教えてくれたのは……松本和隆(まつもとかずたか)先生
三重県生まれ。医療法人松徳会・松本クリニック院長。日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医。
2016年、三重県松阪市に医療法人松徳会松本クリニックを開院。地域では数少ない「糖尿病専門医」として毎日多くの患者の診療を行っている。著書出版、講演、テレビ出演など多数。
熱中症の主な症状とは?
熱中症が進行する中で、身体に表れる症状が風邪の症状と一部重なる部分もあり、早期に熱中症に気づけないこともあるそうなので、十分な注意が必要です。
まずは熱中症の主な症状についてチェックしましょう。
熱中症は暑い環境下や直射日光下での活動後に発症することが多く、以下のようなものが主な症状と言われています。
- 高体温:体温が急激に上昇し、38.5℃以上(時に40℃以上)になることが多い
- 脱力感・めまい:過度の疲労感や筋力の低下、立ちくらみやめまいを感じることがある
- 頭痛・吐き気:頭痛や吐き気、場合によっては嘔吐を伴うこともある
- 意識障害:重症化すると混乱、意識レベルの低下、意識喪失などの症状が出ることがある
風邪と自己判断するのは危険!
松本先生「その一方で、風邪の主な症状は鼻水、咳、喉の痛み、体のだるさなどですが、風邪と熱中症で共通する症状は以下のような症状があります。
- 頭痛
- 倦怠感
- 発熱
- 筋肉痛
熱中症は屋内にいても発症をすることもあることから、知識のない人であれば、風邪と見分けがつきにくいこともあります。
どちらの症状も自己診断に頼らず、必要に応じて医療機関を受診することが重要です」
ポイント1. 鼻や上気道の症状は風邪を疑う
松本先生「熱中症の初期症状は風邪と一部重なっていますが、鼻やのどの上気道に症状がある場合、つまり、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・せき・たんなどの症状が存在する際には風邪を積極的に疑います。
熱中症では、めまい、立ちくらみ、生あくび、筋肉痛が初期症状として現れることが多いといわれています。
さらに倦怠感や頭痛もある場合は、すでに重症化していることもありますため、周囲に助けを求めた方がいいでしょう」
ポイント2. 発熱の仕方
風邪も熱中症も発熱を伴うことが多いですが、その症状にも違いがあるようです。
松本先生「風邪のウイルスなどによる発熱は、ウイルスを撃退するための体の自然な反応であるため、通常42℃を超えることはありません。そして、ウイルスを攻撃し終わると、上昇していた体温を下げるために発汗が見られます。
風邪などによる発熱は、体が自ら意図して行っているものであるため、脳が設定した以上の体温にまで上昇することは通常ありません。
一方、熱中症の初期段階では、暑い環境下で汗が出ているため、体温の上昇が伴わないこともあります。そして大量の汗をかき、体内の水分が失われてしまうと、それ以上汗をかくことができず、体温が上がっていってしまいます。汗をかくことによる体温調節機能が失われているため、生命の危機的ラインとされる42℃を超える高熱につながることもあるのです。
熱中症による40℃前後の高熱が見られる場合には、大至急救急車を呼び、体を冷やす応急処置を行いましょう」
具合が悪いときは一人にならないで
松本先生「熱中症は急激に進行・悪化することがありますので、一人だけになるのは危険です。
水も飲めないほどぐったりしていたり、昏睡状態であれば、周囲の人はすぐに救急車を呼びましょう。救急医療機関への搬送が望ましいです」
暑い環境下で具合が悪くなり始めたときには、周囲に状況を伝え、一人にならないように心がけましょう。また、「風邪だろう」と安易に自己判断しないことも重要です。
今回は熱中症と風邪の違いについて学んできました。暑い夏はとくに水分補給などを意識的に心がけている人も多いとは思いますが、熱中症のような症状を感じたら、すぐに体を冷やすなどの適切な処置をし、すみやかに医療機関を受診しましょう。