教えてくれたのは……岡井 有子先生
「こどもと女性の歯科クリニック」院長。育児に忙しく、なかなか自分の時間が取れないお母さんたちが、子どもと一緒に通えるようにとの想いから、2017年7月に元麻布一丁目の地に開院。一般歯科・予防歯科のほか、矯正治療法であるRAMPA(ランパ)セラピーの専門医院として治療に努めている。
歯科医から見た、女性の「いびき」の原因とは
自分では気づかないことが多いですが、家族から指摘されて初めて自分がいびきをかいていることを知る方もいるのではないでしょうか。岡井先生によると、いびきの原因はさまざまあるとのこと。歯科領域から見た原因を教えていただきました。
岡井先生:いびきの原因は、疲労や肥満、飲酒などさまざまなものが考えられます。原因や種類によって、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来域など、専門医が異なります。
当院の主診療であるRAMPAでは、歯科領域において「骨格」を原因とするいびきに対するアプローチが可能です。ここでは、骨格を原因とするいびきについてお話します。
骨格を原因とする「いびき」
岡井先生:舌が上あごにつかず、口がぽかんと開いた状態の口呼吸は、上あごの骨格のネガティブな変化を引き起こし、鼻腔を狭小化させます。鼻腔が狭くなると十分な通気ができなくなるため、物理的に鼻呼吸ができなく(口呼吸しかできない)なってしまうのです。
口呼吸になると舌根部が下がり、気道を圧迫します。睡眠時の仰向けの状態では、重力の影響で舌の位置がさらに下がることで、気道をより狭くしてしまいます。狭くなった気道で空気が振動して発生するのが、いびきの音です。
さらに悪化すると、気道が完全にふさがり、一定時間以上呼吸が止まってしまうことがあり、これが睡眠時無呼吸の状態です。いびきや睡眠時無呼吸は、睡眠の質を下げ、疲れやすくなるだけでなく、場合によっては深刻な疾患を引き起こします。
出産や育児で、身体や生活リズムが大きく変化する30代や40代の女性は、筋力の低下や姿勢の崩れなどからくる筋肉の過緊張が起こりやすく、いびきにつながる骨格のゆがみにも注意が必要です。
歯科医が教える!「いびき対策」に効果的な簡単セルフケア
筋肉の過緊張程度の軽度の口呼吸によって起こっているいびきであれば、筋肉をほぐすことで改善が期待できるのだと、岡井先生は言います。「たかがいびき」と軽視せず、原因を知り、それに対しての対策をとることが大切なのだそうです。
今回は、歯科的な視点から、いびき対策として簡単に始められるセルフケア方法を岡井先生に教えていただいたので、ぜひ試してみてくださいね。
舌のトレーニング
岡井先生:舌も筋肉であることを理解し、意識してトレーニングすることが大切です。加齢や運動不足などによって、筋力が衰えると、身体の動きが悪くなるのと同様です。以下の順で舌のトレーニングを行ってみてください。
1.舌の下にあるひだを伸ばし、舌先を上あごの「スポット」に当てます。
2.舌の根元を押し上げることを意識し、舌全体を上あごに付けます。
※「スマホを触るたびにチェックする」など、一日のうちに何度も舌のポジションを確認する自己ルールを決めると、効果が表れやすくなります。
※「あいうべ体操」や「ぱたから体操」などの簡易版の筋機能療法も有意義です。
頭頚部のマッサージ
岡井先生:舌は、さまざまな筋肉と繋がっています。頭頚部の筋肉の過緊張は「舌骨の位置」を引き下げ、口呼吸を導くため、マッサージで筋肉の凝りをほぐしましょう。
1.口の中に指を入れ、頬の内側やほうれい線にあたる部分をマッサージします。
2.首の後ろや後頭部を手のひらでマッサージします。
3.頭皮を指先で触り、皮が動きづらいと感じるところをほぐすようにマッサージします。
※5~10分程度でも、スキマ時間の習慣として毎日続けてください。
岡井先生によると、口呼吸にはさまざまな悪影響があるそうです。次回の記事では「歯並びへの影響と受診が必要なサイン」について、ご紹介します。