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おかもとまり×石田明(NON STYLE)スペシャル対談 『与えることで優しくなれるということ』

カルチャー

 ノンスタ石田明さんとおかもとまりさん対談

2020.12.18

12月20日(日)に公開のYouTubeアニメ『ウシガエルはもうカエル』。 「愛は捧げるだけもの」をテーマに、子どもに対しては挨拶の大切さ、大人には愛の意味、15年後の子どもたちには“愛を受けとるきっかけ”を伝えたいというおかもとまりさんの想いから生まれたこの物語。今回、saitaでは、脚本を担当した石田明((NON STYLE)さんと、企画・原案のおかもとまりさんの対談が実現しました。 お二人がこの作品に込めた想い、また、製作秘話、そして、この作品に触れながら感じたことについて語っていただきました。

この作品に関われたら最高やなと思った

――今回、脚本を石田さんが担当したとのことですが……なぜ『ウシガエルはもうカエル』の脚本を石田さんにお願いしたのでしょうか。

おかもと:この脚本は、面白くて愛情深いに人に書いてもらいたいなと思っていたんです。なかなか、この人だ! と思える人がいなくて、どうしようかな……と悩んでいたときに、石田さんの心温まるツイートを見て、こんなに心がクリーンで子どもへの愛情が深くて、さらに芸人さんとしての実力もあるなんて……。これはもう「石田さんしかいない!」と思ったんです。それですぐにTwitterのDMを送りました。

石田:そんな風に言っていただけてありがたいです。いや、そうなんですよ。今回のオファーはTwitterのDMにいただいたんです。僕の連絡先を知ってる人ってあんまりいないんですよ。それにもし、連絡をもらっていたのがInstagramのDMだったら気づいてなかったでしょうね(笑)。そういう意味では、すごくご縁があるんだろうなと感じています。

――Twitterに、突然脚本の依頼が来たときはどう思いましたか?

石田:「お、おぉ…おう!」ってなりましたね(笑)。なんでそうなったんだ? というか、最悪、どっきりの可能性もあるなと思ってましたね。

おかもと:怪しまれないように、ちゃんと企画書も一緒に送ったんですけど(笑)

石田:僕は基本、前向きなお話を断ることはないんです。全然知らない若手のライブでも、呼ばれたらスケジュールさえ合えば出たいと思っているんでね。Instagramに上がっている原案を見たら、「あぁ、すごい素敵な話だな」と思ったんです。ちょうど3人目の子どもができたタイミングでもあったし、この作品に関われたら最高やなと思ったし嬉しかったです。

――原案を見て、すぐに脚本のイメージが沸きましたか?

石田:すぐにというか、まぁ、いろいろ話をしながらまとめていったんですが、書いているうちに感じたのは、「これ、親という立場になってなかったらできなかったかもしれないな」ということ。
これまで生きてきて、なんとなく感覚でわかったつもりでいたことが、子どもができて、親という立場になったことで、「あぁ、こういう意味やったんか」って掴めたことってたくさんあるんですよね。この作品にはそれがたくさん詰まっているから、わかったつもりで生きてた頃の僕やったらきっとできなかったやろうなと。

おかもと:私は、できてきた本を読んで、私の原案ではうまくまとまっていなかった部分をうまくまとめてくださっていたから、石田さんってやっぱりすごいな! って思いました。

おかもとまりさん

石田:最初にもらっていた原案は、とにかくメッセージが多いんですよ(笑)。伝えたいことが多いのはわかるんです。でも、それを全部入れてしまうと本当に伝えたいことが伝わらなくなるから、「この中で1番伝えたいのはどこなの?」と聞いたら、「ここ!」って明確に返ってきたので、それを整理していくという作業をしました。

おかもと:そう。ルノワールで打ち合わせをして、石田さんがすごく丁寧に、「ここは、こうだから、こういう理由で削るね」と説明してくれるんですよ。それがすごく嬉しかった。

石田:僕も作り手をやってるからわかるんですよね。作ったものをただ否定されるのは辛いんですよ。せっかく言葉を使う仕事をしてるんやから、ちゃんと伝えて、納得してもらって進めていきたいなと思ったんです。

“求めてばかり”から、“与える”側になって気づけたこと

――この作品の中で、悩みを抱えたウシガエルくんはいろいろな経験をしてその悩みを乗り越えます。
人生には、「乗り越えるなんて無理だろう」と思うような悩みを抱えることってあると思うのですが、お二人はそういう経験はありますか?

おかもと:私は、結婚、出産をして、自分一人の生活じゃなくなったときに「こうしたい、こうなりたい」というものを相手に求めてしまっていた時期が辛かったです。
それまでは自分で自分の要求を叶えていくだけだったのが、夫婦になって相手にも同じことを求めてしまって。その頃は「夫婦だから分かってくれて当たり前」っていう気持ちがあった。でも当然、私が期待した通りには行かない。なんで? どうして? ということにいっぱいいっぱいになって、自分自身が壊れちゃったときがありました。
実際、3ヶ月間精神科病棟に入院したんです。そしてわかったのが、「依存と期待ってしちゃいけないんだな」ということ。夫婦だって、しょせん他人だし、子どもも自分とは違う人間だから、思い通りにはならないですよね。だから、期待と依存はしてはダメだってことに気づけました。それはその人を信じることとの対局で、自分の欲求を押し付けるだけの行為なんですよね。期待と依存が大きければ大きいほどお互いに苦しくなる気がします。

石田:僕は、2002年から2009年がしんどい時期でしたね。M-1を獲ったのが2008年なんですけど、特にその次の1年が辛かった。それまでずっと漫才しかやってこなかったから、タレントとしての能力を求められたときに、あまりにも何もできない自分と向き合うことになって辛かったし、とにかく自信が持てなかったんですよ。

おかもとまりさんと石田明さん対談

おかもと:あぁ……。それはもう、本人にしかわからないことですよね。まわりから見たら、M-1 優勝した石田さんみたいになりたいとか、羨ましい人生だって言われるように見えてますもんね。

石田:正直、自分でも、M-1で優勝したらこのトンネルを抜けられるんやと思ってたし、実際は一瞬抜けたんやけど、そしたらまた、その先に新しいトンネルがあった……(笑)。

おかもと:この世界、誰もが売れるわけじゃないし、そこまでいかないとわからないことってたくさんあるから、成功者に見えていても……ということは、たくさんありますよね。

――そのトンネルはどうやって抜けたんですか?

石田:人との出会いが大きいですね。あとは、この作品のテーマでもあるけど、「与え続ける」ということの大切さに気づけたからですかね。まりちゃんも言ったように、人ってどうしても求めちゃうんですよね。相方に対しても会社に対しても求めることが多い。それは、僕らも求められるからなんだけど、求められるからこそいろんなものを奪いあうようになるっていう……。でも、これってお互いが与え合えば、誰もしんどくないはずなんですよ。

おかもと:すごくわかります。

石田:例えば、食後にコーヒーを淹れるときでも、相手がコーヒー飲みたそうだな、「しかたないな」と思ってしぶしぶコーヒーを用意するのと、「コーヒー、食後だときっと飲みたいだろうな、淹れてあげよう」ってコーヒーを淹れるのって全然雰囲気が違うと思うんです。相手はしぶしぶ淹れてくれたコーヒーはなんとなく気まずいけれど、「良かったらどうぞ」って淹れてもらったコーヒーは「あっ、コーヒー淹れてくれたんや! ありがとう」ってなるじゃないですか。これって、同じことが起きているのに、お互いの気分の良さは全く違うんですよ。なんか、そういうことにだんだん気づいていったんやと思います。

おかもと:求めてばかりいたけど、まずは与えることをしてみようと気づけた瞬間から、生きていくことってラクになりますよね。
私、入院したときに一番辛かったのが、子どもと会えないことだったんです。辛いことはたくさんあったけど、子どもと会えないこと以上に辛いことはないと思った瞬間に、息子がいたら、どんなことも乗り越えていけると思えたんです。私、これまでずっと、人に何かを求めてばかりの人生だったけど、息子に対しては見返りを期待することなんてなくて、初めて「愛は捧げるだけのもの」ということを知ったんです。

“言葉の大切さと愛”を伝える物語

――『ウシガエルはもうカエル』では、「愛」が大きなテーマになっていますが、お二人にとって、「愛する」、「愛される」とはなんですか?

石田:僕は、脳で考えているうちは愛じゃないと思うんです。もっとこう脊髄反射みたいな(笑)。呼吸のように、その人のために何かができるっていうのが愛だと思う。

ノンスタイル石田明さん

おかもと:子どもができる前の私は、「愛してる」「好き」って言われたい、好きって言ってもらいたいから好きって言う……という、求めているものを手に入れるためという部分が大きかったと思います。
子どもが生まれて、愛を与えたいという気持ちになって、もし息子が私を嫌いと言っても、私の好きはそれでも変わらない! という揺るがない想いを持てた。息子という存在が、私に愛することの正しさというか……、正しいとかないのかもしれないけど、一番ハッピーな状態を教えてくれたと思います。

――親になったことで、今までとは違う視点で見るようになったことってありますか?

石田:出待ちしてる女の子とか見ると、「あぁ……この子たちにも、お父さん、お母さんがいて……」って思うようになりましたね。なんか、抱きしめたくなるんですよ。実際は抱きしめないけど(笑)。SNSで悪口を書いてる人とか見ても、「この子たちも、オムツ替えてもってたんやもんなぁ」って思ってしまう。

おかもと:私も、それまではその人のことを単体で見ていたけど、その人の親や子どものことまで見るようになってきました。物語の中では、親子ではなくカエルくんと女の子の交流として描いている部分ですが、子どもが教えてくれることってすごく多いですよね。親になってから、理解することができた言葉の意味もすごくたくさんあるんです。

石田:これまで生きてきて、本来の意味とは違う使い方をしてきた言葉ってたくさんありますね。
例えば「嬉しい」という純粋な感情と言葉が、本来の「嬉しい」の感情が薄くなって、「恥ずかしい」という感情が上塗りされて「嬉しい」が妙に尖っていたりとかね。ポジティブなはずの感情も生きていく中でどんどんくすんだもので上塗りされている気がします。

この物語を書かせてもらったときに、自分の中のそんな部分を見直しましたね。感情の本質の部分というか、真っすぐでピュアな感情というか。今回のテーマでもあるよね。

おかもと:そうですね。「言葉の大切さと愛」。意外と気づかないし、知らなかったり、忘れてしまっていることを分かりやすく表してくれて嬉しかったです。私の気持ちを理解してもらって、言葉にしてほしいと思っていたので、石田さんに頼んで本当によかった!

――最後に、「ウシガエルはもうカエル」を見てくださる方へメッセージをお願いします。

石田:日常の中の出来事を無機質に見るのではなくて、いろんなことを感じてほしいなと思います。それは、子どもにも、親にも、あとは子ども嫌いな大人たちにも……。

自分たちが子どもだったことを思い出しながら。SNSの発達だとか、コロナ禍の中で優しさというものが薄れていってる世の中だと思うんですね。そんな中で、「ウシガエルはもうカエル」を見て、もう一度“優しさ”というものを見つめなおしてもらって、みんなが“優しい”を表現できる日本になってほしいなと思います。

おかもと:この物語を見るきっかけは、「挨拶の勉強しようよ」でも、「カエルさん、かわいいね」でも、「クリスマスのお話だよ」でもいいので、とにかく親子でこの物語を見て、愛ってこんなに幸せなんだよということを感じていただけたらと思います。そして、ぜひチャンネル登録をしていただけたらなと思います。将来的には絵本にして、長く読み継がれるお話になってほしいです!

プロフィール

おかもと まり

おかもとまりさん

1989.12.13産まれ 群馬県出身
2006年に地方アイドルデビュー
2010年頃から広末涼子さんなどのものまねを始める。出産以降はCCHANNELなどでのメイクの配信、講演会、映像製作などを手掛ける。 2018年に原案をした映画「青の帰り道」が公開。
instagram@okamotomari1213
Twitter@okamotomari1989

NON STYLE 石田明

NON STYLE 石田明さん

1980.2.20産まれ 大阪府出身
同じ中学・高校に通っていた井上裕介と2000年に「NON STYLE」としてデビュー。
2008年「M-1グランプリ」優勝。以降 芸人、俳優、演出家、脚本家などマルチに活動。
instagram@nonstyle_ishida
Twitter@gakuishida

YouTubeアニメ『ウシガエルは、もうカエル。』12月20日本編公開!

子どもには挨拶の大切さを、大人には"愛は捧げるだけ"の意味を、15年後の子どもに"愛"を受け取るキッカケを……
クリスマスや年末年始の家族タイムに、ぜひ大切な人と一緒に観てくださいね。

『ウシガエルは、もうカエル』公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC6VKbZoR9aeZZj5ZHr5nu2A/

  • キャスト:中川翔子・恋香楼(こころ)・冨田佳輔・斎藤工  他
  • 脚本:石田明 (NON STYLE)
  • 原案・企画:おかもとまり

2020年12月19日(土)18時~ 公開前日Youtube生配信! キャストの皆さんでお届けします。
2020年12月20日(日)18時~ アニメ本編公開! ぜひ見てくださいね。

ウシガエルはもうカエル

 

interview&text:上原かほり
photo:落合隆仁(Gran)

著者

上原かほり

上原かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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