教えてくれたのは……鎌田怜那さん
一般社団法人「Mamilia(マミリア)」代表。臨床心理士・公認心理師。福岡県を拠点に、子育てのお悩み相談(カウンセリング)やアタッチメント・ベビーマッサージ、子育てに関する講義・講演などの活動を行っている。3児の母。
場面緘黙をもつ子どもをサポートするためにできる「4つのこと」
子どもが場面緘黙かもしれないと思ったときに、または診断を受けた場合に、どのようなことをするとよいのでしょうか。子どもをサポートするためにしておきたい「4つのこと」を鎌田さんに教えていただきました。
1.園や学校との情報共有を密にする
鎌田さん「子どものまわりの環境の理解、同級生からの理解が大きな支えになるので、とても大切です。
お子さんが少しでも安心感を持てるように、家でどのような話をしているのか、好きなことや安心につながるヒントを園や学校と共有できるといいですね。
もちろん、園や学校で対応できない内容もあるかもしれません。対立関係にならず、協力関係を大事に育みましょう」
2.保護者と保育者・教諭が信頼関係にあるところを見せる
鎌田さん「『この先生は安心して大丈夫』だと思えると、特定の先生とはコミュニケーションが取れる状態になることもあります。そういった先生を見つける近道は、“親が信頼している人”だと子どもが知ることです。
そのために、まずは子どもがいないところで情報共有の時間を取り、信頼関係が築くところから始めるといいと思います。信頼できる先生だと思えたら、『〇〇先生、優しいね』『あなたのこと褒めてたよ』『あなたの笑顔が見れて喜んでたよ』など、家で先生の話を少しずつ出してみてくださいね」
3.言葉以外でのコミュニケーション方法を見つける
鎌田さん「コミュニケーション方法は、言葉だけではありません。指差しや頷き、絵カードやハンドサイン、ジェスチャーなどさまざまな方法があります。
特に、困ったとき、手伝ってほしいとき、つらいとき、トイレに行きたいときなど、SOSの出し方を決めておくといいですね。言葉以外の方法でも難しいお子さんはいますが、急かさないことが鉄則です。
不安になると出る癖など、子どもなりのSOSのサインがあるはずなので、把握できている情報は園や学校にぜひ共有してください」
4.特別支援教育を利用する
鎌田さん「場面緘黙は、特別支援教育を利用できます。学習や日常生活に支障が出るほどの症状の場合、特別支援教育を利用することも一つの方法です。
友だち関係の仲介をしてもらったり、困ったときに迅速に対応してもらったりするなど、伴走支援をしてもらえることで、ずいぶんと過ごしやすくなります。自治体によって特別支援教育の内容は異なるので、どのような支援をしてもらえるのかを確認してみましょう。
また、特別支援教育は希望したら、すぐに利用できるようになるものではありません。年度ごとに対象を決定して支援プログラムを組むため、進学・進級のタイミングでの申し出では遅いです。支援の必要性も含めて、早めに担任に相談することをおすすめします」
自己判断だけでなく、専門家に相談することも大切
鎌田さんによると、場面緘黙と考えられている子どもの中には家庭内でも話さないケースがあり、発語の遅れなど他の障害の可能性も考慮する必要もあるのだそうです。
鎌田さん「家が“言葉を発しなくても大丈夫な環境”になっていることで、話さないお子さんもいます。子どもの言いたいことを言葉に頼らずに理解できる親は、子どもが話していないこと自体に気づいていないことがあるのです。
そのような場合は場面緘黙ではなく、自分の思いや考えを表現する言葉を知らない発語の遅れになります。言葉のキャッチボールを毎日しているかどうか、どのようなコミュニケーションを取っているかを確認してみるといいと思います。
場面緘黙の症状に見えて、実際には発達遅滞や発達障害、精神疾患に関連した障害を抱えている可能性も否定できません。自己判断だけでなく、専門家に相談することもおすすめです。専門家に話をすることで、改善するためにできることが見つかるかもしれません。不安に思うかもしれませんが、お子さんのために一歩踏み出す勇気をもってみてくださいね」
<参照元>
かんもくネット
日本場面緘黙研究会
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