スターバックスで働いているから受け止められた“ 我が子のジェンダーアイデンティティ”

家族・人間関係

2023.06.21

毎年6月は「プライド月間」。世界中でLGBTQ+の権利を啓発するための活動が行われます。ここ数年、日本でもさまざまなイベントが開催されたり、企業がレインボーカラーのグッズを発売したりしています。4月に「ステンレスボトル355ml & FUROSHIKIセット NO FILTER」「コールドカップタンブラー710ml & FUROSHIKIセット NO FILTER」を発売したスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社も、レインボーカラーグッズを発売している企業のひとつです。 今回はプライド月間にちなみ、スターバックスが取り組む活動についてのお話を聞きました。

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筆者は、スターバックスが大好きです。期間限定で発売されるフラペチーノⓇは毎回必ず飲みに行くし、何かうれしいことがあったときには自分へのご褒美としてスターバックスに行きます。もちろん、落ち込んだときには元気を出すためにスターバックスへ……。考えると、どんなときもスターバックスは筆者の日々に存在しています。なぜそんなにスターバックスが好きなのか。今回の取材を経て、スターバックスに惹かれる理由が分かった気がします。

NO FILTERな社会の実現を目指す

レインボーカラー

2018年から、毎年4月にデザインを変えて発売されているスターバックスのレインボーカラーグッズ。このグッズに込められた、”「NO FILTER」 な社会の実現”という思いについて、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 Social Impactチームマネージャーの林絢子さんに聞きました。

林さん:弊社は、タンブラー文化を広めさせていただいている企業として、レインボーをモチーフにしたタンブラーを発売することに決めました。レインボーカラーグッズを持つことで、多様性に共感、賛同している姿勢を示すことができます。また、それを見た当事者の方にとっては、「理解をしてくれる人だ」ということがわかる目印になります。「デザインがかわいい」ということで購入される方には、タンブラーの中に入っている「NO FILTER」というステッカーを通して、このアイテムに込めたメッセージを知っていただけるようにしています。

シール

購入時に渡されるステッカーの裏に記載されているこのメッセージ、ご覧になったことがある方はどのくらいいるでしょうか。この思いは、スターバックスが掲げるインクルージョン&ダイバーシティにも込められています。

「一人ひとりが自分らしく生きられる居場所、そして自分の能力を生かし、持続的に活躍できる社会= 「NO FILTER」 な社会の実現を目指します」

スターバックスで働くパートナーさんたちは、みなさんこの思いを胸にお仕事をされています。スターバックスで働きながら感じている「NO FILTER」な社会を作るということについて、店舗でストアマネージャー(店長)として働く磯美津子さんにお話を聞きました。

スターバックスで働いているからこそ受け止められた我が子のジェンダーアイデンティティ

磯さん

今回、お話を聞かせていただくことになった磯美津子さんは、スターバックスでのパートナー歴10年。アルバイトからスタートし、結婚、出産などで離れていた期間もあるそうですが、社員になって5年というベテランパートナーさんです。お子さんの1人がLGBTQ+当事者なんだそう。

磯さん:26歳の長女(*)、23歳の次女、16歳の三女、13歳の長男。4人の子どもがいます。26歳の長女が自認している性は男性。中学生の頃からスカートなどは好まず、3番目の妹は、長女のことをお兄ちゃんだと思っていたくらい見た目はボーイッシュです。なんとなく、「ん?」と思うことはありましたが、はっきり聞いてしまうのが怖いという気持ちがあり、向き合って話をしたのは大人になってからです。

*ご兄弟の構成がわかるよう、長女という表記にしています。

――親の立場から、子どもが生まれた時の体の性と自認する性が違うということに向き合うのは簡単なことではないはず。本人の意思を尊重しようとは思っても、そこに至るまでにはいろいろな葛藤があったのでは?

磯さん:真実を知りたくない……。受け止める自信がなくて聞かなかったというのはあります。でも、決めつけてかからないというのは家族の共通認識の中にあって、病気もせず、元気で本人が笑っているからいいんじゃない? ということは夫婦でよく話していました。

――他のご兄弟たちはどのように感じていて、そのことについてご両親はどのように伝えていたのでしょうか。

磯さん:20歳を過ぎて自立をし、女の子とルームシェアをはじめたんです。その時に次女が、「お姉ちゃんって、レズビアンなんじゃない?」と聞いてきました。「そうなの?」と聞き返したら、「そうなの? って、それだけなの?」って聞くので、「ママとパパもそうかなと思っていたけど、本人が幸せなら何も言うつもりはないよ。幸せならいいんじゃない?」と話しました。そこから次女が、私たちと長女のパイプ役となって、性別適合手術を考えていることを教えてくれたり、彼女と一緒に家に来ることを段取りしたりしてくれています。長男は、長女のことを男とか女ではなく1人の人間として捉えているように感じます。PTA副会長をしているので学校に行く機会が多いのですが、男子、女子という境目が今の子にはあまりないなと感じます。

――お子さんの気持ちを尊重し、質問をすることも否定をすることもなく、そっと寄り添い理解してきた磯さんご家族。自分という存在を認めてもらえる環境で育つことができたお子さんは幸せですね。

磯さん:”お互いに心から見つめ合い、誰もが自分の居場所を感じられる文化を作る”というところが大好きでスターバックスで働いています。娘のことをこんな風に受け止められる自分でいられるのは、スターバックスで働きながらそういうことに触れ、学び、体現できているからこそ。もし働いていなかったら、フィルターをつけて決めつけて見ていただろうなと思います。子どもたち一人一人、その子自身を受け入れられるマインドになれているのは、スターバックスにいるからです。

多様性を認める社会とは?

店内

今回お話を聞くことができたお二人に、ご自身のお仕事を通じて感じていることについて聞いてみました。

――NO FILTERを掲げるスターバックスで働いていて感じることは?

磯さん:先入観、偏見というフィルターをはずすという気持ちを持つことでチームとして成し遂げられることがたくさんあます。そして、違いを受け入れると視野が広がるんです。今まで知らなかったことにチャレンジする勇気をもらえるし、誰かの勇気のために……。それは、共に働くパ―トナーのためであったり、家族のためであったり、お客さんのためであったり。自分が笑顔で働くことが誰かの力になるということを感じられる職場を誇りに思っています。

林さん:スターバックスには、約5万人のパートナーがいます。属性関係なく、一人一人が多様な面を持ちながらキラキラ輝いていて、まさに「NO FILTER」なんです。そんなパートナーたちがさらに活躍できる場として「レインボー学校プロジェクト」を立ち上げました。

――多様性を認める社会とはどんな社会だと思いますか?

磯さん:”多様性”という言葉の対象になるのがマイノリティの人達となりがちですが、私は、そうではないと思っています。すぐ隣にいる人かもしれないし、家族のだれかもしれないし、パートナーのだれかかもしれない。みんなが、違う思い、感じ方、考え方を持っていると理解する。同意するとかではなく、「そういう考え方があるんだ」ということを理解する。みんながそう受け止められるようになることが、”多様性を認める社会”かなと思います。受け入れるということを自分で納得し、同意しなければ受け入れたことにはならないとなりがちだけど、いろんな思いの人がいると知ること、それを理解することが多様性を求める社会なのではないでしょうか。

林さん:一人一人違うことを知ろうとする気持ち、思いやる気持ちを持つこと、人間同士として多様なところに目を向けながら、対話することで、良いアイデアが生まれ、良い社会を作るのではないかと思います。

より多くの人へ届いてほしいスターバックスの思い

スタバ

コーヒーを淹れるには『フィルター』が必要だけれど、人の心には『フィルター』をかけてはいけない

スターバックスは、ただおいしいドリンクを提供しているだけの会社ではありません。普段、お客さんとして店舗を訪れるだけでは、スターバックスがこれだけの思いを掲げながら、さまざまな活動を行っているということを知る機会もあまりないかもしれません。

社員・アルバイト問わず、全ての従業員のことを「パートナー」と呼ぶ企業。それはまさに「NO FILTER」。ミドル・シニア世代、障がいのあるパートナーを積極的に雇用し、全国で障がいのあるパートナーの雇用率は2.94%(※2022年6月1日時点)。

LGBTQ+のパートナーには「性別適合手術のための特別休暇」「同性パートナーシップ登録」という2つの制度があり、10名の登録(2022年3月末現在)があります。

また、レインボーカラーグッズの売り上げの一部を認定NPO法人ReBitに寄付し、ともに「レインボー学校プロジェクト」として、若者が多様な性について正しい知識を身につけ、安心して学校に通えるようになることを願い、多様性やLGBTQ+に関する出張授業を開催しています。

「先入観や思い込み、偏見といった心のフィルターを持たない、すべての人が認め合い、多様性を尊重する社会」の 実現を目指しています。

この思いを一人でも多くの人が持ったなら、多様性を尊重する社会は思っているよりも早く実現するかもしれません。

日常のどんなときにもスターバックスがある。行くと、なんだか心地が良い。そう感じる理由、みなさんも気づかれたのではないでしょうか。

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