日本の学校の性教育は遅れている!? 何年生で何を教わるの?
ーー学校での性教育では、いつごろにどんな内容を教わるんですか?
直井先生:学校では「精子や卵子」「受精」などを小学校5年生で学びます。また中学2年生で「月経や射精」を、中学3年生になってから「性感染症」や「性的接触」「避妊具」についてなどを学びます(文科省学習指導要綱より)。つまり、学校で教わるのは「性の知識教育」です。
ーー海外ではどうなのでしょうか。
直井先生:日本の保健体育で「生殖」を学ぶのは1~10時間ほどで、性交や避妊の単語が教科書に出てくるのが数回程度なのに対し(東京都教育委員会「性教育の手引き」より)、フィンランドでは7年生(13歳)から9年生(15歳)までに合計114時間という時間をかけて学びます。また、オランダやフィンランドなどでは、教育機関での性教育が4歳から義務化されているんですよ。
ーー日本の性教育は、海外に比べると随分遅れているんですね。
直井先生:そうですね。
国際的な性教育の指針(International Technical Guidance on Sexuality Education)として、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店)という本が出版されているのですが、その本の中に「何歳ごろにどんな性教育をするとよいか」が具体的に記されています。
そこには「5歳から8歳で、卵子と精子の結合で赤ちゃんができると伝える」、「9歳から12歳でコンドームを使用しないと性感染症のリスクが上がると伝える」と書かれています。ずいぶん具体的ですよね。
ーー日本の性教育とは違いが歴然ですね。
直井先生:その理由として、日本の性教育では「寝た子を起こすな」という考えがまだ根強いからでしょうね。つまり「具体的な性教育をすると性的な行為に興味をもつようになり、不用意にセックスしてしまう。すると想定外の妊娠や性感染症になる恐れがある。だから具体的な性教育はしない方がよい」といった考えから来ているようです。
でも、先ほどの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』にはこう書かれています。「若者が責任ある選択をするための科学的で正しい知識やスキルを、年齢に応じ、その文化にあったかたちで身につけることで、性行動が慎重化し、リスクを減らすことができる」と。つまり、きちんと学ぶことで、寝た子が起こされるのではなく、逆に慎重になることが、国際的な調査で示されているんですね。
ーー性教育の内容は、学校によっても違いがありますか?
直井先生:あります。しかし、学校による差というより、教員による差が大きいと感じています。その先生が性教育をどの程度重要視しているか、また「性」に対してどんな考えを持っているかが、子どもたちへの伝え方に影響しているのではないでしょうか。
たとえば、もしも学校の先生が「性」に対してネガティブな考えを持っていたとしたら、子どもたちは「性」や「命の誕生」にポジティブなイメージを持てなくなるかもしれません。
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