映画『そばかす』坂井真紀さんインタビュー!
映画『そばかす』は、誰にも恋愛感情を抱くことなく生きてきた蘇畑佳純(三浦透子)が主人公。彼女は恋愛も性的欲求も抱かないセクシャリティ(アロマンティック、アセクシャル)の持ち主ですが、佳純はそれでも十分幸せ。しかし、周囲は放っておいてくれません。
合コンに誘われたり、家族から「結婚」の話題を出されたり……。そんな彼女がさまざまな出会いと交流を経て、自分らしく生きる道を見つけ出していく物語です。
坂井真紀さんは、佳純の母親役。彼氏もいないし、結婚する様子もないアラサーの娘が気になって仕方がないという、面倒見のいいお母さんです。まずは、本作の役について、お話を伺いました。
―いい映画でした! 坂井さん演じるお母さんは、蘇畑家を明るく照らす太陽みたいな存在でしたね。
坂井真紀さん(以下、坂井さん):台本を読んだときの第一印象が「楽しいお母さん」だったので演じるのが楽しみでした。ダンナさんは心が少し疲れてしまい、仕事をお休みしているので、「私が元気でいなくっちゃ」なんていうことを思っていたり。やはり母親は家族のことをなんだかんだと心配しつつ、力強い存在ですよね。
―家族がお茶の間で集まってワイワイしているシーンが良かったです。本当の家族のようでした。
坂井さん:もともと台本にもそれぞれのキャラクターがよく描かれていました。撮影前にリハーサルもやりましたし、撮影もカットを細かく割らずに撮影していきましたので、その中でどんどん家族の濃厚な空気感ができてきたと思います。私自身のキャラクターも皆さんとのやり取りを重ねているうちに、蘇畑家のお母さんが出来上がっていった感じです。
初めてのことが毎年やってきて、ずっと新米ママの気持ち
―完成した映画をご覧になった感想は?
坂井さん:面白かったです。出演作の試写を観るときは、やはり自分のお芝居が気になってしまうのですが、『そばかす』は楽しんで、夢中で観ていました。透子ちゃんはじめ登場人物たちがとても愛おしく感じました。
―今回、二人の娘を持つ母を演じて、ご自身のお嬢さんが大人になったら……など、考えたりしませんでしたか?
坂井さん:そうですね、うちの子はどんな風に大人になっていくんだろうと思いました。娘は小学校の高学年になり、「ママ、大好き!」と言う年齢もそろそろ卒業で、少々生意気になってきました(笑)。これから思春期を迎えるんだと思うと、楽しみでもあり、怖くもあり……。ひとり娘なので、毎年毎年初めてのことがやってきますので、私はずっと新米ママの気持ちです。
すべての経験が自分の引き出しに詰まっています
―仕事への向き合い方についてお聞きたいのですが、坂井さんはキャリアを重ねて、仕事に対する向き合い方が変わったり、考え方に変化が見られたりということはありますか?
坂井さん:年齢を重ねるごとに、仕事への考え方にも変化はありました。求められることも変わってきますし、子供を持ったことでの気持ちの変化も大きいと思います。自分のことを考えることで精一杯だったのが、自分以外のこともたくさん考え、受け入れ、最善をつくしたいという、母のような気持ち(笑)になっています。
いいことも、悪いことも、喜びも、悲しみも、すべての経験が自分の引き出しになっています。役にもよりますが、普通に日常を生きる人を演じることが多いので、私自身がどんな風に生きて、生活をしているかということが、演じる上での大きなヒントになっていると思います。
―なるほど。人生の経験がすべて演技につながっているんですね。
坂井さん:どのような仕事でも、その人の生き方が反映するのではないかと思います。だからこそ、日常を大切にちゃんと生きてれば、自分のやりたい仕事などに太くつながっていくのではないでしょうか。
大切なことは自然に見えてくるはず
ーsaitaの読者は、ワーキングマザーも多く、仕事と家庭のバランスは悩みの種です。坂井さんは、お仕事と家庭についてどのように考えていますか?
坂井さん:今いちばん考えることが多いのは、時間のやりくりですね。仕事に出るために、子供のことを「この時間は誰に頼んで、ここからは私が家にいて……」など、忙しいときはパズルのようにスケジュールを組み立てています。パズルが完成するまで気が落ち着きません。
―なるほど。働くお母さんの子育てあるあるですね。
坂井さん:でもあまり、仕事と育児のバランスについて深く考えたことがないかもしれません。今自分にとって一番大切なことを選ぶようにしています。
やはり親として子供の人生を大事にしたいですし、大切なことは、もちろん日々悩みながらですが、自然に見えてくると思うんです。
水分補給と睡眠時間を大切にしています
―衣食住についてもお伺いしたいのです。食生活や健康について気をつけていることはありますか?
坂井さん:子どもが成長期なので、肉、魚、野菜をバランスよく食卓に出すことを心がけています。バランスのよい食事と適度な運動、これに尽きると思います。
ひとつ水を1日2リットル飲むことは習慣にしています。老廃物を体外に出してくれたり、水分は体内で様々な役割をしていますので、意識して飲むようにしています。
―健康面で気をつけていることはありますか?
坂井さん:睡眠です。学校のある日は、毎朝お弁当を作るために5時に起きるので、寝られる時は夜12時前には寝るようにしています。やはり睡眠時間があまり取れないと、年齢的にも体にどんと負担が来ます。しっかり眠れた日は体調がとてもいいですね。
―部屋のこだわりはありますか?
坂井さん:気持ちのいい空間であってほしいので、こだわりと言っていいかわかりませんが、まめに掃除はします。着なくなったお洋服の布を小さく切って、さっといつでも使えるように箱に入れておいて、洗面所やおトイレの掃除などにこまめに利用しています。
あと、アロマをよく焚いています。リラックス効果もありますので。
あなたの隣にあるような素敵な作品です
―では最後に映画『そばかす』を楽しみにしている読者にメッセージをいただきたいです。
坂井さん:私が演じる蘇畑菜摘の娘・佳純の「恋愛をしない」という生き方が、この物語のテーマでもあるのですが、どこか自分の近くにあるような、隣にあるような物語だと思います。
蘇畑家のお茶の間のシーンは、家族のキャラクターがみんな個性的で楽しいです。愛おしいぞと思える作品だと思いますので、たくさんの方々に観て頂きたいです。
坂井真紀(さかい・まき)
1970年、東京生まれ。1992年、ドラマ『90日間・トテナム・パブ』(フジテレビ)で女優デビュー。96年、映画『ユーリ』で映画初主演。デビューから現在まで多くのドラマ、映画、舞台に出演している。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』で第18回日本映画批評家大賞助演女優賞、第23回高崎映画祭特別賞を受賞。そのほか『架空OL日記』『宇宙でいちばんあかるい屋根』(いずれも2020)、『はるヲうるひと』『燃えよ剣』(いずれも2021)など。2023年の出演作は『ロストケア』(3月公開)『銀河鉄道の父』(GW公開)がある。
『そばかす』
(2022年12月16日【金】より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー)
監督:玉田真也
企画・原作・脚本:アサダアツシ
出演:三浦透子、前田敦子、伊藤万理華、伊島空、前原滉、前原瑞樹、朝の千
鶴、北村匠海(友情出演)、田島令子、坂井真紀、三宅弘城
©︎2022「そばかす」製作委員会
撮影・取材・文/斎藤香