「読書はリフレッシュであるし贅沢な時間」鈴木保奈美さんが語る。子育て、趣味、仕事論

カルチャー

2023.09.14

菅田将暉さん主演で好評を博したテレビドラマ『ミステリと言う勿れ』が映画化。この映画に出演している鈴木保奈美さんにインタビュー。映画の話、趣味の話など伺いました。

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鈴木保奈美さんインタビュー

鈴木保奈美

『ミステリと言う勿れ』は、田村由美さんの同名漫画を菅田将暉さん主演でドラマ化し、高視聴率を獲得した作品。天然パーマがトレードマークの大学生・久能整(菅田将暉)のおしゃべりが、数々の事件の謎と人間が抱える闇の正体も紐解いていく新感覚ミステリーです。

その人気漫画がついに映画化されました。9月15日に公開する『ミステリと言う勿れ』は広島を舞台に、久能整が名家・狩集家の遺産相続をめぐる事件に巻き込まれていく物語。鈴木保奈美さんが演じているのは、遺産にまつわる事件の解明を整に依頼する狩集汐路(原菜乃華)の母・ななえ。

豪華キャストによる映画撮影の裏側と鈴木さんのライフスタイルについてお話を伺いました。

―『ミステリと言う勿れ』は、大きなお屋敷を舞台に映画らしいスケールで描かれた作品で見応えありました。この映画のオファーを受けたときのことから教えていただけますか?

鈴木保奈美さん(以下、鈴木さん):もともと原作漫画が好きで読んでいましたし、連続ドラマも見ていたので、映画『ミステリと言う勿れ』への出演依頼はとてもうれしくて、「ぜひやらせていただきたい」と思いました。

ミステリと言う勿れ出典:not-mystery-movie.jp(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

―鈴木さんが演じたななえさんは、とても遠慮がちで静かな女性という印象でしたね。

鈴木さん:脚本を読んだとき、フワンとした柔らかい感じの女性で、原作で描かれているななえさんと変わらない印象でした。

でもななえの夫・弥(滝藤賢一)は謎の事故死を遂げており、その死が今回の遺産相続の謎に絡んできます。また、ななえは親族から疎外されており、彼女にとって狩集家はあまり居心地がいい場所ではないんです。それでも娘の汐路と支え合って生活している……。そういう彼女の背景を考えながら演じました。

ミステリと言う勿れ出典:not-mystery-movie.jp左が娘役の原菜乃華さん。右は主要人物のひとり。松下洸平さん。(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

―確かに汐路さんは、若さゆえの行動力とお父さんへの思いで突っ走りますよね。ななえさんは暴走する娘のことが心配でたまらないといった様子でしたが、もし鈴木さんがななえさんの立場だったらどうしますか?

鈴木:娘と一緒になって暴走しちゃうかもしれません(笑)。

―汐路役の原菜乃華さんとは母娘役なので、撮影合間など結構お話ししたりして距離を縮めたのでしょうか?

鈴木:彼女はアニメーション映画『すずめの戸締まり』でヒロインの声を担当していたので「今、人気があるアニメを教えて」と、アニメの話などしていましたね。

菅田将暉さんに驚かれたこと!

ミステリと言う勿れ出典:not-mystery-movie.jp(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

―この映画は本当に豪華キャストで、松下洸平さん、柴咲コウさん、永山瑛太さん、松坂慶子さんも出演しています。撮影で印象に残っていることはありますか?

鈴木さん:私、松坂慶子さんと共演するのは初めてなんです。台所のシーンなどで一緒だったのですが、大先輩とご一緒できてうれしかったです。本当に可愛らしくて柔らかい雰囲気の素敵な方でした

―菅田将暉さんとの共演はいかがでしたか? 確か鈴木さんは菅田将暉さんの本「着服史」を持っていらっしゃると聞いたのですが。

鈴木:この映画の話をいただくずっと前に本屋さんで見つけて、「なんて面白い本を出しているんだ、この人は」と思って購入しました。撮影のとき、菅田さんに「私『着服史』、持っています」とお話ししたら「えー、あの本を持っている人はなかなかいませんよ」と驚かれました(笑)。

今回、共演できて、菅田さんの演技を間近で見て勉強になりました。でも私が見た菅田将暉さんは久能整くん限定の菅田さんなので、他の映画ではまったく別人の菅田将暉さんがいるんだと思います。

鈴木さんの心に刺さったセリフとは

「ミステリと言う勿れ」出典:not-mystery-movie.jp(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

―『ミステリと言う勿れ』は、整が謎を解きながらも真理を突いたセリフを語るシーンが醍醐味でもありますよね。鈴木さんは整のセリフで印象深いものはありますか?

鈴木さん:面白いセリフから核心を突くセリフまでバリエーションがありました。例えば「ホラー映画では、登場人物がみんなバラバラに行動するけど、なぜみんなで行動しないんだろう。バラバラで行動するから、ひとりずつ殺されてしまうんだ」というような話。

それから、ゆら(柴咲コウ)が狩集家の男性から「旦那さんに楽させてもらって幸とのんびり過ごせばいい。それが女の幸せだろう」と言われたとき、「楽かどうか。したいかどうか。それはその人にしかわからない。他の人が決めていいことじゃない。それはあなたの気持ちであって、彼女の思いは違うかもしれない。そう決めつけているだけですよね」とズバッと突いてきたり。

ー幸せは人それぞれ違いますからね。

鈴木さん:特に心に残ったのは「子どもって乾く前のセメントみたいなんです」という子どもにまつわるセリフです。

大人は子どもの心に負担をかけてはいけない、影響は大きいというメッセージが含まれていたと思います。原作者の田村由美さんは、このセリフを整くんに言わせるために、この壮大なミステリーを作り上げたのかもしれないと思ったくらいです。

―あのシーンは久能整の真骨頂でした。

鈴木さん:人の心を動かす整くんの言葉の数々がこの映画を見てくださるお客様にも伝わってくれるといいなと思います。

子育て中の時間のやりくり……できていませんでした

鈴木保奈美

ー鈴木さんは、すでにお子様たちが成人されていますが、仕事と育児を抱えていたときは、時間のやりくりなどどうされていましたか?

鈴木さん:やりくりできていませんでした。でも「できている」という状態がどういう状態なのかも人それぞれだと思います。時間が足りないというのであれば、できなかったことは気にせずに、できることをやって1日乗り切るという感じでした。

―思春期も大変だと思いますが、そのときはどう対応されていたんですか?

鈴木さん:「これが思春期か……」と思っていました。ときどきママ友と愚痴を言い合ったりもしましたね。みんな同じ世代の子どもを持つ同士、話が通じやすいですから。でも「こうしたら解決する」という解決策はないんじゃないかとも思います。思春期は誰にでも訪れると思うので「もう仕方がないんだ」と考えていました。

鈴木保奈美

―ママ友関係で悩んでいるママさんも多いようなのですが、鈴木さんはそういう悩みはなかったですか?

鈴木さん:そういう話、ときどき聞きますが信じられなくて。私はママ友には恵まれていました。ママ友というか、普通に友達ですね。知り合ったきっかけは子どもの学校だったりしますが、今でも付き合いは続いていますし、みんな1対1の人間関係として信頼できる友人です。

―今、映画やドラマへの出演が続き、キャリアは順調かと思いますが、将来の青写真はありますか?

鈴木さん:先のことは考えていないです。計画を立てても思い通りに行く世界ではありませんし、目の前のひとつひとつの仕事にしっかり取り組むだけです。

今は舞台『レディマクベス』の東京公演が10月1日からスタートするので、その準備のことで頭はいっぱいです。とにかく体力をつけようと思って、ジムに行き始めました。やはり放っておくと体力が落ちていくので体力作りを頑張りたいです。

仕事がひと段落したら本屋さんでリフレッシュ

鈴木保奈美

―鈴木さんはSNSで、子供時代に読んだ本をアップするなど、本好きのイメージがあります。最近読んで面白かった本はありますか?

鈴木さん:吉本ばななさんの著作を引っ張り出して読み返しました。もう20年、30年前の小説もあるかな。吉本さんと私は同世代なので、吉本さんの本を読んでいると「同じように年を重ねてきたんだな」というのがわかって、面白いです。

―読書時間は、鈴木さんにとって癒しの時間なのですか?

鈴木さん:そうですね、リフレッシュでもあるし、贅沢な時間です。

―いつも本は持ち歩いているのですか?

鈴木さん:お仕事のときはあまり持って出ないですね。映画やドラマの撮影中、台本以外は頭に入ってこないので。そういうときは軽いエッセイなどを読んでいます。

本屋さん出典:pixabay.com写真はイメージです

―撮影が終わったら読書に没頭できるんですね。

鈴木さん:撮影が終わったら、よし!と本屋さんへ行きます。私はネットでは買わず、必ず本屋さんで買います。やはり手にとって、装丁を見たり、パラパラめくってみたりしたいので。

―お気に入りの本屋さんはあるのでしょうか?

鈴木さん:丸善さんの丸の内本店はよく行きます。とても広くて、各フロアをぐるぐる回って見るのが楽しくて。難しそうな経済書籍もコーナーもわからないながらも面白くて。本屋さんなら何時間でもいられます(笑)。

―では最後に、仕事、家事、育児に悩んでいる読者が多いので、メッセージをいただけますか?

鈴木さん:とにかくひとりで悩まないでください。私自身が結構、自分ひとりで抱え込んでしまうタイプだったので、逆にそうならないように。人に頼ってもいいと思います。

鈴木保奈美(すずき・ほなみ)

1966(昭和41)年、東京都出身。86年、テレビドラマで女優デビュー。主演ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ/1991)が大ヒットし、人気女優の地位を確立。以降『愛という名のもとに』(フジテレビ/1992年)大河ドラマ『元禄繚乱』(NHK/1999年)『江~姫たちの戦国~』(NHK/2001年)NHK連続テレビ小説『わろてんか』(2017年)『SUITS/スーツシ』シリーズ(フジテレビ/2018年、2020年)WOWOWドラマ『フィクサーSeason2』(2023)など多数あり。映画は『プラチナデータ』(2013年)『カノン』(2016年)『おとなの事情 スマホをのぞいたら』(2021) など。最新情報として舞台『レディマクベス』(2023年10月より東京公演)への出演が決定している。

『ミステリと言う勿れ』(2023年9月15日より、全国ロードショー)

ミステリと言う勿れ出典:not-mystery-movie.jp(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

美術展のために広島を訪れた久能整(菅田将暉)は、犬堂我路(永山瑛太)の知り合いだという高校生の狩集汐路(原菜乃華)と出会う。彼女は名家・狩集家の当主の孫。その彼女が遺産相続をめぐる謎を解明してほしいと整に依頼してきたのだ。そのときから整は遺産相続の争いに巻き込まれていく……。

原作:田村由美「ミステリと言う勿れ」(小学館「月刊フラワーズ」連載中)
監督:松山博昭
配給:東宝
公式HP:『ミステリと言う勿れ』公式サイト

撮影・取材・文/斎藤 香
ヘアメイク:福沢京子
スタイリスト:犬走比佐乃

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