教えてくれたのは……松本和隆(まつもとかずたか)先生
三重県生まれ。医療法人松徳会・松本クリニック院長。日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医。
2016年、三重県松阪市に医療法人松徳会松本クリニックを開院。地域では数少ない「糖尿病専門医」として毎日多くの患者の診療を行っている。著書出版、講演、テレビ出演など多数。
その熱中症対策本当に意味ありますか?
熱中症とは、暑さなどにより、体の中の水分・塩分のバランスなどが崩れたり、体温調節機能が働かなくなることなどです。具体的な症状としては、体温の上昇、めまい、けいれん、頭痛などがあります。
命に関わる場合もあり、夏の時期はとくに注意が必要な病気として広く知られるようになりました。昨今はあちこちで熱中症対策の情報を耳にするのではないでしょうか。
しかし、そのすべてが正確なわけではありません。誤った対策をしてしまうことで、体の不調に至るおそれもあるので気を付けなければなりません。
4つの間違った熱中症対策
ここからは、医師の松本和隆先生に間違った熱中症対策を教えてもらいましょう。わかったつもりでも、意外と勘違いしてやってしまっていることがあるかもしれません。正しい知識をつけて熱中症をしっかり予防しましょう。
1. のどが渇いてから水を飲むのでは遅い
松本先生「 喉が渇くときにはすでに脱水症状が始まっている可能性があるため、それ以前にこまめに水分補給を行うことが重要です。暑い夏は汗をかき、身体の水分が失われるため水分補給はこまめに。
ただ、冷たい飲み物をとりすぎると胃腸が冷え、消化不良の原因となります。冷たすぎない水、できればミネラルを補給できるミネラルウォーターをこまめにとるようにしましょう。
ちなみにアルコールには利尿作用があるので、水分補給になりません。むしろ脱水症状を促進することもあるのでご注意ください。市販の経口補水液を活用するのも一手です」
2. 冷房を効かせすぎるのは避けて
松本先生「冷房は適切に利用すれば熱中症予防に役立ちます。ただし、冷房の効きすぎで体温が下がりすぎるのも避ける必要があります。屋内外の温度差が大きすぎると体の負担となるので、エアコンの温度設定を適切に管理することも大切です」
3. 塩分の取りすぎはやめて
松本先生「汗をかくと塩分も失われていくので、適量の塩分を含む食物や飲料を摂ることが重要です。しかし、過剰な塩分摂取は高血圧・糖尿病・肥満など生活習慣病のリスクを高めてしまいます。塩分の過剰摂取と高血圧は関連性が高いのでとくに注意が必要です。
例えば、塩分と糖分を含むスポーツドリンクと一緒に塩飴を食べると、塩分過多になり思わぬ体調不良を引き起こすことがあります。健康な人はあまり心配しすぎる必要はないでしょうが、高血圧や腎臓病などの持病がある人は、過剰な塩分摂取は逆効果となることがありますので注意をしましょう。
ですので、塩分は適量を摂るようにしましょう。最近は塩分補給を目的として『塩飴』が市販されています。塩飴には塩、砂糖だけでなく、カリウム、カルシウムなど他のミネラル成分や炭水化物、クエン酸、ビタミン類なども含まれているので、活動のためのエネルギー補給や疲労回復にも役立ちます。持ち運びしやすいので、アウトドアレジャーや長距離移動、ランニングのときにも使いやすく、便利です。
ただし、塩飴を食べるときは、できるだけ水分補給も同時に行うようにしてください。水分と塩分を一緒に摂ることで、汗をかいた体に必要な成分を効率的に吸収できるようになります。
多少の違いはありますが、塩飴1粒には約20mgの塩分が含まれているといわれていますので、成人していれば、食事から摂取する塩分量も考えると塩飴は1日に10個までにしたほうがよいでしょう。『1回の休憩につき500mlの水を飲み、塩飴を1個ずつ食べる』という休憩を、1日の運動や食事の間に数回はさむイメージで水分・塩分を補給すると考えるとわかりやすいかもしれません」
4. 日焼け止めは熱中症対策ではない
松本先生「日焼け止めは夏の強烈な紫外線から皮膚のやけどを予防するためには有効に機能しますが、熱中症の直接の予防にはなりませんので注意が必要です。
熱中症の予防には炎天下の活動はできるだけ避け、適切な飲水と冷却対策を行うことが重要です」
4つの間違った熱中症対策をご覧いただきました。ついやってしまっていたことありませんでしたか? こまめな水分補給を基本ですが、よかれと思ってたくさん摂っていた塩分や効かせすぎていたエアコンなどが、かえって健康を害する要因につながることもあるそうです。正しい知識を備えて、健康な夏を過ごしたいですね。