教えてくれたのは……鎌田怜那さん
一般社団法人「Mamilia(マミリア)」代表。臨床心理士・公認心理師。福岡県を拠点に、子育てのお悩み相談(カウンセリング)やアタッチメント・ベビーマッサージ、子育てに関する講義・講演などの活動を行っている。3児の母。
「場面緘黙(ばめんかんもく)」の診断基準
家の中ではふつうに話せるのに、特定の社会的状況(学校や職場など)になると話せなくなってしまう症状が「場面緘黙(ばめんかんもく)」。子どもの様子を観察したり、面談などで先生からの報告を受けて心配している方もいるのではないでしょうか。
鎌田さんに、場面緘黙の4つの診断基準を教えていただきました。診断上の定義としては不安症に分類され、診断には以下のチェック項目があるのだそうです。
- その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。
- その障害の持続期間は、少なくとも1か月 (学校の最初の1か月だけに限定されない)である。
- 話せない理由が、その社会的状況で求められる会話の内容の知識が不足していたり、話すことの楽しさが不足していたりすることによるものではない。
- その障害は、コミュニケーション症 (例:小児期発症流暢症) ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。
鎌田さん「場面緘黙は、発声や滑舌などに問題がなく、言葉の理解力や会話力もあるのに、特定の社会的場面ではいっさい声を出せない状態になることが特徴です。さらに、それが偶然なのではなく、一貫して長く続いている状態のことを指します。症状は、軽いものから重いものまであります。
他者からの問いかけに対して、頷いたり首を振ったりなどの反応ができたり、特定の先生や友達の耳元で囁くことができたりする場合もありますが、多くの場合、じっと押し黙ったまま緊張が高まり、時が過ぎるを待っているように見える様子が見られます。
一般的に就学前の子どもに多い症状と言われていますが、就学後の子どもにも、大人にも出現する症状です」
子どもが場面緘黙になるきっかけ
なぜ場面緘黙になるのでしょうか。明らかな原因は解明されていないものの、もともと持っている気質と環境が関係してくるのだと、鎌田さんはおっしゃいます。
鎌田さん「現段階では、不安になりやすい気質を持っているところに、環境の変化などの外側からの要因が影響して症状が出ると考えられています。
<考えられる要因>
- 急激な、突然の大きな変化があった。
- トラウマになるような経験をした。
このように、子どもの不安・恐怖を刺激するような出来事が想定されます。そのような体験をした場所や雰囲気、人物に似た場面で緘黙の症状が出やすいようです。
しかし、そのような経験をしたからといって、必ず場面緘黙になるとは限りません。また、家庭以外での経験が不足して、家族以外の人や場所に安心感を得にくいことによる場面緘黙もあるでしょう。
明らかなきっかけがある場合と、きっかけが見当たらない場合があります。同じ症状でも、一人ひとりの背景や性格傾向によって症状は異なるため、『我が子の場合はどうかな』という視点が大事になります」
自分の子ども時代のことを聞いてみるのも、ひとつの方法
自分の子どもの対応に悩んだ場合、どのようなことができるのでしょうか。
鎌田さん「子どもの発達において、『遺伝』と『環境』の関係性は切り離すことはできません。遺伝的要因として、自分やパートナーが幼少の頃はどうだったかをご両親に確認してみるのも、ひとつの方法です。
もしかすると、自身にも同じようなことがあったかもしれません。そうであれば、子どもの心境に寄り添うことができる頼もしい理解者になれるのではないでしょうか。同じ症状を経験して大人になった、いい見本になれると思います」
次回の記事では「子どもの場面緘黙に気づくきっかけのポイント」をご紹介します。
<参照元>
かんもくネット
日本場面緘黙研究会
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