「無理をするのが頑張ることだとは思わない」水川あさみさんが語る“自分らしい生き方”と“役作りの苦労”

カルチャー

 水川あさみさんが語る“自分らしい生き方”と“役作りの苦労”

2022.10.15

Amazonオリジナルドラマ『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形』は愛をテーマにしたオムニバスドラマ。このドラマの一編「息子の授乳、そしていくつかの不満」に出演している水川あさみさんにインタビュー。ワーキングマザーの主人公が仕事も育児に悩む姿を熱演している水川さんに、本作での役作りとライフスタイルについて、お話を伺いました。

広告

Amazonオリジナルドラマ『モダンラブ・東京』水川あさみさんインタビュー

水川あさみ

Amazonオリジナルドラマ『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形』の中の一編「息子の授乳、そしていくつかの不満」で水川あさみさんが演じるのは、ワーキングマザーの真莉。

仕事と育児をパーフェクトにこなそうとする真莉ですが、悩みの種は乳児である息子の授乳。母乳にこだわる彼女は、必死に搾乳しては冷蔵庫に保管して、仕事に奔走しています。そんな彼女を家族やパートナー(前田敦子)はサポートしますが、彼女自身はうまく両立できないことへの葛藤があり……という物語。

働く母の奮闘をリアリティある演技で魅了している水川さん。そんな水川さんに、まず、真莉という女性のキャラクターの解釈からお話を伺いました。

パーフェクトを目指すワーキングマザーの苦悩

モダンラブ・東京出典:www.amazon.co.jp©2022 Amazon Content Services LLC All Right Reserved

―「息子の授乳、そしていくつかの不満」は、ワーキングマザーの現実をリアルに描いたドラマとして、とても興味深かったです。水川さん演じた真莉は、理想の育児と現実のギャップに悩み、自力で打開しようと奮闘しますが、どのような思いを抱きながら演じたのでしょうか?

水川あさみさん(以下、水川さん):真莉は良くも悪くも完璧主義者なんです。仕事と子育て、パーフェクトにしたい思いが強くて、そのことに没頭しすぎたのかなと思います。自分の「こうしたい!」という思いの方が強すぎて、周囲の思いやりやサポートに気づけない。仕事ができるスマートな女性なのですが、生き方は少し不器用。でも完璧にしたくでもできないところに、彼女の人間らしさが滲み出ていると思いました。

―水川さん自身は、真莉みたいに周囲の人に素直に頼れない一面はありますか? 役への共感はあったでしょうか?

水川さん:真莉は人に弱みを見せるのが苦手で「自分は正しい、自分はできる!」と思って突き進んでいるから、否定されたくないし、譲れない。

自分が何かに一生懸命打ち込んでいるからこそ、人の意見に耳を傾けられないことは誰にでもあると思います。その情熱や一生懸命さは、彼女の愛らしさでもあり、共感ができるところでした。

今まで経験したことのない衝撃的な演出!

水川あさみさん完璧主義のワーキングマザーのヒロインの役作りや撮影について語ってくれました

―真莉は育児に悩み、精神的に追い詰められていくようなところもありましたが、演じていて、いちばん苦労されたところは?

水川さん:平柳敦子監督は、とても独特な演出をする方で「芝居をしないでほしい」と言われたんです。そのような演出は初めてだったので、最初はそれがどういうことなのかわからなくて悩みました。でも次第に、私が役としてそこに存在することを監督は重要視しているとわかったので “表現をしない表現方法”というのを平柳監督と模索していきました。

―俳優さんに「芝居をしないで」と演出するというのは大胆ですね。

水川さん:本当に頭をガン!と殴られたくらいの衝撃的な演出でした。演じることは、プラスしていく、付け加えていくことだと思っていたので、お芝居をしないというのは、本当に大変で難しい作業でした。「役として存在する」という、一番大切なことを思い出させてくれた平柳監督とのお仕事は、貴重な体験でした。

無理をすることが頑張ることとは思わない

モダンラブ・東京出典:www.amazon.co.jp©2022 Amazon Content Services LLC All Right Reserved

―真莉のような女性は世界中にいて、同じような悩みを抱えて生きていると思うのですが、水川さんは身近に彼女のような女性がいたら、どんな言葉をかけてあげますか?

水川さん:難しいですね。何かに一生懸命に取り組んでいる人に対して、言葉を選ばないと逆に傷つけてしまうこともあると思うんです。相手が身近で親しい人ならば、助けを求めてきてくれるまで、自分からは動かない方がいいかなと思います。でも相談をしてくれたら、全力で応えます。

―このドラマは、おそらく生まれて初めて自分の限界に直面したヒロインが、人の助けを受け入れる物語でもありますが、水川さん自身は、自分のやり方を貫きたいけど貫けないという経験はありますか?

水川さん:頑張ることを諦めなくてはならなくなるという経験は、かつてあったかもしれません。でも私の性格上、無理をしてでもやり抜くということは、あまりないかなと思います。

私は、無理をすることが頑張ることだとは思わないんです。限界に近づくことを美徳とする方もいるかもしれませんが、私は、できないことはできないと認めることの方が大切だと考えています。できないときは人に助けを求めてもいいし、相談をしたりしてもいい。自分本位にならないことも大切だと思っています。

―水川さんは、相談したり、助言をもらったり、人に頼ることが素直にできるタイプなのですね。

水川さん:誰かに相談して、思いがけない対処法を教えてもらったり、気づきがあったりということもありますし、相談したからこそ、やっぱり自分の思いを貫こうと思うこともありますよね。自分の気持ちを整理するためにも、人に話を聞いてもらうことはいいことだと思います。

形にとらわれない生き方をしたい

水川あさみ自分らしく生きる水川さんらしさが、インタビューの言葉の端々に感じられます

―また、このドラマは、仕事が順調だからこそ、結婚や育児でキャリアを奪われるのではないかと考えている女性にも刺さる作品だと思いますが、その点について、水川さんはどう考えますか?

水川さん:難しい問題ですよね。自分が幸せになる未来が想像できる方を選択するのがいいと思います。私は、キャリアを失ったとしても、また作り上げればいいと思うタイプなので、ご縁を大切にするかな。

ひとりで生きてきたけど、ふたりで生きる選択をすることで、見える景色も変わってきますし、面白さもあるかもしれませんよね。心が豊かになる方がいいし、形にとらわれない生き方ができればいいなと思います。

自分が楽しいと思えることを見つける

―水川さんも、ワーキングウーマンとして、仕事と家庭のバランスをとりながら生活していると思いますが、両立させるために気をつけていることはありますか?

水川さん:そうですね、どれだけ楽しんでできるかというのが、まず重要だと思います。あとは周囲の理解を得ること。そして仕事と家庭の両立で煮詰まったとき、自分なりに発散する方法があるといいですね。何をしているときが自分は幸せか、楽しいかということを知っておくと、適度にガス抜きもできて楽しめるし、バランスも取れると思います。

海イメージ出典:pixabay.com海イメージ写真

―水川さんの発散方法を教えていただけますか?

水川さん:海など自然の多いところへ行ってゆっくり過ごしたり、美味しいものを食べたり、たまには夕方からお酒をいただいたり本当に普通のことですが、そういうことで自分の機嫌が取れるので(笑)。疲れが溜まった時など、そうやって自分を少し甘やかして、元気を復活させています。

私の健康はピラティスで支えられています!

―健康面ではいかがでしょうか? 俳優の仕事は体力勝負ですが、普段からトレーニングされていたり、食生活で気をつけたりしていることはありますか?

水川さん:ピラティスをやっています。1年くらい続いていますが、すごく体調が良くなって、みなさんにも「やってみて!」とオススメしたいくらいです(笑)。ピラティスは、過度な運動をしなくても、普段の生活で筋肉を正しく使うことを学ぶので、ピラティスを始めて、体が柔軟になりました。

あと食生活は、自炊がメインですが、ときどき外で美味しいご飯をいただくこともあります。でも外食が続かないようにバランスは気をつけています。

仕事のときも、お弁当を持っていくことが多いですね。ご飯とお味噌汁とちょっとしたおかずという簡単なものですが、やはり体に入るものなので。ガチガチに食事管理しているわけではありませんが、常に意識はしています。

映画監督デビュー!作品を別角度から見て学びたい

モダンラブ・東京出典:www.amazon.co.jp©2022 Amazon Content Services LLC All Right Reserved

―水川さんはずっと第一線で活躍してこられて、様々な役に挑戦していますが、年齢を重ねて、仕事への向き合い方の変化、演じる役の変化など、感じていることはありますか?

水川さん:確かに年齢とともに演じる役は変化していきます。できるだけ、やったことのない役を演じていきたいと思っていますが「こういう役は以前にもやったことがある」という場合でも、そのときにしかできない表現もあるので、前とは違うアプローチで演じることに挑戦したいですね。そうやってお芝居の幅を広げていきたいです。

―将来的に、40代、50代になったとき、こういう女優でありたいという理想はありますか?

水川さん:特にはないですね。将来のことを決めてしまうと、そこまでの伸びしろになってしまうので。でも、ご縁があってショートムービー『MIRRORLIAR FILMS(おとこのこと)』(2022)の監督をやらせていただいたのですが、スタッフ側に入って作品作りができたことはいい経験でした。もしまたチャンスがあったら、違う目線で作品に携わりたいです。

それを経験することで、お芝居への取り組み方が変わるかもしれないし、俳優という職業を多面的に、いろいろな角度から見ていきたいと思っています。

ヒロインのパートナーが女性であることの普通

モダンラブ・東京出典:www.amazon.co.jp©2022 Amazon Content Services LLC All Right Reserved

―『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形』は、もともとアメリカで製作されたオムニバスドラマ『モダンラブ』の日本版として製作されているせいか、真莉のパートナーが同性であることも、特別ではなく普通のこととして描かれており、そこがとても新鮮でした。水川さんはこのドラマに参加されて、感じたこと、学んだことはありますか?

水川さん:そうなんです。このドラマは真莉のパートナーが女性であることについて、何も説明がなく、そこが私のとても好きなところです。男女のパートナーと変わらない関係性を描いていますし、それが当たり前のこととして物語が進んでいくのが素敵だなと。日本のドラマでは珍しいことなので、明るい未来を感じました。

―『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形』の他のドラマはご覧になりましたか? 

水川さん:まだ自分が出演したエピソードしか見ていないので、みなさんと同じように配信を楽しみにしています。「愛」を主軸にしつつ、描かれる世界も人物の年齢もさまざま。

日常に寄り添う愛もあれば、突飛な愛、ファンタジー色の強い愛もあり、いろいろな愛の形を楽しめるのが『モダンラブ』の楽しみ方だと思うので、その日の自分の気分で見る作品を選ぶのもいいですね。

私が出演した「息子の授乳、そしていくつかの不満」は、身近な人の愛情、さまざまな周囲の想いに気づけているかどうか。自分自身を見つめ直すきっかけになる作品になっていればいいなと思います。
 

撮影・取材・文/斎藤 香
ヘアメイク/星野加奈子
スタイリスト/番場直美

水川あさみ(みずかわ・あさみ)

1983年大阪府生まれ。1997年、映画『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』で女優デビュー。以降、主演、助演問わず、さまざまな映画、ドラマ、舞台に出演。活躍の場を広げている。映画初主演は『渋谷階段』(2003)。2020年には主演映画『喜劇 愛情物語』などの演技で、第94回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、第12回TAMA映画賞最優秀女優賞[11]、第42回ヨコハマ映画祭主演女優賞などの各映画賞を席巻。また2022年、短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season4』では自身の初監督作品「おとこのこと」を手掛けた。また映画「霧の淵」が公開を控えている。

『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』 より『息子の授乳、そしていくつかの不満』


2022 年 10 月 21 日(金)より、AmazonPrimeVideoより配信
全 7 話(6 話実写、1 話アニメーション) 
監督:平柳敦子
出演:水川あさみ/前田敦子/他

©2022 Amazon Content Services LLC All Right Reserved 

広告
saitaとは
広告