教えてくれたのは……WOOOLY株式会社 菊池 弘さん
障がい者就労継続支援 B型事業所を40か所以上経営しているWOOOLY(ウーリー)株式会社でエリアマネージャーとして勤務。各事業所では障がい特性に合った就労をサポートしている。事業所の温かい雰囲気、さらにスタッフも安心して働ける風通しのよい組織風土づくりを目指し、業界内で率先して実施していくことで、よりよい社会を築くことに繋がると考えている。
大人になってから気づくこともある発達障がい
菊池さんによると、大人になってから「ADHD」または「ASD」と気づくケースもあるのだそうです。どのようなことをきっかけに気づいたのか、実際にあった事例を交えて教えていただきました。
菊池さん「例えば、就職後に業務についていけない、結婚後にコミュニケーションがうまくいかない、一人暮らしで片付けられないことなどが挙げられます。しかし、大抵の方は子どものときから生きづらさを感じていると言われます。
学校での授業、同級生との会話、社内会議などで、その場にいるのが非常につらいと感じ、『自分はどうしてうまくできないのだろう?』と本人が気づくのではないでしょうか。
また、近親者がADHDおよびASDにみられる特徴を不思議に思い、調べたり、病院関係者・介護関係者に問い合わせたりするところから始まる場合もあります。」
結婚後、配偶者が先に気づく場合もあるそうです。
菊池さん「ある夫婦の間で実際あったケースでいうと、ご主人が『トイレに行くと毎回電気を消さない』『朝の整髪に異常な時間をかける』『興味のないことには返事はするが聞いていない』『人の気持ちをあまり気にしない』『落ち着きがない』など、結婚して時間が経つにつれ、奥さんが夫の行動を不思議に思うようになったようです。
あるときにADHDの記事を目にして『夫が当てはまるかもしれない』と考えたため、病院で診察を受けたところADHDと診断されたとのこと。診断が下されたことで、この夫婦は夫の行動の原因がわかり、対処の仕方も考えることができるようになったようです。」
自身の障がいと向き合っていくために
ADHDまたはASDと診断された場合、本人はどのように向き合っていけばよいのでしょうか?
菊池さん「まずは、ご自身が障がいを理解し、受け入れることから始まるのではないでしょうか。発達障がいは持って生まれたものであり、長く付き合っていかなければなりません。ご自身の障がいを理解することで、普段の生活の中でどのように対処していけばよいかを客観的に考え、行動に移すことができます。
ADHD/ASDなどの方は、同じ趣味がある方と交流を持つことでご自身の障がいと向き合うことができるとも言われています。また、当事者同士の『ピアサポート』も大いに役立つことでしょう。このようにすることで、ご自身の生きづらさに向き合っていくことができるのではないでしょうか。」
※ピアサポートとは:peerとは仲間・対等を意味し、「仲間同士の支え合い」を意味しています。
ひとりで抱え込まないために「相談先」の情報を集める
本人、または家族などの周囲の人が悩みを抱えている場合、相談場所を確保するのも大切なのだと菊池さんはおっしゃいます。
菊池さん「市区町村には、相談窓口(支援課)や発達障がい者支援センターがあります。NPO法人が情報の発信や共有、仲間づくりなどを目的とした会を作って活動している場合もありますし、ワークショップや講演会、当事者研究などを行っている当事者団体もあります。
ご自身の住んでいる地域にどのようなコミュニティがあるか、市役所の相談窓口へ問い合わせたり、インターネットで調べたりして情報を集めることが可能です。」
発達障がいを抱えて生きづらさを感じている当事者も、どのようにサポートすべきか悩んでいる周囲の人も、これからより過ごしやすくするための“次の一歩”を考えるきっかけになると幸いです。