久々の早い帰宅を楽しんだパパ
その日は、たまたま営業先から直帰することになったパパさん。
久しぶりに夕方前の帰宅ということもあり、「帰ったら何して過ごそうかな」とウキウキしていたそうです。
「ああ、そういえば、見たいと思っていたネトフリのドラマがあったな。よし、ビールとおつまみを買ってそれを見てゆっくり過ごそう!」
3歳になる息子がいることもあり、休日もゆっくりドラマを見るなんてできません。
平日夜の帰宅は遅いか、早く帰っても寝かしつけで忙しい。土日だって元気いっぱいはしゃぎまわる息子を相手していると自分のための時間なんて過ごすこともできない。
だからこそ、ママが息子を連れて返ってくるまでのこの2時間は、久しぶりに自分一人で自由に過ごせる貴重な時間でした。
*
ーーガチャ
「あれ、今日は先に帰ってたの?」
玄関の開く音とともに、妻のちょっと驚いた声。ガサガサと買い物袋を置く音、「ねえ、ちょっと、ちゃんと手を洗ってね」息子に注意をする声。
その瞬間、なぜかパパの胸がドキリとするのを感じたそうです。
べつに、悪いことをしているわけじゃない。それなのに、急いでテレビを消してツマミやビールを片付けて、あたかも”さっき帰ってきました”って顔しようとしてる自分がいたんです。
パパさんは、僕にまで申し訳無さそうな顔をしながらそう話してくれました。
リビングへと入ってきたママは、仕事を急いで終えて、保育園へと息子を迎えに行き、スーパーで夕飯の買い物を終え、ぐったりと疲れきった顔でパパをちらりと見ると「……ごはん作らなきゃ」とつぶやいた。
「あ、今日のご飯は簡単でいいからね!」
パパは少しでもママの負担を軽くしようと思い、笑顔で声をかけました。
「……」
なのに、ママからの反応は何もなし。
まるで”邪魔だから、わたしの視界から一刻も早く消えて”と言わんがばかり、パパを無視して息子に園バックを片付けるよう指示をしたり、ご飯を作り始めたりしたそうです。
パパは何が悪かったのか?
この話はここまで。その後はただイライラと気まずい空気が続いたそうです。
「こんなんなら、早くなんて帰らなきゃよかった。仕事で遅くなったほうがマシだった」とまで、パパさんは思ったようです。
さて、ではこのパパさんは何が悪かったのでしょうか? ママさんはなぜそこまでイライラしたのでしょうか?
理由はいくつもありますよね。
「早く帰れるなら、ひと言LINEでもくれていれば、子どものお迎えや買い物をお願いできたのに」
「自分だけのんびりしていて、その間にわたしがどれだけバタバタ過ごすことになったか、何の協力もしてくれないなんて」
「”簡単なごはん”ってなに? なんで何もしてなかった人に上から目線で”簡単でいい”なんて言われなきゃなんないの?」
厳しい言い方をすれば、パパにとってプライベートな時間は「自分だけのための時間」という感覚だった。
でも、ママにとってプライベートな時間は「家族のための時間」という感覚。
この感覚の違いが、2人の間に大きな溝を作ってしまったといえます。
パパはどうすればよかったの?
では、パパはどうすればよかったのでしょうか。
もちろん、事前にLINEでもなんでも、連絡をしておくとか、ご飯の準備をしておくとか、できることはあります。
ですが、そんなこと思いつきもしなかったのです。思いつきもしなかった時点でアウト、という見方もありますが、僕が注目したのはママさんが帰ってきたときにパパさんが「ドキリとした」という点。
これは「罪悪感」です。
その時点でパパは気がついたはずです。「あ、自分ばっかり好きに過ごしちゃったけど、この間妻はお迎えや買い物をしてくれてたんだ」って。
そしたら、まず第一声はその「ごめん」の気持ちを表明することです。
「ごめん、早く帰るって連絡しとけばよかった」「ごめん、保育園のお迎え代われたのに気が付かなかった」など。
もちろん「ありがとう」も大事ですが、この場合は状況的に「ごめんなさい」です。なぜならママはパパのためにお迎えや買い物に行ったわけではないから。「ありがとう」だって下手をすれば火に油です。
そして「俺は休ませてもらったから、ごはん作るよ」とか次のアクションができれば、きっと大丈夫。
さいごに
家事シェアとは、お互いの気遣いであり、うまく家庭を営むためのチームマネジメントです。
ちょっとしたことで、すれ違ってしまうことは、いくらでもあります。でも、そのときに相手の気持ちになって言葉を伝えることで、不要な喧嘩や嫌な空気にならずにすむ。
喧嘩するほど仲が良い、なんて言ったりもしますが。喧嘩しないで仲が良いなら、その方がずっといいなと思いませんか。