勝手にあせり、勝手に心配していたのは他でもなく私
韓流ブーム真っ盛りのわが家にあっても、ひとりマイペースにゲームばかりしているように見えた息子もある時、「これ作ったんだ」とスマホに入った曲を聞かせてくれた。曲が作れる無料アプリを使い、好きなゲームのメロディをアレンジしてみたという。
確かに、息子のゲームで聞いた気がするメロディに、中国の胡弓の音色やドラムのきいた打ち込み音が重ねたユニークな音楽が流れてきた。無料アプリなのに16トラックも32トラックも入るし、多様なリズムや音源がすでにサンプリングされているらしく、中学生が初めて作ったとは思えないクオリティでこれまた驚かされた。「かっこいいじゃん!」というと、嬉しそうに笑う。
そういうときの素直な態度はまだまだ中学生だ。夫の「作った曲、YouTubeでアップしようよ!」という提案で一緒に並んでパソコンに座る。実際のアップ作業はほとんど夫がやったようだけれど、「作る→発表する」がすぐ手の届くところにあると実感できるのはすごいなあ、と眩しい思いで眺めた。
コロナで勉強も進んでいない子どもたちを見て勝手に焦り、「ラジオ講座を聞いているところを見せなくちゃ」なんて理想を押しつけようとした自分が恥ずかしい。結局、自分が楽しいと思えること、興味があることしか続けられないし身につかないのに。子どもたちは、わたしの知らないテクノロジーを駆使し、わたしの想像もつかないような楽しみをとっくに見つけている。
長い休校期間は「興味を持てることにじっくり取り組めた」時間だった
長い休校期間のおかげで、学校の部活や課題を気にせずに過ごせたのは、子どもたちにとって有益だったように思う。学校からも追われず、「宿題やったの?」とわたしにうるさく言われることもなく、興味があることにじっくり取り組めたのだから。ついつい「中高生だから」と学校の勉強を優先させがちだったけれど、それが果たして子どもたちにとって重要なのか、3年に一度やってくる受験のために「勉強しなきゃ」と思わせることは必要なのか、あらためて考えさせられている。
来年は2人とも進学先を考えなくちゃいけない。娘は自分の好きなことを見つけることができるから、もう放っておいても大丈夫。問題は、マイペースで自分の好きなことにのみ集中力が高いタイプの息子だ。大学受験を気にしないで7年間を過ごせる大学附属校もいいのかもしれない。でも大学受験はやっぱり頑張ってほしいから都立高校を狙わせようか。悩みはつきませんね。
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第1回:48歳、子育て卒業を目前にした時短料理研究家が「おかあさんやめてみた」をやってみた話
第2回:コロナ禍、食糧難を想定して子どもたちと買い物ゲームをしてみた話。
第3回:栗しごと、梅しごと…「季節のしごと」が心から楽しくなった、本当の理由。
プロフィール:田内しょうこ
「働くママの時短おさんどん料理」「育休復帰のためのキッチンづくり」「忙しいワーキングマザーのための料理」「子育て料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。出張教室やセミナーのほか、食と子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『「今日も、ごはん作らなきゃ」のため息がふっとぶ本』(主婦の友)などがある。
ブログ:働くおうちの親子ごはん!
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