『零落』MEGUMIさんインタビュー

仕事、家事、育児などたくさんお話ししてくれたMEGUMIさん

映画『零落』は、人気漫画『ソラニン』の原作者・浅野いにお原作の同名漫画の映画化作品。人気漫画家の深澤薫（斎藤工）が、人生の壁にぶつかり、もがき苦しむ姿を描いています。長い人生、誰もが一度は経験する「うまくいかない時期」を共感度高く描いた本作で、主人公・深澤の妻を演じているのがMEGUMIさん。本作ではプロデューサーも兼任しています。そんな彼女に本作の裏側からライフスタイルまでインタビューしました。

―映画『零落』を拝見しました。MEGUMIさんが演じた、主人公・深澤の妻・のぞみは、観客の皆さんが一番感情移入しやすい役だと思うのですが、のぞみという女性について教えてください。

MEGUMIさん：女性は今の自分が、若い頃に思い描いていた自分じゃなくても、そんなに深く傷つかず、大人になるに従って神経も太くなり「楽しいからいいかな」と思える人が多いと思うんです。

でも男性は、思い描いていた自分じゃない場合、結構傷つくのではないかと。「思っていたのと違う。どうやって生きていこうか」と考えてしまう男性はいると思います。この映画はその深さにフォーカスしていて、そんな悩める夫をクリエイターとして尊敬し、大きな愛を持ちながらも、現実でやるべき仕事をしっかりこなしている女性と捉えて臨みました。

出典：happinet-phantom.com(C)2023 浅野いにお・小学館／「零落」製作委員会

―深澤の妻であり、また漫画誌の編集者として人気漫画家を担当しているのぞみは、尊敬する漫画家の夫との関係に苦しみながら生きている感じがしました。

MEGUMIさん：役作りとして、漫画誌の編集者の女性に取材したんです。彼女は、漫画編集の仕事だけでなく、先生にいい作品を描いてもらうために、買い物、洗濯、お金の振り込み、お子さんの参観日に代わりに出席するなど、生活全般もサポートしているんです。編集者としてのサポートの厚さには本当に驚きました。

これはまさに母性だなと。クリエイターとして尊敬している漫画家さんを母性で支えていると感じたので、のぞみにもそんな一面を取り入れました。

ただ、深澤はそのとき売れていない時期だったので、夫のことは大好きで尊敬しているけど、複雑な心境を抱えていたと思います。

―のぞみと深澤の夫婦関係は、気持ちがずれかけた夫婦の姿としてリアルでした。

MEGUMIさん：深澤は、編集者には見せない顔をのぞみには見せていると思います。自分の思いを吐露するのも彼女が家族だからです。

のぞみは、彼の苦しみはわかっている。でも一緒に落ち込んでも解決しないので、笑顔で「おかえり」と言ったりして、彼がリラックスできるように明るく振る舞っているんです。でも、それも気に食わない深澤みたいな……。もう全然歯車があわないんですよね。本当に複雑な夫婦だなと演じながら思っていました。

人生の壁にぶつかったら、大いに悩んで落ち込んでもいいと思う

―MEGUMIさんが、のぞみと同じ立場ならば、どういう対応をしますか？

MEGUMI：私ものぞみ同様に笑って「おかえり」と言うと思います。

自分自身が疲れていたり、落ち込んだりしているとき、帰宅してお米研いだり、お味噌汁作ったりすることで、ネガティブな気持ちが落ち着いてくるので。やはり日常生活を普通にすることは大切だと思います。

家族とはいえ、闇落ちしている人に寄り添いすぎると、自分の心も落ちていってしまうので。それでは逆に家族のためになりませんから、適度な距離をとって見守ります。どんな悩みでも、結局自分で考えて結論を出さないと解決しないと思うんです。

出典：happinet-phantom.com©2023 浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

―なるほど。人生は深澤のようにアップダウンがあるのが当然だと思いますが、MEGUMIさん自身が人生のダウン時期入したら、どうしますか？

MEGUMI：辛い時期って誰にでもあると思うんですよ。でもそういう時は、どん底まで落ち込んでもいいんじゃないかと思います。この映画は、「しんどい時は、もがき苦しみ続けてもいいよ」と言っている作品なので。のぞみと深澤も、結構ぶつかりますから。

でもそこで終わりではなく、深澤の場合は「やっぱり漫画が好きだ」という気づきを得ますし、のぞみも自分の人生にとっていい方法を選択します。新しい自分になっていく大切な時期でもあるので、ダウン時期は恐れなくていいと思います。

映画『零落』で映画プロデューサーデビュー！

初の映画プロデュース作品『零落』撮影の裏側を語る

―MEGUMIさんは女優だけでなく、カフェの経営、ドラマやWEBメディアのプロデュースもしていて、本作ではプロデューサーの1人として参加していますよね。

MEGUMIさん：『零落』のプロデュースに参加したのは、竹中直人さんとドラマで共演した時に「漫画『零落』を映画化したい！」という竹中さんのお話を聞いたのがきっかけです。すごい熱量でお話しされていたので、私も勢いで「じゃあ、私がお金集めます！」と言っちゃって（笑）。

尊敬する竹中直人さんの監督作品に携われるなんて、喜びですから。でもその時、映画のプロデュースの仕事について何も知らないまま手を上げちゃったんですよ。

―では、初めてのことばかりで大変だったのでは？

MEGUMI：大変でしたね。この映画も何度かダメになりかけていて「もう無理じゃん」という瞬間もあったんですよ。でもなんとか形にしたくて、時間をかけて、スタッフみんなで頑張って制作にこぎつけました。

撮影が始まると、毎日現場に行き、スタッフの動きや、お弁当はキャスト、スタッフに行き渡っているかなど細かいこともチェックして、問題がないかと見守っていました。

出典：happinet-phantom.com©2023 浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

―おまけに出演もされています、それも重要な役で。

MEGUMI：竹中監督が「MEGUMIも出演してもらわないとな、のぞみがいいんじゃないか？」と言われて決まりました（笑）。

両方は大変でしたけど、竹中監督がスタッフやキャストを決めていく過程や演出を近くでずっと見ていられましたし、映画が完成するまでの大変さも身をもって体験できました。

俳優は制作が決定して場が整ってから現場に入るので、それに至るまで「こんなにスタッフは苦労しているんだ」というのを知ることができてよかったです。

寝る直前まで家事育児！ハードワークの日々

―MEGUMIさんは中学生のお子さんもいて、子育てもされながらお仕事にも邁進されていますよね。読者にとっては憧れのワーキングマザーですが、そのエネルギーの源はどこにあるのでしょうか？

MEGUMI：人生に対して前向きな先輩方の活動をチェックすると、すごくパワーをもらえるんです。建築家の安藤忠雄さんなど、先輩方が発信している情報をチェックしています。お話を聞いているとめちゃくちゃ元気になるんです。

安藤忠雄さんは、大阪に「こどもの森中之島」という図書館を寄付されているんですよ。すごいですよね。そんな風に人生に対して積極的で行動的な先輩方が、今の日本を作り上げてきたと思いますし、私も安藤さん達のようになりたいと思います。

だから、ちょっと立ち止まった時などに、先輩方のインタビューなどを読んだり、動画配信を見たりして、元気をもらい「よし、頑張るぞ！」と。それが私のエネルギーの源です。

ストレス発散は、サブスクでドラマを見たり、好きなアーティストのライブを見ること

―すごいですね。お話ししているだけでやる気が湧いてきました。でも時間のやりくりはどうされているんですか？ものすごいハードワークですよね。

MEGUMI：結構気合いでやっています（笑）。早起きして、お味噌汁とご飯の朝食を作って、子どもを送り出して、その後、週３日は8時くらいからトレーニングのためにジムへ行ったり、セリフを覚えたり。今日も、取材が終わったら、夕食の買い物をして、急いで家に帰って作ります。

寝るギリギリまで家事や仕事をしているので、夜はベッドに倒れ込むように寝ています（笑）。働くお母さんはみなさん、そんな感じではないですか？

―確かに。そんな多忙な中、ストレス発散はどうされていますか？

MEGUMI：私はNetflixなどの動画配信サイトでドラマを見たり、ライブを見たりしています。つい最近、「ナルコの神」というマフィアのドラマを見終わりました。あとマイケル・ジャクソンや宇多田ヒカルさんのライブを見たり。１時間くらいの作品を没頭して見ていると、終わったとき気持ちがスカッとするんです。これがストレス発散にいいんですよ。

子どもの成長と自立に少し寂しさも……

―思春期の息子さんとの付き合い方はどうされていますか？難しい年頃ですよね

MEGUMI：中学2年生で、多感な時期ですね。息子が小学生の時まで、私は自分が信じている教育がいいと思っていたんです。ある程度レールをひいて、その上を行きなさいみたいな感じで。

でも中学生になると、自我が強くなり、反発するようになってきて。私は息子のためにいいと思ってやっているのに、なぜ受け入れないの？と悩んでいたんです。でも息子を「ひとりの人間」として接しないといけないことに気づきました。

時代も変化していくし、必ずしも私がいいと思ってやってきたことが、今も正解とは限らないじゃないですか。だから今、息子とは対等、同士だと思っています。

それまでは親の方が上の立場だと思っていたけど、親の言うことは絶対じゃないし、子どもの言うことの方が正しいこともある。そう考えて接するようになったら、いい関係を築けるようになりました。

出典：happinet-phantom.com(C)2023 浅野いにお・小学館／「零落」製作委員会

―男の子はあまり学校のことは話さないと言いますが、何を考えているのかわかりにくいことはないですか？

MEGUMIさん：そうですね。だから学校のプリントとかカバンの中でいつまでも眠っていて（笑）「プリント出した？」って、しょっちゅう聞いています。そこは小さい頃のまんまですね（笑）

ときどき、学校のこと、友達のことを話してくれるときは、全力で耳を傾けて聞いています。ちゃんと見ているよ、気にかけているよということをわかってもらいたいので。自分も忙しく仕事しているせいか、一緒にいる時間はすごく大切だと感じています。

息子も自立してきて、だんだん離れていくのかなと思うことも多くて。だから今、母の愛が爆発していて（笑）、好きなおかずにしてあげようとか、たくさん思い出作りたいなとか思っています。寂しいけれど、自立していく息子の成長は止められませんからね。

健康のため、朝はレモン白湯からスタート

―先ほどトレーニングの話で健康管理もきちんとされているのかなと思いましたが、食生活についてはどのようにしていますか？

MEGUMI：食事はすごく気を遣っています。20歳を過ぎると体は酸化が活発になり、それらがシミ、シワの元になると言われているので、私は毎朝、白湯にレモンを入れて飲んでいます。レモンはアルカリ性なので酸化を防いでくれるんです。健康にも美容にもいいですよ。

家での食事は、ご飯と具沢山のお味噌汁くらいで十分。友達とお食事する時は、イタリアン、ベトナム料理など大好きな食事をたくさんいただきますが、家ではシンプル。たまには胃を休ませないといけませんからね。

食べたものを消化するために胃はエネルギーをフル回転させるそうです。だから寝る前に食べちゃうと、睡眠中にエネルギーを消費するので、眠りが浅くなるとか。寝る前の飲食は気をつけたほうがいいと思います。

出典：www.photo-ac.comイメージ写真

―MEGUMIさんは美容についても詳しいですが、今やっているのはどのような美容でしょうか？

MEGUMI:シートパック、クレイパック、酵素浴、マッサージなどたくさんやっています。またお風呂に入るときは暗めの照明にして入っています。

照明が明る過ぎるといろいろな情報が入っていて、落ち着かないんです。照明を暗めにすることで五感が研ぎ澄まされてすごくリラックスできます。

映画『零落』は大人の思春期とその先の希望を描いた作品

出典：happinet-phantom.com(C)2023 浅野いにお・小学館／「零落」製作委員会

ー最後に、saita読者はMEGUMIさんと同世代の女性が多いのですが、そういう方達に、この作品のいちばんのアピールポイントを教えてください。

MEGUMI：男女限らず、大人になっても思春期のようにモヤモヤしたり、何をやってもうまくいかないと落ち込んだりする時期があると思います。この映画はまさにそういう時期に突入した大人たちを描き「そういう難しい時期があっていい、うまくいかなくてもいい」と肯定している作品です。登場人物たちはもがいて、迷走しますが、ちゃんとアップデートできますから。

大人になると「ちゃんと働かなくちゃ」「いいお母さんにならなくちゃ」と思ってしまうけど、ダメな時間があってもいいんです。映画『零落』を観ていただき、読者の皆さんの日々の生活が少しでも楽になればいいなと思います。

MEGUMI（めぐみ）プロフィール

1981年、岡山県出身。2001年芸能界デビュー。雑誌モデルやバラエティで活躍したのち、ドラマ、映画、舞台など、多方面で活躍。『台風家族』『ひとよ』（いずれも2019年）の演技で第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。近年、カフェ経営、ショートフィルム、ドラマのプロデュースなど活動の幅を広げている。映画『零落』は、映画初プロデュース作品。新作映画『赦し』（2023年3月18日公開）もある。

『零落』

出典：happinet-phantom.com(C)2023 浅野いにお・小学館／「零落」製作委員会

（2023年3月17日より、全国ロードショー）

監督：竹中直人
原作：浅野いにお「零落」（小学館）
出演：斎藤工、趣里、MEGUMI、玉城ティナ、安達祐実、山下リオ、土佐和成、永積崇、信江勇、宮﨑香蓮

＊　＊　＊　＊　＊　＊

撮影・取材・文／斎藤 香

ヘアメイク：エノモトマサノリ
スタイリスト：大浜瑛里那