教えてくれたのは……草ヶ谷英樹(くさがやひでき)先生
医学博士、日本内科学会 内科認定医/総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医。
呼吸器・アレルギー科専門医として大学病院勤務中に、精巣腫瘍や原因不明の顎関節症などで長期入院を経験。自分が患者という立場になり、医療はもっと患者に寄りそうべきだ、自分らしい医療に取り組みたいという思いが生じ、2021年に祖父・父から続く「草ヶ谷医院」を継承し独立。
「いびき」と「歯ぎしり」に関係はあるの?
本人に自覚症状がなくても、同室で寝ている人の睡眠を妨げてしまう「いびき」と「歯ぎしり」の音。この2つの症状に関連はあるのでしょうか?
草ヶ谷先生「いびきと歯ぎしりや無呼吸の関連については、実に多くの報告がなされています。歯ぎしりをする人は歯ぎしりをしない人に比べて、睡眠時の無呼吸や呼吸が弱くなる回数が約3倍多いとする報告や、睡眠時の無呼吸の重症度が高いといった報告もあります。
睡眠時のいびきは、とくに眠りが浅い時に起こりやすいことがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返されるため、体内の酸素濃度が低下します。すると、体は酸素が低いことをなんとか補おうとし、一時的に目覚めて頑張って呼吸をしようとするのです。そのため、眠りが浅くなりやすいといえます。これが結果的に、歯ぎしりの発生にもつながります。
いびきと歯ぎしりは、どちらも睡眠時無呼吸症候群を疑う、ひとつの黄色信号といえるでしょう。」
CPAP療法をする前にできること
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には「CPAP(シーパップ)療法」による治療が行われることが多いそうですが、「軽度から中度のいびきの場合であれば、自分自身でできる有効な方法もありますよ」と、草ヶ谷先生はおっしゃいます。
CPAP療法※を始める前に意識しておきたいのは、下記の2点とのことです。
※CPAP療法とは……経鼻的持続陽圧呼吸療法:Continuous Positive Airway Pressure/マスクをつけて空気を送り込むことで狭くなった気道を広げて肺までしっかりと空気を届けることができます。
1.寝るときの姿勢をかえる
草ヶ谷先生「前回の記事でご紹介したように、仰向けに寝るのと横向きに寝る場合で、いびきの程度が変わるかをまず確認してみましょう。横向きに寝るといびきや無呼吸が減るのであれば、寝るときの姿勢を意識するのも簡単で有効な治療になります。」
2.生活習慣を見直す
草ヶ谷先生「肥満気味の方の場合は、減量することでいびき症状を減らすことが期待できます。また、多くの場合、飲酒によっていびきが悪化することがわかっています。飲酒をするとのどの周囲の筋肉が緩むため、空気の通り道が狭くなりやすくなるからです。飲酒をして寝たときにいびきや無呼吸が増える方においては、禁酒も有効です。
そして、喫煙は空気の通り道の粘膜の炎症につながると考えられています。粘膜が腫れると当然ながら空気の通り道が狭くなり、いびきの大きな原因になります。睡眠時無呼吸と同様に、喫煙そのものが心臓や血管の病気に直接つながる危険因子でもあるため、喫煙をされている場合はぜひ禁煙をご検討ください。」
本人の健康はもちろんのこと、一緒に寝ている人の睡眠にも影響してしまう「いびき」と「歯ぎしり」。もしも症状が軽い場合には、まずはできることから始めてみるのもよいかもしれませんね!
次回は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状や治療法」について、ご紹介します。