自分にも手に入れられる可能性があるとき、「ずるい」「うらやましい」という感情が強くなる
自己肯定感が高いように見える人に対する反応には、多かれ少なかれ「妬み」の感情も潜んでいるかもしれません。
自分に対して不満やネガティブな感情があるとき、人は他人のことを「ずるい」と思ったり、「うらやましい」と感じたりするものだからです。このとき脳では「前部帯状回」という、痛みや矛盾を処理する部位が反応しています。
では、いったいどんなときにもっとも強く「妬み」の感情が引き起こされるのでしょうか。それは、自分にも手に入れられる可能性があると感じるときです。
たとえば、一流のアスリートやスーパーモデルを見ても、嫉妬の感情は湧き上がりません。なぜなら、生まれ持った身体的な能力や才能がちがい過ぎて、「別の世界の人間」だとか、「追いつけるわけがない」などと思って即座に納得できるからです。
でも、頭の良さなどについてはそうはいきません。なぜなら、相手がどれだけ優れた思考力を持っていても、それは直接目にすることができないこともあって、「自分にもできるのではないか」と感じてしまうからです。そして、その思いがかなわないと知ると、「なぜあんな奴が」「あいつはおかしい」という感情に変わってしまうのです。
これを、専門的には「獲得可能性と親近性の差」といいます。要は、手に入りそうなのに獲得することができない。それなのに、身近な者がそれを獲得している。そんなところから、強い「妬み」の感情が生まれるわけです。
でも、他人に嫉妬していても、ほしいものを獲得できるわけではありません。だからこそ、嫉妬のメカニズムを理解し、その感情にとらわれないようにすることが大切なのです。
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中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。横浜市立大学、東日本国際大学などで教鞭を執る。脳科学や心理学をテーマに研究や執筆活動を行うほか、その知見を生かしてテレビや雑誌でも活躍。社会問題やビジネス、カルチャーなど、幅広い分野を、科学の視点で読み解く語り口が人気。
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