段通り、掃除、洗濯、食事の準備や片づけ等の家事は行う」ということでした。
また、風邪の時にやっておいた方がよかったと後悔していることについて質問したところ、「食欲がなくても食べられそうなもののストック」「手軽に栄養が取れる栄養ドリンクやパウチゼリーのストック」など食べ物にまつわる準備を挙げている人が多い結果となりました。
食品のストックは、自分で食べるものと、食事の用意ができないときに家族が食べるものになります。安静にして早くよくなるためにも、食品のストックは重要な備えです。この備えを活用するためにも、日頃からストックしておくことはもちろん、その場所の共有、また他の毎日の家事についても家族間で共有しておくことが重要です。
筒井教授「共働きの家庭が増えるなか、小さなお子さんがいるご家庭からは、「常に忙しい」「時間が無い」「ゆっくり休めない」といった声をよく聞きます。子どもの風邪対策は徹底していても、自分やパートナーが体調不良になった時の備えは後回しという家庭も多いのではないでしょうか。体調が悪くても、家庭内で自分しかできない家事があったり、子どもの習い事の連絡先を自分しか把握していなかったりすると、ゆっくり休むこともままならないでしょう。暮らしのなかに「ゆとり」をうむためには、日頃からの備えや、家族のちょっとした協力が大切です。普段は忙しいママやパパもゆっくり休めるように、どんなふうに備えておけばよいか、ご家庭内で見直してみてください。」
安心して休むために「家族でシェアしておきたい7つの風邪備え」
1.体温計や氷枕、風邪薬など、風邪の時に必要なアイテムの収納場所 2.栄養補給ゼリーなど、体調が悪くても口にしやすいもののストック場所 3.保険証や診察券など、病院に行く際に必要なものの保管場所 4.子どもの保育園や、学校、習い事などの連絡先 5.ゴミ捨ての曜日と分別方法 6.洗濯機や食洗機などの家電の使い方 7.レトルト食品や日用品のストック場所筒井教授 「風邪の時に必要なアイテムの収納場所や、食べ物のストック場所は、早く回復するために必要なので、事前に確認するようにしましょう。その他、病院に行く際に必要なものや子ども関連の連絡先は、普段からシェアできていれば、具合が悪いのに自分で電話をかけないといけないという事態を避けられるので、とても助かるはずです。また、具合が悪くて寝ているのに、いちいち家電の使い方やシャンプーのストック場所などを聞かれたり、ゴミ捨ての説明をしなくてはならなかったりとうんざりしてしまった……。という話も聞きます。休みたいときにはゆっくり休めるよう、日頃からきちんと家事をシェアしておくのが重要です。」
自分が辛い時に家族に頼れる状態を作っておくことで、自分の回復に専念できるようになります。いきなり全部を共有するのは難しいという人は、毎日少しずつ、そのときどきでしっかりとシェアしていくことが必要です。まずは、共有したいリストのどれか一つを共有してみるのはいかがでしょうか!