学校でネガティブな性教育を受けたら、家庭でポジティブに修正すべし
ーー学校で性教育が始まったら、親はどのように対応すればいいですか?
直井先生:まずしていただきたいのが、子どもが学校でどんな内容を、どう教わったかをチェックすることです。どんな内容を教わっているのかは、教科書を見ればすぐにわかりますよね。そのうえで「この内容、おもしろそうだね。どんなふうに習ったの?」と聞いてみれば、先生がどのように伝えてくれているのかが大体わかると思います。もしも教科書に書いてあること以外の「先生の個人的な意見」が含まれていた場合は、家庭でポジティブに変換することができますよね。
ーー「ポジティブに変換」ですか?
直井先生:はい。たとえば「出産」ですが、もしも先生が「子どもを産むのがしんどくて、二度と産みたくないと思った」と伝えていたとします。その話を聞いとしたら、「先生はそう思ったかもしれないけれど、ママはそう思わないよ。幸せだったよ」と答えてあげてほしい。このように、もしも先生の個人的な意見が含まれていた場合は変換することができますよね。あくまでポジティブに。
ーーなるほど。では、学校では足りない性教育を家庭でフォローすることはできせすか?
直井先生:先ほどお伝えしたように、欧米と比べると日本の学校では「性教育」の授業数が少ないため、家庭でフォローすることができたら理想でしょうね。おすすめなのは、本やインターネットを活用する方法です。たとえば、年齢に応じたまじめな性教育の本を、他のテーマの本と一緒に堂々とリビングに置いておくんです。子どもが性的なことに興味を持ち始めたタイミングに「この本は読んでもいいんだ」と安心して手に取れる本を用意しておくんです。そして、たとえば「マスターベーション」のように、親が説明に困るようなことも、本を活用すれば子どもが正しい情報を知ることができます。コツは本を堂々と置いておくこと。そうすれば、性や命について家庭でオープンに語り合える雰囲気にもつながりますよね。
ーーインターネットも有効とのことですが、具体的にどのようにすればいいですか?
直井先生:ぜひおすすめしたいのは、健全な「性の情報サイト」へ子どもを誘導するテクニックです。たとえばパソコンのデスクトップ画面に、「性教育」とか「性の相談」という名前をつけたアイコンを作っておいて、そこをクリックすれば安心なサイトへリンクするよう設定しておく方法です。パソコンに「性」というアイコンがあれば「あれっ?」と興味を持ちますよね。
フィルターをかけて「ここは見たらダメ」とアダルトサイトを見ないように対策することも大事ですが、子どもが興味をもったときに「このサイトは見てもいいよ」を用意して導くことも大事だと思っています。
性に関するおすすめの書籍、サイト
◎年代別おすすめの書籍
●幼児〜小学校低学年
・『わたしのはなし』山本直英・和歌山静子【作】/童心社
・『ぼくのはなし』和歌山静子【作】山本直英【監修】/童心社
・『とにかくさけんでにげるんだ』ベティー・ボガホールド【作】安藤由紀【訳】河原まり子【絵】/岩崎書店
・『いのちのまつり』草場一壽【作】平安座資尚【絵】/サンマーク出版
・『おへそのひみつ』やぎゅうけんいちろう【作】/福音館書店
・『おちんちんのえほん』やまもとなおひで【文】さとうまきこ【絵】/ポプラ社
●小学校中学年〜高学年
・『おれたちロケット少年』手丸かのこ【マンガ】金子由美子【解説・Q&A】/子どもの未来社
・『あっ!そうなんだ!性と生』浅井春夫・安達倭雅子・北山ひと美・中野久恵・星野恵【編著】勝部真規子【絵】/エイデル研究所
・『マンガでわかるオトコの子の「性」』村瀬幸浩【監修】染矢明日香【著】みすこそ【マンガ】/合同出版
・『ポップコーン天使』手丸かのこ【マンガ】山本直英【監修・解説】/子どもの未来社
・『13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと』やまがたてるえ【著】/かんき出版
・『セイリの味方スーパームーン』高橋由為子【作・絵】/偕成社
・『ティーンズ・ボディーブック』北村邦夫【著】伊藤理佐【イラスト】/中央公論新社
・『産婦人科医宋美玄先生の生理だいじょうぶブック』宋美玄【監修】あべさより【漫画】/小学館
・『からだこころ研究所』高橋幸子【著】/リトルモア
●中学生以上
・『からだと性の教科書』エレン・ストッケン・ダール ニナ・ブロックマン【著】高橋幸子【医療監修】池田真紀子【訳】/NHK出版
・『メグさんの男の子のからだとこころQ&A』メグ・ヒックリング【著】三輪妙子【訳】/築地書館
・『少女のための性の話』三砂ちづる【著】/ミツイパブリッシング
・『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』やまがたてるえ【著】/かんき出版
・『ひとりじゃない』遠見才希子【著】/ディスカヴァー・トゥエンティワン
◎おすすめ性教育サイト
・【日本家族計画協会】https://www.jfpa.or.jp/puberty/telephone/#tel_02
性の悩みに電話で相談にのってくれる「思春期電話相談」がある。
・【AMAZE】https://amaze.org (英語版)アメリカの性教育NGOが製作し、無料公開されている子ども向け性教育動画。さまざまな言語に翻訳されている。
・【NPO法人ピルコン】https://pilcon.org/help-line
恋愛・性の悩みと疑問を解決するサイト「HAPPY LOVE GUIDE」。
・【命育(めいいく)】https://meiiku.com/
子どもたちが性、妊娠、出産などを含む命について正しい知識を身につけ、「自ら性やいのちと向き合う力」を育むサイト。
・【セイシル】https://seicil.com/
中学生、高校生が抱える性のモヤモヤに答えるサイト。
・【紳也’sホームページ】http://iwamuro.jp/shyo
泌尿器科医で「コンドームの達人」のサイト。お母さんが学べる「こどものおちんちん」ページも。
・【特定非営利活動法人ピッコラーレ】https://piccolare.org/
子ども、大人に関わらず、想定外の妊娠のときに相談に乗ってくれる。ツイッターもある。
・【特定非営利活動法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)】https://www.paps.jp/
児童ポルノやリベンジポルノなどデジタル被害にあってしまったときに相談に乗ってくれる。
***
書籍やインターネットをうまく活用し、性に対してオープンな家庭を作っていきたいですね。次回は、性について子どもに聞かれたり、子どもの言動に戸惑ったりしたら、親はどんな風に対応すればよいか、具体的に解説します。
教えてくれたのは、直井亜紀さん
助産師。一般社団法人ベビケア推進協会代表理事。2児の母。2010年より中学3年生対象「いのちの授業」が埼玉県八潮市の必修授業に取り入れられる。関東地方を中心に、小・中・高校で命や性をテーマとした講演活動を精力的に行うほか、企業や専門職向けセミナーの講師も多数務める。第39回母子保健奨励賞受賞。令和元年度内閣府特命担当大臣表彰受賞。自身が企画、歌手を務めたCD「あかちゃんのうた」が童謡ランキング1位を獲得。2020年9月には『わが子に伝えたい お母さんのための性教育入門』(実務教育出版)が出版され、大きな反響を呼んでいる。
書籍やインターネットをうまく活用し、性に対してオープンな家庭を作っていきたいですね。次回は、性について子どもに聞かれたり、子どもの言動に戸惑ったりしたら、親はどんな風に対応すればよいか、具体的に解説します。
マンガ:ゆむい
『わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門』より
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。