克服するコツ1 「これくらいなら食べられそう」と思えるように
最初に爲我井先生の体験談から、ご紹介します。
「これは実際に教室であったことですが、どうしても緑のものが嫌いというお子さんがいました。献立は鶏そぼろ丼で、最後にさやいんげんを二つに切って上にのせます。この時、その子にこそっと〝特別に5つにしちゃおう!〟と言いながら、小さく切り分けました。そして、5つを2つと3つに分けてみせます。3つが多いことがわかりますよね?」
「そして多い方、3つはママにあげちゃおうか!と提案しました。お子さんはカットしたサヤインゲン3つをママに渡しました。残りは2つ、子どもからすると、一気に数が少なくなったと感じます。だから、嫌いなものを前にして、テンションが下がらない。嫌いなサヤインゲンの半分以上はママにあげちゃった、残ったのはこれだけ、と思えば、食べようという意欲をあまり下げずにすむわけです」
子どもが「こんなにたくさん無理、食べられない」最初からテンションが下がった状態では、好き嫌いはなかなか克服できません。実際に自分で切ったり、分けたりしながら「うん、これだけ減った。少ないな。これくらいなら食べられるかな」と自分自身で納得する、わかるように導くのがコツです。
克服するコツ2 「食べたくなる」楽しい食卓の雰囲気作りを
「個人的な考えですが、わたしは幼いうちなら好き嫌いをなくす、減らすことはできると思っています。食育のスタートは楽しい食卓とお話しましたが、まずは楽しくお話しながら、食事をすること、です。あら、上手にフォーク使えてるね、今日は公園でたくさん遊んで楽しかったね、あの時、オモチャ貸してあげてえらかったね、子どものテンションがあがるような話題で、笑顔になる食卓にしましょう」
「ちょっと、このブロッコリー、ひとつでいいから食べなさいよ!」と食事を頂く前からお小言では、確かに子どもも食べてみようなんて、なかなか思えません。思うどころか(イヤだイヤだ、ブロッコリー食べられない)と考えるでしょう。
好き嫌いをなくす準備段階として、食卓を楽しい雰囲気にして、子どものテンションをあげること、みんなで褒めてあげること。言われてみると「なるほど」と思いますが、実際にはできそうで、やっていないことです。
食卓についたら、楽しい話題で盛り上がりましょう。「今日のそぼろ丼ね、このサヤインゲンは○○ちゃんが切ってくれたの、上手でしょ?」とパパにも話してあげて下さい。
幼いうちだからこそ、褒められて気分が良い時や周囲の楽しい雰囲気につられて、パクリと食べてしまうことってあるんですね。「食べなさい!」の前に「楽しい食卓」で「食べたくなる、つい手が出てしまう」雰囲気作りを心がけましょう。
克服するコツ3 ごまかすのではなく「納得して」食べられるようになるのが大事
そして、最後に先生がとても印象的なお話しをして下さいました。
「よく、嫌いなものを、例えば人参だとしてですね、細かく細かくみじん切りにしてハンバーグに混ぜたりしていませんか? それで、ほら、人参食べられるじゃない!とママが言います。でもじつは、子どもの受け止め方は大抵、違う方向なんです。食べられたとは思わないんですよ、大げさに言えば〝だまされた〟と思うんですよ(笑)つまり、人参が食べられるようになったわけじゃない、知らないで口に入れてしまっただけ、好きになったわけでもないし、嫌いなものを克服したわけでもない状態です」
だまされたと思ったお子さんは次にどうするでしょうか? ハンバーグが出てくると「きっと人参が入ってるぞ」と探します。探して、つまみ出して、余計に怒られたりして、いっそう人参嫌いになってしまうこともあります。それよりもずっと良い方法を先生が教えてくれました。
「ちゃんとお子さんに見せてあげればいいんですよ。フードプロセッサーがあったら、人参をいれて、子どもにスイッチを押してもらう役目をしてもらいましょう。子どもは目の前で人参がびっくりするくらい小さくなっていく過程を見ています。その細かくなった人参をハンバーグのタネに混ぜるわけですが、ちょっと人参多すぎるかな~、これ、半分はパパのに入れちゃおうか!なんて言いながら、子どもの目の前で、半分はパパのハンバーグに加えます。残った少しを、子ども自身がハンバーグのタネにいれます」
「そうすれば、人参はすごく小さくなってたし、ほんの少ししか入ってないから大丈夫かも、と思い、ハンバーグをひとくちでも食べるかもしれません。ほんのひと口でも、お子さんが口にいれたら、もう、ここはたくさんたくさん褒めてあげて下さい。こうして、きちんと子ども自身が、うん、人参が食べられたなって思えること、それが好き嫌いの克服です」
子どもに料理を全部手伝ってもらうのは大変ですが、スイッチを押したり、切った具材を混ぜたりするだけでも手伝ってもらいながら、量を減らした苦手な食材を確認しつつ、完成した料理をみんなで「おいしいね」と言いながら笑顔で頂く。
こうしてみると難しい手順ではありませんね!
教えてくれたのは・・・
爲我井あゆみ
(社)日本キッズ食育協会 理事
キッズ食育チーフトレーナー
幼稚園教諭を経て、2014年6月代表理事の榊原と共に子どものための食育スクール青空キッチン本部スクールを開校。2015年5月(社)日本キッズ食育協会設立
青空キッチンは、現在全国に40店舗あり、楽しみながら食の大切さを伝え、食を通して学校、家庭に次ぐ第三の教育の場を提供している。
青空キッチンカリキュラム制作、キッズ食育トレーナー養成講座開講、保育園での出張食育レッスンやイベント登壇、コラム執筆、子どもと食のプロとして子どもの頃からの食育=キッズ食育の普及に励んでいる。
偏食を気にするママやパパは多いと思いますが、少しの工夫で「好きになる、食べられるようになるきっかけ」は作れます。ポイントは「ごまかして食べさせる」ではなく、「自分から食べてみようと思える雰囲気作り」です。
さて、次回は「料理で国語・算数・理科・社会の勉強ができる」学びの実践法についてです。
文/大橋礼
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