教えてくれたのは……WOOOLY株式会社 菊池 弘さん
障がい者就労継続支援 B型事業所を40か所以上経営しているWOOOLY(ウーリー)株式会社でエリアマネージャーとして勤務。各事業所では障がい特性に合った就労をサポートしている。事業所の温かい雰囲気、さらにスタッフも安心して働ける風通しのよい組織風土づくりを目指し、業界内で率先して実施していくことで、よりよい社会を築くことに繋がると考えている。
「ADHD」の特徴
発達障がいのうちの一つである、注意欠如・多動症(ADHD)。言葉は聞いたことはあるけれど、どのような特徴があるのか実際にはよくわからない方も多いのではないでしょうか。菊池さんに詳しく教えていただきました。
菊池さん「注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性などを特徴とする神経発達症です。
主な特徴としては、
- 注意を持続するのが難しい
- ケアレスミスが多い
- 忘れ物が多い
ということが挙げられます。また、多動性・衝動性が強いため、他者に対して配慮に欠けた行動によって集団生活でのトラブルを引き起こしやすい傾向もあります。物を誤って壊してしまうことなども、特徴のひとつです。
他の人が話しているときに全く関係のないことを話したり、相手が気にしていることを無邪気に言ってしまったりと、学校や職場・友人関係でトラブルを起こしてしまうこともあります。」
「ASD」の特徴
自閉スペクトラム症もいくつかある発達障がいの一つ。このような特徴があるそうです。
菊池さん「自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳機能障がいで、コミュニケーションや対人関係の困難さ、常同行動に関する症状があります。
主な特徴としては、
- アイコンタクトを避ける
- 他の人に近づかれると動揺する
- 特定の物事に強い関心(こだわり)を持つ
- 活動や興味の範囲が狭い
- 感覚が過敏
ということが挙げられます。
一般的には上記のような特徴がみられますが、大人のASDの場合は本人の生活環境や性格・周りの理解・ご自身の障がいの重さによって症状は大きく異なります。また、大人になるまで気付かないで生活してこられた方には、二次障がい(うつ病、引きこもりなど)も見られるようになります。例えば、これまで接してきた方々の中には、急な予定変更に応じることができずにパニックになった方や、あいまいな表現を理解することができなかったため、他者に誤解されてしまった方がいらっしゃいました。
あいまいな表現は、理解できないだけでなく混乱をきたす恐れがあるので、ASDの方には短い言葉ではっきり話すことが必要です。必要に応じ、ピクトグラム(意味の概念を持たせる記号や簡単な絵)を用いることも効果的です。」
発達障がいを抱える人のためにサポートできること
家族、パートナー、友人、職場の人など、まわりの人はどのようにサポートするのが適切なのでしょうか?
菊池さん「ADHD/ASDは重複した特徴がみられる場合もあります。大事なのは症状に悩む方の『いまを受け入れてあげること』が必要だと考えます。悩みに対して否定の言葉をかけてしまうと、心を閉ざしてしまうことに繋がるため、ご本人の話すことをよく聞き、周囲がそれを理解するように努力することが必要です。
大人の発達障がいは持って生まれたものであり、『根性論で頑張ればできる』というものではありません。周囲が脅迫的に頑張ることを強いることがあれば、二次障がいを引き起こすことになる可能性もあります。個人の特性を受け入れること、環境を整えることが一番であるといえるでしょう。」
お互いにとってよりよい関係性を築くために、まずはそれぞれの発達障がいにどのような特性があるのか、どのようなことに困っているのかを理解することが大切なのですね。
次回の記事では「結婚や就職をきっかけに気づく自身の発達障がい【ADHD・ASD】との向き合い方」について、実際にあった事例を交えてご紹介します。