「自律型」が陥りやすい2つの罠
では、どのような齟齬が起こるのでしょうか。自律型が陥りやすい罠は大きく2つあります。
1.気がつくのはいつも自分ばっかりという偏り
家事って、それぞれの生活観がダイレクトに反映されます。ひとことで「綺麗好き」と言ったって、そのレベルはまちまち。在庫管理だって、ストックがある程度ないと不安な人もいれば、切れてから買ったっていいって人もいる。
他人の家の話なら、「人それぞれだね」で済みますが、同居人となるとそうもいかない。結局「気がついたほう」は「いつも自分」となってしまう。そんな偏りが生まれてしまって上手くいかないってことも。
2.家事チキンレース
ひとつ目の偏りが生まれてしまう原因の一つでもあるのですが。「まあ、後でやればいっか〜」と先延ばししていたら、いつの間にか家族の誰かがやってくれちゃってるってケースです。
で、お互いが適度に先延ばししてるならまだいいんですが、たいてい先延ばしするほうと、尻拭いするほうって決まっています。その結果「自分ばっかり」という偏りが生まれてしまう。
「見えている家事」と「見えていない家事」
「気がついたほうがやる」という言葉の裏側には、「自分が見えている範囲での家事ならやれるけれど、見えていない部分まではわからないよ」という前提があります。でも、実際の家事は"見えていない部分"の方がずっと多いのです。
たとえば、洗濯物ひとつ取っても「干す」「畳む」だけでは終わりません。天気を見て今日干せるか判断したり、子どもの体操服を明日までに仕上げないといけないことに気づいたり、濡れたタオルを先に回さなきゃと優先順位を入れ替えたり。こうした判断や段取りの積み重ねがあるからこそ、家事は回っているのです。
見えている動作だけを切り取れば「やってるつもり」になれる。でも本当に大変なのは、その背景にある「気づき」と「段取り」なんですよね。
偏りをなくす「2つの方法」
さて、こうした問題ってどうすれば少しでも偏りをなくせるのでしょうか。これも方法としては2つあります。
1.気がついたときに、相手にお願いする
シンプルですが、なかなか有効なやり方です。実際にあるママさんは「3回に1回くらいは、お願いするようにしてます。『前回はわたしがやったから、今回はお願いね』という感じで」と言っていました。これなら、自分だけが負担を抱え込むことも減りますし、相手も「あ、こういうタイミングで家事が発生するんだ」と学ぶことができます。
2.家事の発動ポイントをすり合わせる
これは、お互いが「どんなときに家事をしようと思うか」という「気がつくタイミング」を伝え合う方法。これもあるママさんが「夫が洗面台の汚れに全然、気がついてくれなくて。だから『こういうところに水垢や汚れがついてくるんだよ。そしたら掃除するタイミング』って、私が気になるタイミングを伝えたんです。そしたら彼も『いままで、そんなところ全然見てなかった!』って気にするようになってくれました」と。
こうして気になるタイミングをすり合わせしておくと、自然とお互いの価値観をアップデートしていくことができます。
「気づくタイミングのすれ違い」をなくしていく
自律型を好む人達は、細々としたルールを決めたり、家事のことで運用方法を考えたりするのが嫌って人が多いです。できるだけ自然な形で、気遣いや優しさで助け合いたい。
なので、ルールを決める(週1回は掃除する)のではなくて「気がつくタイミングのすれ違いをなくしていく」のが大事だなと思います。「これくらいになったら、家事をする」という感覚を共有していくこと。それが、自律型の家事シェアを成功させる秘訣です。
最初は意識的に伝え合う必要がありますが、だんだんとお互いの「気づくポイント」が近づいていきます。そうなったとき、本当の意味で「気がついたほうがやる」が機能するようになるのです。
家事は、どちらか一方が背負うものではありません。お互いの「気づき」を育て合いながら、一緒に暮らしを作っていくもの。そんな風に考えてみてはいかがでしょうか。




