「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんなのに」と言っていませんか?"上の子”の悩みと対策を考える

家族・人間関係

stock.adobe.com
 "上の子”の悩みと対策を考える

2022.04.16

臨床心理士・公認心理師のyukoです。兄弟げんかをしているとき、つい上の子に我慢するよう言ってしまいませんか?”年上が譲るのは当然”という考えはもっともですが、ときに上の子を息苦しくしてしまうものにもなってしまいます。上の子は、「(妹・弟の方が)自分より可愛いの?」「僕とママの時間はどこ行っちゃうの?」など、ネガティブな気持ち抱えやすいものです。今回は、上の子が抱きがちな悩みと、その対応について考えていきます。

広告

もくじ

「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんなのに」と言わないでほしい
"上の子”が抱きやすい気持ち
"上の子”と接するときに心がけたいこと
本人の成長を軸にした声かけ
似た境遇の人・理解のある人と繋げる
性格を肯定的に捉え、長所として伝えていく
兄弟姉妹で支えあえることのメリット

「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんなのに」と言わないでほしい

弟や妹が生まれ、「上の子」になったときから、「お姉ちゃん」や「お兄ちゃん」と呼ぶようになる方は多いのではないでしょうか。

ただ、子どもの視点に立つと「今までは一人っ子だったのに、ある日からお兄ちゃんと呼ばれ始めた。」「弟・妹のせいで我慢する時間が増えた」と感じることも。

弟を見つめる兄出典:www.photo-ac.com

家族の中では兄・姉という役割でも、唯一無二の「その子自身」
叱るときに、「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんなのに」と言われると、”自分を見てくれてない・わかってくれてない”と受け取ってしまうこともあります。

子どもの前では、それぞれの名前で呼ぶようにするのも、ときに大切な関わりとなります。 

"上の子”が抱きやすい気持ち

親自身に弟や妹がいないと、上の子の気持ちがわからないときもありますよね。

上の子は、弟や妹に対して、どんな気持ちを抱きやすいのでしょうか。

・家族が増えた「喜び」
・両親の笑顔が増える「嬉しさ」
・ママとの時間が少なくなる「寂しさ」
・比較されることへの「苛立ち」
・自分の好きな遊びを邪魔される「悲しみ」
・我を押し通すことへの「罪悪感」

 我慢する子ども出典:www.photo-ac.com

上の子は下の子に対して、ポジティブな気持ちと、ネガティブな気持ちの狭間で揺れているのだと思います。
抑えている我慢は両親に直接言えることもあれば、友人や自分に向く場合もあります。また、そのときは怒っていなかったのに、あとから妹や弟に不満をぶつけるなんてことも。

自分の気持ちをご機嫌に保ち、人に優しくし続けるのは、誰にとっても難しいものです。
ましてや子どもは、自分の不満を誰に向ければよいのか、葛藤をどうやって解消すればよいのか、まだまだ模索の段階なのです。

涙ぐむ子出典:www.photo-ac.com

"上の子”と接するときに心がけたいこと

本人の成長を軸にした声かけ

優しくできたときに「いいお兄ちゃん」、我慢できなかったときに「お姉ちゃんなのに」と言われると、"自分なんか"という僻みに繋がってしまうことも。
「良い」「悪い」で伝えられると、ときに”自分の評価が下がった”と感じやすくなるんです。
すねる子ども出典:www.photo-ac.com

よいことをしたときに、親から見た印象や、親自身が感じた気持ちを率直に伝えることが大切です。

「妹にゲームの順番を譲っているのを見て、我慢強くなったと感じたよ」
「1人でおつかいに行ってくれて、すごく助かっている」
「今日は昨日よりもいらいらしてたように見えるけど、大丈夫?」

”上の子なのに”、”上の子だから”、ではなく、”その場でできた行動に対してどう思ったか”を伝えていくのが大切です。
「自分を見てくれているんだ」という実感を育てていけるといいですよね。

親子出典:stock.adobe.com

似た境遇の人・理解のある人と繋げる

寂しさや苛立ちは、まず誰かに受け取ってもらう必要があります。
家族内で十分な時間が取れないときは、家族外での支えが本人の情緒を育んでいくものです。

家族外にサポート資源があると、親には話しにくい本音をこぼしたり、悩みを共有できたりもします。

 年上の子と年下の子出典:www.photo-ac.com

悩みを話す相手は専門家でなくても、叔父や叔母、従兄弟や友人など、誰が担っても大丈夫。

親だからといって、子どもの話を100%聞いていくのは難しいと思います。
「話せるときに、話したい人に」気持ちを伝えられれば、負の感情は落ち着いていきます。 

性格を肯定的に捉え、長所として伝えていく

兄弟がいることによって嫉妬や孤独感を抱える場合もありますが、もちろん逆も然りです。

「姉」や「兄」という自意識により、得られる長所は数多くあります。

・兄弟の見本になるための「責任感」
・年下の子を率いる「先導力」
・相手の求めに応じる「寛容さ」
・身近な他者を「洞察する力」
・意に沿わない状況への「忍耐力」

生真面目と捉えるか、責任感の強さと捉えるか。優柔不断と捉えるか、慎重と捉えるか。
周囲の捉え方によって、自分への見方は変わってきます。

嬉しそうな兄弟出典:www.photo-ac.com

弟や妹がいる「せい」と思うか、いる「おかげ」と思うか。
褒められた経験を多く積むと、妹や弟の存在を肯定的に捉えていけるはずです。

時間に余裕があるときにフォローしていけば、温かい経験として心に残っていくと思います。
下の子に対して、「折れてあげたこと」「譲ってあげたこと」をしっかり褒めていくと、人を許せる心が育まれていきます。

上の子ならではの長所を伸ばしていけるといいですよね。

兄弟姉妹で支えあえることのメリット

親としては、手のかかる子が複数いると、日々の悩みはつきませんよね。
一方、複数いるからこそ楽しい瞬間もあるのではないでしょうか。
姉妹に対する思いやりや兄弟同士で支えあう経験は、かけがえのないものです。

笑顔の兄弟出典:www.photo-ac.com

上の子だからこそ抱える気苦労はありますが、妹や弟がいるからこそ得られる喜びがあるのも事実です。
「気分が晴れの日」を、家族みんなで増やしていけるといいですよね。

広告

著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

気になるタグをチェック!

saitaとは
広告