教えてくれたのは……鎌田怜那さん
一般社団法人「Mamilia(マミリア)」代表。臨床心理士・公認心理師。福岡県を拠点に、子育てのお悩み相談(カウンセリング)やアタッチメント・ベビーマッサージ、子育てに関する講義・講演などの活動を行っている。3児の母。
場面緘黙の子どもにストレスをかけてしまう「4つのNG言動」
家では話せるのに、園や学校などの特定の場面で話せなくなってしまう「場面緘黙(ばめんかんもく)」。
場面緘黙の症状をもつ子どもに接するときに気をつける必要があるのが、親やまわりの大人の言動です。適切な接し方ができるように、NGな言動を知っておくとよいのだそうです。
1.大勢の前での発表・発言を促す
鎌田さん「『発表するまでみんな待ってるよ』などの言葉は、場面緘黙の子どもにとって非常に苦痛な状況です。緊張が高まって、そこにいることがとても苦しくなり、登園・登校自体が嫌になる可能性があります」
2.できている子を褒める
鎌田さん「場面緘黙の子どもが話せるようにという意図で、『〇〇ちゃんすごいね』『上手だったね』など、友だちやきょうだいを褒めたり感心したりすることもあるかもしれません。
しかし、それは暗に自分ができていないことを『ダメなんだ』と否定してしまうことにつながります。励ますつもりでかけた言葉に傷つくことは少なくないです」
3.原因を追求する
鎌田さん「なんとか解決しようと、子どもに原因や理由を聞くこともあります。しかし、多くの場合、本人にも説明できないのです。説明できないことを追求し続けると、それは園や学校などの社会的な場面での場面緘黙と同じ状況になってしまいます。
『何か心配なことはある?』と気軽に聞くのは構いませんが、『別に』『ない』といった返答や無反応の場合は、『何かあったら教えてね』と伝えて、それ以上は追求しないようにしましょう」
4.家が緊張場面にならないようにする
鎌田さん「家でできるのに、園・学校でできないとなると、親としても悔しい思いが湧いてしまうこともありますよね。外でもできるようにしてあげたい気持ちから家で発表の練習などをすると、子どもにとって家もリラックスできない場所になってしまいます。
家と園・学校は別の環境。家は、外での疲れを癒す場所であり続けてくださいね」
子どもが安心して過ごせるように、できることを
「場面緘黙は遺伝と環境が複雑に影響しあって出る症状」なのだと、鎌田さん。自分の子育ての結果として責めてしまう方も少なくないかもしれませんが、立ち止まるのではなく、できることをやっていくことが大切なのだとおっしゃいます。
鎌田さん「私の経験上、場面緘黙のお子さんの多くが頭の中でたくさんのことを考えており、感受性が豊かで思慮深い面もあると感じます。そのために、自分の発言がどのように思われるのかと不安になっている傾向が見られるのです。また、『言いたいけど言えない』といった緊張や葛藤もあるようで、唾を飲むのも難しくなるほどのお子さんもいます。
発言できないこと自体が、子どもにとって大きなストレスや傷つく原因になるため、親が落ち着いて安定していることがとても重要です。親がどっしりと構えていることで、子どもも安心感を得やすくなります。
家と外で子どもの様子が異なると知ったときには動揺するかもしれませんが、信頼できる人に気持ちを話して、自分自身の気持ちも整えてくださいね」
<参照元>
かんもくネット
日本場面緘黙研究会
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